2011年02月26日

キジバト

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キジバトはよく見るとなかなかきれいな鳥だ。背中の模様は昔の工芸品か何かを思わせる。といってもそれは職人の方がこんな模様の美しさに惹かれて真似たのだろうが。日差しの下ではかなり目立つが、林の中では木漏れ日にまぎれて保護色になるのだそうだ。首筋には紋章でも貼り付けたような、ずいぶん目立つ模様がある。これは光の加減で青い宝石のように輝いたりする。キジバトの名前の由来は、背中の模様がキジ(特に雌)に似ているからというのと、首筋の青がキジの雄の首の色に似ているからというのと二説あるようだ。ただキジとこのハトでは、こちらの方が身近にずっとたくさんいるので、わざわざ少数派の名前を借りてこなくてもよかったのにと思ってしまう。

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日本中どこでにでもいる鳥だが、屋久島に来て、どうも見慣れたものとは違うと思った。それが何なのかはっきりとは判らないのだが、どこか印象が違う。権威ある鳥類図鑑を見ると、屋久島から南には亜種リュウキュウキジバトがいると書かれてあった。明確な見分け方はないようだが、全体に色が濃くて、頭だけは逆に薄い、また翼や尻尾が短めといった特徴があるらしい。そういわれてみると、ここのキジバトには当てはまるような気がする。

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本土ではずいぶん人懐っこい鳥だった。鈍くさいなと思うほど近寄れたし、かなり間近で巣作りを眺めることもできた。しかしこの島では、少し近付いただけですぐに逃げる。警戒されているせいか、あまり可愛げも感じない。考えてみれば本土でも私が子供の頃は山にしかいない鳥だった。それが高度成長期に都会が拡大すると、どんどんその中に入ってきて身近な鳥になったのだ。ここでは昔のままなのかもしれない。同じ頃にやはり都会に入ってきたヒヨドリはここでもずいぶん人懐っこいのだが、きっとそれは本土から渡ってくる個体が多いからだろう。

鳴き声はよく「デデッポッポー」などと書かれてある。しかし実際はそれとはだいぶ違うと思う。「クークグッググー」とか「ククルククー・ククルククー」とかいう表記もあったが、それらの方が近い感じだ。ともかく低くくぐもったような声はまったく鳥らしくない。子供の頃、山に遊びに行って薄暗い中でこの声が響くと、なんだか寂しく薄気味悪いような気がしたものだった。

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キジバトは群れを作らない。ほとんど単独でいる。都会ではつがいでいる姿をよく見たが、ここではなぜかそれも少ない。たまたま餌の多いところに集まっても、じきにぱらぱらと飛び立って元の一羽に戻る。ところで本土ではハトというとドバトの大群をまず思い浮かべるが、屋久島にはドバトはいない。たまに迷い伝書鳩を見かけることがあるが、住み着くことはなくそのうち消えてしまう。ドバトは都会でしか暮らせないようだ。ある屋久島育ちの子が、都会に行ってドバトがわさわさ足元に寄ってくるのが怖いと言っていた。屋久島といえども里はほとんど開発しつくされているが、それでも人もハトも、まだまだ昔が残っているのだと改めて思う。
posted by 夜泣石 at 07:08| 生きもの | 更新情報をチェックする

2011年02月19日

シコンノボタン

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やっと暖かくなったと思うとまた冷え込んだり、雨風も繰り返す不安定な天気が続いている。そんな中でも庭のシコンノボタンはほとんど満開になっている。中南米原産で寒さに弱いといわれているが、屋久島では逆に夏の暑い時期以外は一年中咲いている。中でも一番きれいになるのはこれからの春先の季節だ。紫紺の名の通りのとても日本的な感じの美しい色は、咲き始めは紺色が強く、だんだん赤みが増していく。雄しべ雌しべも、最初は白いがやがて赤く染まる。一日花だとどこでも書かれてあるが、ここで見る限り数日は咲いている。今の時期は小ぶりだが、春になると10cmくらいとかなり大輪になる。

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雄しべが不思議な形をしている。葯の部分が大きく、しかもぐにゃりと湾曲していて、それが花糸から垂れ下がっている。この形がクモの足に似ているということでスパイダーフラワーと呼ばれたりするそうだ。しかし私には釣り針か、獣のかぎ爪のように見える。この形はノボタンの仲間に共通で何か意味があるはずだ。よく見ると大きいのが5本、小さいのが5本ある。調べた人がいて、大きい雄しべの花粉は殻だけで中身がないのだそうだ。つまりこれは飾りでしかなく、花を目立たせて虫を寄せ集めているらしい。こんなものがひらひらしていると、虫も何だと思って集まってくるのだろうか。真ん中を見ると雌しべも折釘のようにぐっと上に折れ曲がっている。これも何か理由があるはずだが誰も謎解きをしていないようだ。

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花は次から次へとどんどん咲く。どの枝先にもたいてい蕾が付く。蕾がふくらんでくると、それが割れて中から本当の蕾がいくつも出てくる。こんな姿もなんだかかわいらしい。葉にも特徴があって、3本の脈がすっと通っている。これはへこんだ溝になっていて、そのへこみは裏側にくっきりと飛び出している。

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果実もできていた。この寒い時期、どうやって受粉したのだろう。ともかく多くの花は結実せず落ちてしまうようで数は少ない。またどんどんなくなっていくので鳥が食べているのかもしれない。

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果実を上からのぞくとびっくりするほど真っ赤だ。どうも果皮で覆われていなくて中身がむき出しになっているようだ。すでに茶色の種のできているのもあったが、これなどいつ咲いたものだろう。これを撒いたら芽生えるだろうか。挿し木で簡単に増えるのでわざわざ撒くこともないのだが。

