2011年08月31日

コキンバイザサ

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庭の踏み荒らされた雑草の間で、小さな黄色い花が咲いていた。このあたりにこんな花はいくらでもあるから、まず気にすることは無い。それでもふと足が止まったのは、何か気品のようなものを感じたからだろう。目を近づけてみて、うーむと思わず唸ってしまった。清楚な美しさに感じ入ったということもあるが、それより頭が混乱してきた。何の花か見当が付かないのだ。自分の庭で今さら知らない花に出会うなんて思いもよらなかった。

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それから2週間も経って、また咲いているのを見つけた。湿ったところが好きなようで、他の草のないコケの間に生えている。花の大きさは1cmほど、それが根元から直接出た10cmほどの細い茎の上に付いている。葉は細く長く、このあたりにいくらでもあるイネ科の雑草とよく似ている。花がなければまず見分けが付かない。

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6枚の花びらは幅の広いものと狭いものが交互に3枚ずつある。よく見ると外側と内側の2段になっている。これはユリ科やヒガンバナ科の特徴だ。しかしそれでも何の花か見当が付かない。今までこれに似たようなものを見た覚えがない。

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外花被片の先に白い毛が筆先のように付いているのも珍しい気がする。葯の形がまた変っていて、ユリでよく見かけるT字型ではなく真ん中で折れ曲がって傘のようになっている。

この花の名前は植物に詳しい人に教えてもらった。コキンバイザサというのだった。小さな黄金色の梅のような花、笹のような葉、ということのようだ。コの付かない、一回り大きなキンバイザサというのもあり、近い仲間は日本ではその2種だけだそうだ。以前はヒガンバナ科に入れられていたが、今は独立のキンバイザサ科になっている。驚いたことに、よく花屋にある小さな鉢植えのアッツザクラが同じ仲間だそうだ。赤いかわいらしい花だが、こちらも負けずにかわいらしくしかも気品がある。と思ったら、この花も黄花アッツザクラの名で売られていたりするそうだ。それではと鉢植えにして引越し先に持っていこうと掘り上げた。根は花や葉に比べて意外に大きめな整った形の球根だった。

花期は4〜6月だという。今頃咲くのは狂い咲きかもしれない。それではなぜその頃気が付かなかったのか。考えてみると春から初夏、このあたりは黄色の花で埋まっている。それらはみんなありふれたものばかりだと思い込んでいたし、コナスビなど離れて見るとなかなか似たような感じなのだ。そうした花がほとんど咲き終わった今頃になって、やっと目に留まったのだろう。またこの花は朝咲いたとか思うと、10時を過ぎる頃にはもうしぼんでしまう。その短命さも気が付かなかった一因だろう。

分布は本州宮城県以南から沖縄にかけてと広い。しかし宮城県や栃木県では絶滅、また大半の県で絶滅危惧種に指定されている。屋久島の属する鹿児島県でも準絶滅危惧種だ。これでは今まで見たことがなくても不思議は無い。また南九州や沖縄の植物図鑑を何冊も見たが、どれにも載っていなかった。そんなかなり珍しいものが、どこから来たのかひょっこり庭先に現れるなんて、やはりこの島の自然の懐は深いなと改めて思ってしまう。
posted by 夜泣石 at 09:07| Comment(0) | 花草木 | 更新情報をチェックする
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