2011年08月25日

断捨離

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我が家から眺めるモッチョム岳

屋久島脱出が決まり、さあ引越し準備だと身の回りを見回して、いささか呆然としてしまった。あれやこれやの物があふれるばかりにあるのだった。壁一面の本棚は満杯だし、建て増しして普段は使わなくなった旧宅にも古物がぎっしり詰まっていた。庭にも園芸用品などが山積みするほどあった。改めて眺めると気持ちがどんより沈んでくるほどだ。

断捨離という言葉が、昨年だったか流行語になっていた。断ち・捨て・離れるということで、身の回りをすっきりさせてよどみを無くし、新陳代謝を促すということだそうだ。あふれかえるモノが、生活の邪魔をし気分を害し活動を阻害している。あたかもモノで充満した底なし沼に足を取られ身動きできず、もがけばもがくほどますます引きずり込まれてしまうかのように。したがってそうしたモノのしがらみを思い切り断ち切れば、生き生きとした人生を取り戻せるということのようだ。

思い起こせば、私は屋久島に多くの夢を抱えて移住してきた。夢にはそれを実現するための道具が付随していた。年を重ねるごとに夢の数々は消えていったが、モノは消えずに残り続けていたのだ。心の中で整理が付かず、またいつかはと未練がましく捨てずに残して置いたのだった。そうした残骸の山は鬱陶しく、見て見ぬふりをし続けてきた。

そうしたことに突然、終止符を打つ機会がやってきた。新天地では過去のさまざまな未練を断ち切って新しい生活を始めたい。そのためには徹底的な断捨離をしなければならない。そう思い立ってから毎日、多くの時間をモノの片付けに充て続けてきた。どんなに断捨離に時間を費やそうとも、その分、新しい生活で何十倍にもなって返ってくるはずだ。

ここ何年も開いたことの無い資料はすべて捨てた。昔書いたたくさんの原稿やノート、日記や手紙のたぐい、切抜きやコピーした資料、また撮ったり撮られたりしたたくさんの写真。それらは未練はあっても見返すことはもはや無い。私は過去を振り返らない人間だ。思い出やしがらみを振り切り、過ぎ去った日々から目を背けるように生きてきた。どうも普通の人は過去を大事にするようだから、これは私の人間的欠陥なのかもしれない。あるいは幼い頃のアルバムなど、実家に残しておいた思い出の品々をすべてを親に捨てられてしまったことのしこりがあるのかもしれない。しかしそれならばそれを逆手にとって、よりいっそう前を向いて生きるだけだ。

私は若い頃から本に囲まれているのが好きだった。しかしまともな本屋の無い離島に来てから、本を買う習慣はなくした。相変わらず多読乱読は続いているが、どれも図書館から借りるようにしている。やってみるとそれで十分だった。読み返すことはほとんど無いし、期限があるから積ん読になってしまうこともない。だから本棚にあったのは本土から持ってきた昔の本がほとんどだが、それらはすでに黄ばみ汚れ、しかも字が小さく年寄りの目にはもう読めないのだった。また、若い頃はなぜこんな本に感動したのだろうと訝しく思うものも多い。結局、図鑑類を残してほとんど捨てた。程度の良い本は図書室にある持ち出し自由コーナーに運んでみた。大半がすぐになくなったから、この仕組みはとても良いことだと思う。

服、カメラ、PC用品、山の道具、園芸用品なども、今使っているものを残して片っ端から捨てていった。また家電、家具など、古いものを旧宅に宿泊客用として置いてあったのだが、欲しいという人に次々に引き取ってもらった。私はずっと都会のアパートやマンション暮らしをしてきたので、狭いところにいかにモノを配置するか、いかにうまく収納するかに習熟した来た。今から思うとそれは実に無益な努力だった。これからはいかにモノを置かず空間を空けておくか、引き出しや棚があってもできる限り空っぽにしておくことに腐心したい。

本当にこれでいいのかと思うほどがらんどうになった。なんだか大震災に遭ってしまったかのようだ。私の今までの人生とは何だったのかと空しく思うくらいだ。これではまるで不治の病で余命を告げられた人が、身辺の整理を終えたみたいだ。もしかしたら私は本当に死期を予感して、無意識にその準備を始めたのかもしれない。そこまで行かなくとも、老い支度をしなければと思う年頃になったのか。いやそれにしてはなんとも爽やかで、新しい生活を始めたいという意欲が湧いて来るのだ。

断捨離はモノだけが対象ではない。人間関係や暮らしのさまざまなものごとすべてが対象になる。私は屋久島に未練がないといえば嘘になる。8年の歳月はそれほど長いというほどではないが、なかなか深く濃い付き合いがあったと思っている。いや、いささか深入りしすぎてしまったようだ。私にとって屋久島を捨てることが最大の断捨離なのだろう。
posted by 夜泣石 at 09:31| Comment(0) | 屋久島暮らし | 更新情報をチェックする
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