2006年10月05日

クロイワツクツク

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グゥエッグゥエッ ヂヂヂヂヂと、とてつもない声で鳴くセミがいる。初めて聞いた時はガマガエルか何かと思った。虫にしてはゆっくりで低音、大声。一匹が無くとあちこちで唱和する。ひどくうるさい。それでも何となくのんびりとした感じが救われる。


それが書斎の近くのデッキに来て鳴きだした。大きな嗄れ声は思わず耳を塞ぎたくなるくらいだ。見かけはツクツクボウシとよく似ている。なのにこの声の違いはいったいどういうことだと言いたくなる。


屋久島には普通のツクツクボウシもたくさんいる。本州では秋のセミだろうが、当地では夏の始まる頃から秋の終りまで、ほとんど半年近く鳴き続ける。ここでは多くの生き物が季節感を無くしている。その中でめずらしく季節感を感じさせるのが真夏に鳴くクマゼミと秋の気配のする頃に鳴き出すクロイワツクツクで、ほとんど入れ替わるように鳴く。


クロイワツクツクなどというセミがいることはここに来て初めて知った。普通の図鑑などには載っていない。分布域がこのあたりから沖縄あたりまでとかなり狭いそうだ。しかし希少種かというとそんなことはなく、ここではごく普通にたくさんいる。自然の豊かな山林に生き残っているかと思うと、そうではなくむしろ人里に多い。人工的な環境に適応できているわけだ。


資料に当たると、このあたりの古くからの遺存種ではないかということだ。分布が広がらないのは、もしかしたら適応できる温度範囲が狭いためかもしれない。現在の分布の北限は九州南端の佐多岬だそうだが、今後の温暖化によってこのセミも北上を始めるのかもしれない。その時はこの特異な鳴き声で、多くの人たちを驚かせることになるだろう。


posted by 夜泣石 at 10:30| 生きもの | 更新情報をチェックする
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