2010年10月30日

検察事件報道の危うさ

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そろそろ下火になってはきたが、大阪地検特捜部の証拠改ざん事件が長くマスコミを賑わせている。そうして多くの国民の検察への不信や特捜部の面々への怒りを煽ってきた。しかし世の中とは本来、極めて多面的重層的なものであるはずだ。こんな一方的集中的報道は果たして真実を伝えているのだろうか。

まず検察不信に対して、その功績の面もあることを見てみたい。そもそもこの捜査は、郵便割引制度の不正適用を暴いたものだ。それは実は以前から広く行われていて関係者の間では周知の事実だったという。しかし法律が甘く、また郵便局側にもそれを受け入れたい事情もあったとのことで、誰も摘発できないできてしまったのだそうだ。それに大阪地検特捜部が果敢に挑んだわけだ。そしてこれが見せしめとなって、それ以降全国的に割引適用がガタ減りしたとのことだ。これだけの社会悪を暴いた彼らの功績は間違いなく大きい。その捜査を指揮したのが今回逮捕された前田元検事だそうだから、彼は一方では国民に対し多大の貢献をしているわけだ。こうした事実を全く報道しないのは、マスコミはただ一方的に国民を扇動したいだけなのだろうか。

次に今度は検察不信の面で、報道の奥にもっと本質的問題のあることに言及したい。前特捜部長らの逮捕において、証拠改ざんは故意か過失かが争点になっている。報道はそのことばかりに集中している。だが本当に問題にするべきはそこではないと思う。そもそもはデータが検察の「見立て」に合わなかったから、辻褄を合わせるために改ざんが起きたのだ。故意であろうが過失であろうが、その時点で検察の描く構図は破綻し、村木厚子さんの無実は関係する検察官の誰もが認識したはずだ。それなのになぜ強引に起訴に踏み切ったのか。彼らは意識して冤罪者を作り出そうとしたのだ。前特捜部長らは改ざんは過失との報告を受けたと犯人隠避罪を否定しているが、そんなことは本当の罪に比べたら些細と言えるほどだ。故意に冤罪者を作り出そうとするなど、法律以前に人としてあってはならない。しかし彼らにはまったくその自覚はないようだ。

マスコミの報道が故意か過失かばかりに集中しているのは、国民の目を本質からそらす結果になっている。それは根本的な問題を隠蔽したいという検察側の誘導によるのだろうか。人を裁くことに携わる検察が、上から下まで組織全体、倫理的道徳的に破綻しているなど恐怖以外の何ものでもない。
posted by 夜泣石 at 09:45| 世の中のこと | 更新情報をチェックする

2010年10月26日

ハイビスカス

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ハイビスカスは沖縄の花とされているが、屋久島の里も負けてはいない。色も形もさまざまなものがあちこちで咲き誇っている。そんな中でとびきり目を奪われた花があって、移住してまもなくの頃、もうどこだったか忘れたが一枝折り取ってきて庭に差した。今では毎年、大きな花をたくさん咲かせている。

オレンジ系の色も珍しいし大きさがすごい。たくさんの花びらがぎっしり集まっていて、いくつもの花をぎゅっと束ねたかのように見える。花びらが多いということはつまり八重咲きなのだが、無造作にぐちゃぐちゃになっているのがかえって華やかさを感じさせる。

八重というものは雄しべが花びらになってしまったものだ。どちらも葉が変形してできたもので、数個の遺伝子が入れ替わっただけで容易に化けてしまうのだそうだ。雄しべは普通、花びらの内側に並んで生えている。それが花びらになったらやはり行儀よく並んで、我々がよく見る丸く整った八重の花になるだろう。

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しかしハイビスカスの仲間は、たくさんの雄しべが集まって筒状になっている。その内側を雌しべが通り抜けて、突き出た先で5個の柱頭に分かれている。筒から生えた、このブラシの毛のような雄しべが花びらになるといっても、いったいどんな形になれるのだろう。

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たくさんの花びらを掻き分けると赤い柱頭と黄色の葯が見える。しかし通常と違ってその回りを花びらが取り囲んでいて筒のようには見えない。

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少し切り開くようにしてよくみると、何枚もの花びらが筒に沿って襞のようになっている。つまり縦に付いているのだった。先の方には花びらになり損ねた雄しべが不規則に残っているが、筒はもう花びらの一部になっている。本来の花びらが横に開いている上に、小さめの花びらが縦にたくさん放射状に並んでぎゅうぎゅうになっているから、こんな立体的に華やかな花になるのだった。

