2011年05月27日

ノビル

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だいぶ前からノビルが咲き続けている。細い花茎の先にボール状に花を咲かせるところはまるで小さな葱坊主だ。しかしこちらの方がだいぶきれいだ。真っ白な花被片には淡い紫が差しているし、中心には大きな緑の子房がエメラルドか何かのように輝いている。ただ残念なことは、一面にノビルが咲いていても、こんなに大きな花の塊はほとんど目にしない。

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たいていは小さく貧弱で数個の花を咲かせるばかりだ。それに何やら薄茶色の栗の実のような形のものがはさまっている。蕾とは全く違うし、こんなものを他の花では見た覚えもない。これはいったい何だろう。

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じつはこれはムカゴだった。花序の中にムカゴを付ける植物などほかにあっただろうか。まあムカゴは細胞が周りの組織と無関係に異常繁殖してクローンを作り出すものだから、どこの細胞が変身しても構わないのだが。それでも最初は思いも付かなかったから、まず普通ではないはずだ。

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花など付けずにすべてムカゴだけになってしまった塊りもある。そしてその場で発芽して、そのまま長く葉を伸ばしているものも多い。親の体の上で子が育つ。これもなかなか異様な姿だと思う。いずれはばらばらになって地上にばらまかれて新しい株となるのだが、それならなぜ前もって葉を伸ばしておくのだろう。まず地上に降りて安全性を確認する、あるいは成長できそうなところに転がっていってからというのが常識的だと思うのだが。

花が結実して種ができたものがないかと探してみたが見つからない。ネギなど、真っ黒な種がびっしりとできるものだが。なんでもほとんど種はできないのそうだ。このムカゴと、地下の球根の分球によって繁殖しているとのことだ。それでは昔、東京で見たものと、今ここ屋久島で見ているものと全く同じ個体の分身ということになる。なんだかすごいことだなと思ってしまう。

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小さな蕾がまだまだ出てくる。なかなかかわいらしいとんがり帽子だ。しかしもうたいていは葉も枯れかけている。これから夏の間ずっと休眠して、また涼しくなると芽を出すという。ノビルは山菜として有名だが、おいしく食べられる期間は短かそうだ。暑さは苦手のようで、屋久島では東京あたりほど多くはない。群落らしきものは海辺の芝原で見かけただけだ。それでも強健な植物らしく、潮風も強く波も被るようなところで毎年たくさんの花を咲かせている。
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2011年05月21日

コナスビ

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庭でコナスビが咲き続けている。せいぜい7mmかそこらの小さな花だが、鮮やか過ぎるほどの黄色がいつも目に飛び込んでくる。ぐっと近付いてよく見ると、すっきりと整った可憐な花だ。サクラソウ科だそうだが、なるほどと思わせる。平らに開いた花びらは5枚あるようだが、よく見ると根元はくっついている。水滴がぱっと飛び散ったような雄しべも、根元はくっついて短い筒になっている。こうしたことのためか、どこか紙細工の花のような感じもする。

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咲いたばかりの花を横から見る。上部の葉はほとんど対生していて、それぞれの葉腋からごく短い花柄で咲くから、二つの花がぴたっと寄り添っていることが多い。これもかわいらしさを感じるもとになっているのだろう。

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5mmほどの丸い果実が茎に沿ってずらっと並んでいる。花柱が枯れ落ちず持ち手か何かのようにずっと残っているのもかわいらしい。この実がナスに似ていて、小さいからコナスビということだそうが、だいぶ無理があるようだ。誰の目にもナスには見えないだろう。

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コナスビは日本全土どこにでもある雑草だが、東京近辺ではあまり目に付かなかった。たまに見かけると、ちょっとうれしく思ったりするくらいだった。それが屋久島の庭ではいたるところに咲いていて、場所によってはまるでグランドカバーのようになっている。それも花期は5〜6月とされているが、ここではほとんど一年中咲いている。

横に這って広がっていき、丈が高くならないので、雑草と言っても全く邪魔にならない。湿ったところが好きということだが、からからに干からびたようなところでも咲いていたりするから結構強靭のようだ。なお屋久島には高山に行くとヒメコナスビという固有変種がある。見た目はそっくりだが厳しい環境に適応した小型種で、葉がかなり小さい。しかしなぜか花はかえって大きく見栄えがする。

この花は何とオカトラノオ属だった。同属ということは兄弟のようなものだが、こんなにも違ってしまったものかと驚く。オカトラノオはけっこう高さがあって、その先から白い花をびっしり付けた房を垂らす。東京近郊の初夏の山を彩っていたのがとても懐かしい。屋久島にもあるとのことだが、まだ一度も出会ったことがない。

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コケが一面に生えたところにぽつんと黄色の花があった。よく見ると5〜6枚の小さな葉があるだけ、高さは3cmかそこら、少し離れるとどこからか花が舞い落ちたようにしか見えない。小さな植木鉢に植えて机の上にでも置いたら、心を和ませるのにちょうどよいかもしれない。
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2011年05月15日

