2011年02月12日

ヤマトキゴケ

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我が家の庭には大きな花崗岩がごろごろしている。少し日当たりの悪いあたりでは、その表面に地衣類がたくさん吹き出している。少し青みがかった明るい灰色で、1cmほどと毛足の長いマットのようで、たとえきれいとは言えないまでもなかなか趣がある。

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よく見ると珊瑚のような感じに枝分かれしている。こういうのを樹枝状地衣類と言うのだそうで、これはその中のヤマトキゴケのようだ。関東地方あたりからずっと南に沖縄まで分布し、平地にも山地にもあるごく普通の種類とのことだ。

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見たところはコケのようで、名前にもコケと付いているが、地衣類はコケどころか植物でもなく、全く違う系統の菌類に属している。つまりカビやキノコの仲間だ。どうしてそういうことになるのか不思議に思うが、ぐっと拡大してみると驚いたことに確かにキノコの頭が見える。これならキノコの仲間というのもうなずける。

地衣類は菌類と藻類が共生した特殊な生物だと昔は習った。しかし今は地衣類という生物がいるのでなく、菌類そのもので、ただ藻類利用という特別な栄養法を獲得しただけとされている。なんでも菌類全体のうち2割くらいが地衣化しているそうで、かなりありふれた現象のようだ。考えてみれば菌糸の隙間に空中を飛散している藻類が入り込むなど起きて当然だ。湿って安定した環境だから藻類はどんどん増えるだろう。菌類にとってみれば光合成をする藻類は養分を作り出してくれるので、いわばきちっと家賃を払ってくれるありがたい居候だ。菌類は通常有機体の内部に潜り込んでそれを分解して食べている引きこもり生活者なのだが、地衣化すれば常にお弁当を持っているようなものだから外に出てこられる。しかし条件の良いところはすっかり植物に占領されているから、乾いた岩の上とか木の幹とか、とんでもないところしか空き場所はないようだ。

共生関係は1対1でなく多対多なのだそうだ。一つの藻類が違った菌類と共生するし、一つの菌類がいくつかの藻類を取り込んだりしているそうだ。また藻類という言葉は原始的な光合成生物一般の総称で分類群ではない。そのうち共生するのはシアノバクテリアと緑藻類の二つだそうだ。シアノバクテリアは光合成の元祖といえる生物で、植物細胞の中の葉緑体ももともとはシアノバクテリアで、それが細胞の中に取り込まれて共生したものだといわれている。まったく当たり前のように見過ごしている世界に、こんなに不思議がぎっしり詰まっているのだ。

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地衣類は成長が遅いという。庭の岩は私が並べたもので、ごろごろ転がしたからその時は何も付いていなかった。8年くらいかかってやっとここまでになったわけだ。大きなもので10cm近くになっているから、年に1cmくらいは広がっているようだ。地衣類などよく判らないし親しみもなかったが、これだけ増えてくると気にしないわけにはいかない。たいして広くはなくても命に満ち溢れた屋久島の庭の中で、しっかりその存在感を見せ付けている。
posted by 夜泣石 at 10:37| 動植物以外の生物 | 更新情報をチェックする
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