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ハイビスカスはこの種の名前ではない。本来はアオイ科フヨウ属を意味するそうで、フヨウの仲間全部が含まれることになる。しかし日本では一般に、真っ赤な大輪のブッソウゲと、それから作り出された多くの園芸種のことを指している。またよくハワイ原産と言われているが、どうも中国かインドが原産地らしい。それがハワイや沖縄などこんなに世界に広がったのは、これが簡単に挿し木できるためだろう。屋久島では雨の多い時期に小さな枝でも地面に挿しておけばたいがい根付いてしまう。枝や葉に強度があるわけではないが性質が強健だから、ぎっしり植えて防風林になっていたりする。それでもあまりの暑さは苦手のようで夏にはほとんど咲かない。よく南国のイメージとして、真っ青な空と海、真っ白な雲と砂、そして真っ赤な花の組み合わせが出てくるが、あれは真夏の情景ではない。ハイビスカスがきれいにたくさん咲くのは秋が深まってからだ。もっとも天気さえ良ければ、秋の方が空も海も青が深まるから、景色としては間違っているわけではないのだが。
posted by 夜泣石 at 06:33| 花草木 | 更新情報をチェックする

2010年10月21日

ハグルマノメイガ

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朝晩はだいぶ涼しくなったが、それでも秋とは思えない暑さで、虫たちはまだまだ元気に飛び回っている。夜、うっかり窓を開けると華やかな色の蛾が飛び込んできた。カラスよりも黒そうな羽は、白い筋がくっきりと通っていて一本一本分かれているかのように見える。中の方は鮮やかな黄色で、黒い小さな紋が離れ気味の目のようにぽつんと付いている。熱帯の極楽鳥にこんな色合いのものがいたような気がする。

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黒いところは光の加減で金属的な青い光沢を帯びたりする。見る角度でさまざまな色合いに変化するのが神秘的なほどだ。黄色の部分はびっしりと毛で覆われて深みのある色になっている。お腹の部分の格子縞もなかなかしゃれた感じだ。

東京あたりでは蛾はたいてい茶色の地味なものというイメージが強い。南国ではずいぶん派手なものがいて驚かされる。それでもこれほどの色合いにはそうはお目にかからない。こんなに特徴的な柄だから図鑑を見てすぐに名前は判った。ハグルマノメイガというのだそうだ。

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上の方から見ると半円形の扇のようだ。ハグルマという名は、きっと歯車ということだろう。金属的な色で白い筋が放射状に出ているところは確かに精密機械を連想させる。しかし私は最初、ハナグルマ(花車)と読み間違えた。それほどきれいだということだ。

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真正面から見たところは異星人の風貌か。といっても恐ろしげでなく、大きな目や仕草に愛嬌がある。そしてずいぶん足の長いのに驚かされる。足の途中から指のようなものが出ている。虫の足に普通はこんなものはないはずだが、いったい何のためだろう。それにこんな姿勢でいる理由は何だろうか。背伸びして遠くを眺める必要などないはずだが。

大きさは2cm弱。九州から南西諸島にかけて分布しているそうだ。幼虫の食草はミツバウツギ科のショウベンノキゴンズイだそうだ。それらはこのあたりの雑木林にいくらでもある。その割にはこの蛾はあまり見かけない。しかし珍しい種類というのでなく、もっと南にいけばごく普通にいるのだそうだ。

ネットを見ていたら西表島におけるサガリバナの主要な送粉者の一人であるとの記述があった。昔、最南の島々を何度も旅行したことを思い出す。サガリバナは川岸に生え、びっしりと花を付けた長い房を川の上に垂らしていた。わずかに赤みを帯びた白い糸玉のような花は夜開き、うっとりするような香りを漂わせた。明け方、花は一つ一つ落ちてびっしり川面を覆い、ゆっくりと流れていくのが幻想的なくらいだった。あの花とこの蛾の取り合わせはどんなにかきれいだろう。もっと若ければ、きっとそれを写しにまた遠くの島まで行っただろうと思った。
posted by 夜泣石 at 06:22| 生きもの | 更新情報をチェックする

2010年10月16日

タチスズメノヒエ

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草取りを怠った庭にぼうぼうと生えているイネ科の雑草に花が咲いていた。普段こんなものには見向きもしないのだが、青空を背景に秋の日差しを浴びている姿が、ふと意外に美しく思えてカメラを向けてみた。

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細く透明な糸の先に黄色の札のようなものがぶら下がっている。これは雄しべで黄色のものは葯なのだ。わずかなそよ風にも細かく揺れて花粉を飛ばしている。黒いひげは雌しべで、この毛で風の中の花粉を捕まえようとしているわけだ。丸く並んでいるものは小穂と呼ばれ、この中に花が一つ入っていることになる。イネ科の花などごく小さく貧弱で原始的なもののように思うが、実際は花の部品はすべて揃っていて、普通の花からこの形に進化してきた一つの頂点のような存在なのだそうだ。

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だいだい色の葯もあった。すっかり花粉を飛ばしきって抜け殻になっている。どうも黄色が古くなると濃く変色するようだ。

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葉のふちには微細な鋸歯があるそうで触るとざらつく。しかしススキのように手を切るほどではない。よく見ると左右で形が違っている葉が多い。片側だけにしわが寄っている。何か目的があるのか、それとも成長する過程でたまたまできてしまったのか、ちょっと不思議だ。