キウイフルーツ

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半月ほど前、初めてキウイフルーツの雌花が咲いた。植えてから確か6年目くらいだ。思いっきり茂っているのにどうして咲かないのかと半分あきらめかけていたところだった。花は5cmほどで、ちょっと面白い感じがする。花びらは厚めでつやつやしていてなかなかきれいだ。真っ白だが数日もすると黄ばんでしまう。真ん中に見える大きめな玉は、いずれ果実になる子房だ。その上に半透明の棍棒状の雌しべ(花柱)が30本ほどもある。キウイの実を輪切りにしてみると中心から放射状に筋が見えるが、その一つ一つに対応するのだそうだ。その筋に沿ってケシ粒より小さいくらいの黒い種が入っているが、数えた人がいて1000個以上もあったという。それを蒔くと驚いたことに、いや当然なのだがちゃんと芽が出て、6年もすると実をつけるようになるそうだ。なお、この花には黄色い葯の雄しべもたくさんあるが、これは退化していて花粉はないとのことだ。

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花が終わった後に実が膨らみ始めている。キウイらしく細かな産毛に覆われているが、見慣れた褐色ではなく白い。これはゴールデンキウイという種類で、果肉が緑でなく黄色のものだ。皮はいずれ茶色くなるが、普通のものよりだいぶ薄い。キウイは収穫時期が難しく、また追熟させないと食べられないなど面倒なので、樹上完熟する種類を選んで植えてみた。苗を買い求めた頃は珍しかったが、最近ではどこでも売られるようになった。酸味が弱くキウイ本来のおいしさに欠けるという人もいるが、採り立ての新鮮なものがどうなのかこの秋のお楽しみだ。

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雄花は数年前から毎年咲いている。こちらは雄しべがもじゃもじゃしているだけで雌しべはすっかり痕跡化している。キウイは受粉しなくても少しは果実ができるそうだが、小さくてあまりおいしくないのだそうだ。だから手引書などには必ず人工授粉するように書いてある。しかしなぜか雄しべに触っても指が黄色くならない。普通の花だったら触ると花粉まみれになるものだが。もしかしたらこれは外れの株だったのだろうか。しかしともかくたくさん咲いて、またなかなか良い香りもするから、コマルハナバチをはじめ多くの虫が集まってきている。彼らがきっと本来の仕事をしてくれているだろうと期待している。

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雌花はもうほとんど咲き終わったが、雄花はまだ少し蕾もある。咲き出すのも終わるのも、また花の数も雌花よりずっと多い。これはきっと、雌花がいつ咲いてもよいよう品種改良されたのだろう。当然強健なものが選ばれたはずで、雌株を優先させようとずいぶん剪定してきたつもりだったのだが、花が咲いてみるといたるところ雄花だらけだった。手入れが悪いため、絡み合って何がなんだかよく判らない状態になってしまっている。

ところでキウイと言うと、それは鳥の名前で、こちらはキウイフルーツというのが正式なのだそうだ。しかもそれも販売促進のために商社がつけた愛称なのだという。もともとはここ屋久島にも自生しているシマサルナシの近縁種で中国産のものを品種改良したのだそうだ。ともかく名前というのは重要で、シマサルナシのままだったらこれほど人気は出なかったと思う。キウイが日本で売られ出したのは私が社会に出て働き始めた頃で、安月給の身には高嶺の花だった。思い出せばバナナも子供の頃はめったに食べられない高級品だった。それらは今ならいくらでも買える。それでもどちらも庭にどうしても植えたくなったのは、きっと欲しかったのになかなか手の出なかった昔の記憶のためのような気がする。
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2011年05月09日

スジベニコケガ

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これは見事な柄だ。この色合いもタッチも、近現代の抽象画に決して負けない。あるいは南米かどこかの古い民族衣装にこんな感じのものがあったような気もする。残念ながら日本の美の伝統には、派手な黄色の地に朱色を散らし黒を添えるなどといった発想はなさそうだ。

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ふと胸のあたりに、顔が隠されているのに気付いた。耳のある帽子を被ったひげもじゃの老人だろうか。ずいぶん立派な着物を羽織っているかのようだ。穏やかな顔つきは仙人の風情もする。あるいはまた有名な小説の中の羊男を連想させる。

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正面からも見てみた。今度はなかなか勇ましそうだ。派手な衣装で足を踏ん張って、歌舞伎か何かで大見得を切っているかのようにも見える。

この蛾は早朝、我が家の基礎のコンクリートの壁に止まっていた。もしかしたら深夜か早朝、羽化してここに登ってきたのかもしれない。じっと体が固まるのを待っているところだろうか。傷一つなく、柔らかそうな毛も出来立てのスエードか何かのようだ。