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シコンノボタンは屋久島ではいたるところに植えられている。よほど気候が合っているのか、見上げるほどの高さになっているのも多い。しかし意外にもろくて台風などで根元からぼきっと折れてしまったりする。我が家の庭ではあまりに育ちすぎるのでばっさり切り込んでみた。しかしそこからまたたくさんの枝を出して、かえって茂りすぎてしまっている。
posted by 夜泣石 at 06:57| 花草木 | 更新情報をチェックする

2011年02月12日

ヤマトキゴケ

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我が家の庭には大きな花崗岩がごろごろしている。少し日当たりの悪いあたりでは、その表面に地衣類がたくさん吹き出している。少し青みがかった明るい灰色で、1cmほどと毛足の長いマットのようで、たとえきれいとは言えないまでもなかなか趣がある。

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よく見ると珊瑚のような感じに枝分かれしている。こういうのを樹枝状地衣類と言うのだそうで、これはその中のヤマトキゴケのようだ。関東地方あたりからずっと南に沖縄まで分布し、平地にも山地にもあるごく普通の種類とのことだ。

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見たところはコケのようで、名前にもコケと付いているが、地衣類はコケどころか植物でもなく、全く違う系統の菌類に属している。つまりカビやキノコの仲間だ。どうしてそういうことになるのか不思議に思うが、ぐっと拡大してみると驚いたことに確かにキノコの頭が見える。これならキノコの仲間というのもうなずける。

地衣類は菌類と藻類が共生した特殊な生物だと昔は習った。しかし今は地衣類という生物がいるのでなく、菌類そのもので、ただ藻類利用という特別な栄養法を獲得しただけとされている。なんでも菌類全体のうち2割くらいが地衣化しているそうで、かなりありふれた現象のようだ。考えてみれば菌糸の隙間に空中を飛散している藻類が入り込むなど起きて当然だ。湿って安定した環境だから藻類はどんどん増えるだろう。菌類にとってみれば光合成をする藻類は養分を作り出してくれるので、いわばきちっと家賃を払ってくれるありがたい居候だ。菌類は通常有機体の内部に潜り込んでそれを分解して食べている引きこもり生活者なのだが、地衣化すれば常にお弁当を持っているようなものだから外に出てこられる。しかし条件の良いところはすっかり植物に占領されているから、乾いた岩の上とか木の幹とか、とんでもないところしか空き場所はないようだ。

共生関係は1対1でなく多対多なのだそうだ。一つの藻類が違った菌類と共生するし、一つの菌類がいくつかの藻類を取り込んだりしているそうだ。また藻類という言葉は原始的な光合成生物一般の総称で分類群ではない。そのうち共生するのはシアノバクテリアと緑藻類の二つだそうだ。シアノバクテリアは光合成の元祖といえる生物で、植物細胞の中の葉緑体ももともとはシアノバクテリアで、それが細胞の中に取り込まれて共生したものだといわれている。まったく当たり前のように見過ごしている世界に、こんなに不思議がぎっしり詰まっているのだ。

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地衣類は成長が遅いという。庭の岩は私が並べたもので、ごろごろ転がしたからその時は何も付いていなかった。8年くらいかかってやっとここまでになったわけだ。大きなもので10cm近くになっているから、年に1cmくらいは広がっているようだ。地衣類などよく判らないし親しみもなかったが、これだけ増えてくると気にしないわけにはいかない。たいして広くはなくても命に満ち溢れた屋久島の庭の中で、しっかりその存在感を見せ付けている。
posted by 夜泣石 at 10:37| 動植物以外の生物 | 更新情報をチェックする

2011年02月05日

ジシバリ

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厳しい寒さが続いてはいても、庭では小さな雑草の花がぽつぽつと咲き出している。一番多いのがジシバリだ。日当たりの良い一角を一面に覆っている小ぶりのかわいらしい葉は、寒さで紫や茶色に変色はしても枯れることはない。そしてその間から、もう何本も花茎を伸ばしている。

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花はこのようなキク科の仲間の典型的な形をしている。これだけ見たら、何の花か言い当てるのは難しい。濃い茶色の雄しべの筒を貫いて、花粉だらけの雌しべが突き出ている。咲いてから数日もすると先がくるりと丸まってきて、なんだか楽しげな感じだ。

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冬の朝はたいてい一面に夜露が降りている。寒い寒いといっても、霜でなく露というのが南の島の良いところだ。葉の上で水滴は大きなものから微細なものまでみんなきれいな玉になっている。それにしてもなぜこんなに大きさの違いができるのだろう。わずかな風で転がって、雪だるまのように大きくなったのかもしれない。すでに2月、もう日差しはかなり強くなっている。この大小の玉もわずかな時間で跡形もなく消えてしまう。

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ジシバリの名は、細い茎が地面を這い、茎から根を下ろしてどんどん広がっていく様子が地面を縛っているように見えるためだそうだ。茎はところ構わず伸びていって、岩があればその上にも這い上がる。そんな乾ききったところでも、少しでも砂がたまっていたりすればそこで根を下ろし葉を広げる。岩に生え、食べると苦いということでイワニガナの別名がある。それにしてもこんなところでこの先どうなるかと心配なくらいだ。

今年の冬は格別に寒かったが、やっと終わりに近付いたようだ。庭に来るノラネコたちが、いつもと違う鳴き方をしながらうろうろしている。一足早く春になった感じだ。昨晩、久しぶりに雷雨があり急に気温が上がった。このあたりが一面、ジシバリの黄色に染まるのはもうすぐだろう。
posted by 夜泣石 at 06:52| 花草木 | 更新情報をチェックする
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