ところで生き物の色には必ずと言ってよいほど意味がある。たいていは隠ぺい色か、あるいは警戒色だ。しかしこの色合いはそのどちらとも思われない。あまりに派手すぎるが、かといって毒があるようにも見えない。もしかしたら光の微妙な戯れによって、この模様が周囲に溶け込むことがあるのだろうか。せいぜい3cmほどの大きさだから木漏れ日の斑点に見間違うのかもしれない。ともかくこういうとき降参した生物学者が「神様の遊び」とか「自然のいたずら」などと、冗談まじりに逃げ口上をもらしたりする。しかしこの蛾ほどその表現の合ったものもあまりないように思う。

これだけ目立つ柄だから図鑑ですぐ見つかった。スジベニコケガという名だった。ただ個体差が大きく、もっと地味なものの方が多いようだ。またこの鮮やかさは印刷で出しにくいせいか、かなり煤けたような色で載っているので、図鑑も見慣れないとなかなか使いこなせない。こんな色だから南方系かと思ったら、そうではなく日本全国に分布する普通種で、屋久島はその南限だった。

このコケガの仲間は日本に何十種類もいて、たいてい地衣類を食べているようだ。そういえば小型のケムシを、葉の上でなく大木の古びて苔むした幹上や、あるいは岩の上などで見つけることがたまにあった。それらは葉から落ちたとか移動中かと思ったが、そうではなくそこが彼らの棲家で、表面に張り付いた地衣類を食べていたのだろう。

ところでネットで見ると食草として、地衣類、コケ、落ち葉と記述してあるサイトが多い。しかしそもそも地衣類とコケでは、見た目は似ていても全く違う生物だ。地衣類はキノコやカビの仲間であり、植物でないどころかDNA構成ではどちらかといえば動物の方に近いくらいだそうだ。したがって含まれる成分などかなり違い、食べるためには消化の仕方や解毒の仕方など変えざるを得ないから、両方とも食べるというのは考えにくい。ちょっとでも科学知識があれば判るはずのことなのに、多くの人が何も考えずに孫引きのまた孫引きを繰り返している実態がよく判る。
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2011年05月04日

ライチ

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ライチの花が満開を迎えている。ぱっと広げた雄しべの先から先まで測っても1cmに満たない小さな花だ。そしてなんだか奇妙な形をしている。雄しべの生えている、クリーム色のまんじゅうのようなものは普通なら子房だろう。しかしこの花では子房は真ん中にある汚れた緑色の二つの玉だそうだ。ではいったいこれは何なのだろう。ともかくその下にある白い襞のようなものはきっと花弁だ。さらにその下に緑色の膜があるので、それが萼のようだ。

なおこの花では子房はあっても柱頭が開いていない。つまりこれは雄花で、雌しべは痕跡化しているというわけだ。周りを見ると、子房もほとんどなくなってもっと雄花化の進んだ花も多い。

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雌花の方はもっとおかしな形をしている。これが人目に付くくらいの大きさだったなら、この奇妙さで物好きな人たちの間で人気が出たかもしれない。こちらでは雄しべが痕跡化して、板切れのような葯が無造作に並んでいるだけだ。これは花粉を出すことなどなく、そのうち落ちてしまう。その付け根あたりに出ている丸い露は蜜だ。舐めてみるとなかなかの甘さでほのかな香りもある。なんでもこれを集めたライチ蜂蜜は高級品なのだそうだ。

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向きを変えてみると子房が二つの玉になっていることがよくわかる。といっても実際は片方は途中で成長を止めるそうで、その結果、一つの大きな種の入った丸い果実になるのだそうだ。

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何かの虫が受粉させてくれたのだろう、少し膨らんできているものがあった。もう柱頭は茶色く枯れて、雄しべもすっかり落ちている。花は無数にあるが、実際に実るのはごくわずかだそうだ。

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ライチは日持ちがしないので現地でなければそのおいしさは味わえないという。それで屋久島に移住してすぐ、通販で苗を買って植えた。しかしなかなか大きくならなかった。後になって湿潤な土壌が好きと判って植え替えてみた。それからやっと葉を広げだして、この2月、白いぽつぽつの付いた花枝を伸ばしているのに気付いた。それがどんどん成長していって、今では30cmほどの高さになって無数の花を付けている。この感じはマンゴーによく似ている。3月末に咲き出し、最初は雌花だけだったのでその奇妙さに驚いたが、半月ほどして雄花も咲き出してやっと花らしい感じになった。

ライチは中国南部原産でムクロジ科だそうだ。その仲間にはさまざまな熱帯果樹があるが、ライチは例外的に寒さに強いのだそうだ。というより花芽の形成にはある程度の低音が必要とのことだから、この冬の稀に見る寒さがかえってよかったのかもしれない。温暖化などどこへやら、あの寒さで庭のパパイヤはすべて枯れてしまった。しかし替わりにこちらが食べられるのなら、パパイヤは食べ飽きてもいたので、何とも贅沢なことだがかえって良かったような気もしてくる。
posted by 夜泣石 at 09:56| 花草木 | 更新情報をチェックする
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