イネ科の雑草というのは種類が多く、目立った特長もなく区別が難しい。おまけに図鑑などには、まず聞いたこともないような用語が難しい漢字で並んでいる。たいていはきれいということもなく、細長いばかりで写真に撮りようもないので、ずっと敬遠してきてしまった。たまたまこんな花に気付いて名前を調べてみる気になった。すると姿かたちの違いから大きく3つに分けられることが判った。そこから入っていき、すぐにスズメノヒエに行き着いた。

ところがそこから先が大変だった。在来のスズメノヒエは葉が毛に覆われ、小穂には毛がないのだそうだ。ところがこれは全く逆なのだ。この仲間には帰化植物が多いということなのでそのどれかだろう。しかし帰化植物は移り変わりが激しく図鑑などにちゃんと載っていないことが多い。ネットの記事をいろいろ比較してやっとタチスズメノヒエだと判った。改めて庭を見て回ると在来のスズメノヒエはほとんど無く、やはり帰化植物の、雌しべだけでなく葯まで黒いシマスズメノヒエやキシュウスズメノヒエが目立つのだった。

タチスズメノヒエは南アメリカ原産で、日本に入ってからせいぜい50年ほどだそうだ。しかし今では関東以西で普通だという。膝くらいの高さでそっと花を咲かせているうちはどうということもない雑草だが、多年草で年々根元が大きくなりがっしりして、草丈も1.5mを超えるほどになる。ススキか何かと思いながら年に何回も草払い機でばっさり切り倒していた厄介な雑草の正体がこれだった。
posted by 夜泣石 at 05:44| 花草木 | 更新情報をチェックする

2010年10月11日

ヤマボウシ

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今頃の季節、山道を歩くといろいろな木の実が落ちている。ふと赤くきれいで奇妙なものを見つけた。表面がぶつぶつしていて、大仏様の頭の模様を思い出す。ああ、ヤマボウシの実だなと懐かしかった。木の上で熟れている時はもっとみずみずしく膨れていた。甘くなかなかおいしかった覚えがある。変った形なのは、このぶつぶつの一つ一つが果実で、これはたくさんの果実がくっついたものだからだ。

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このあたりのヤマボウシは大木ばかりで、実や花を間近で見ることができない。川にかかる吊橋から川岸の木をやっと見下ろすことができた。実はサクランボのように長い柄の先に付いているのだが、そちらは垂れ下がるのにこちらは葉の上に並んで突っ立っている。これなら鳥たちは食べやすそうだ。しかしそれにしては食べられていなくて、熟しすぎて地面に落ちているのが多いのはどうしてだろう。

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この場所では7月初め、川面を覆うように一面に花の咲いているのを見た。真っ白い花が葉の上にびっしり並んでとてもきれいだった。上から見下ろさないと鑑賞できないのだが、大木のためそんな機会の少ないのが残念だ。白い花びらに見えるものは実際は花序を包んでいた葉で、総苞と呼ばれるものだ。その真ん中にある丸いものが花序で、小さな花がぎっしり球状に寄せ集まっている。それらが実る時に互いにくっついてしまって一個の集合果になるのだ。ヤマボウシの名は、丸い部分を頭に、白い部分を頭巾として山の法師に見立てたものとのことだ。しかし私には頭巾ではなく白い法衣か、お地蔵様のよだれ掛けのように見える。

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山道を歩くと、高い木の上で咲いているのが葉陰からちらちら見える。薄暗い森の中から、はるか上で青空を背景に真っ白に輝いているのを見つけるのはなかなか感動的だ。

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たまたま真横から見ることができる場所があった。横に伸びた枝、緑の葉、その上を真っ白な花の層が覆っている。枝は傾いているのに、花の表面がほぼ水平になっているのが面白い。

ヤマボウシはほぼ全国に分布し、東京近辺ではちょっと郊外に行けばあちこちで見られた。また植木として庭や公園に植えられていた。屋久島では1000mを越す高山に行けば川沿いなどにたくさんあるが、平地や低山では見たことがない。ナナカマドも同様で、これらの木は暑さが苦手のようだ。寒冷な時代、本土と地続きだったこの島にやってきて、その後暖かくなって高山に逃げ込んだ生き残りといったところか。
posted by 夜泣石 at 06:53| 花草木 | 更新情報をチェックする

2010年10月06日

ヌルデ

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白、赤、黄色で彩られた花がぎっしり咲いている。昔の千代紙か何かにこんな模様もあったような気がする。とても明るく華やかなのだが、じっと見ているとどこか危うさやはかなさのような感じがそっと湧き起こってくる。今の季節、目を凝らせばこんなきれいな花が道路脇の雑木林などにいくらでも咲いているのだが、道行く人はまず気が付かない。一つ一つがせいぜい米粒くらいしかないので、少し離れるとただ白っぽい塊にしか見えないのだ。

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ぐっと目を近づけるとなかなかかわいい花だった。黄色の大きな雌しべ、白い小さな花びら、顔が大きく手足の短い赤ん坊の雰囲気だ。橙色の部分はきらきらしていて蜜がたくさん出ているようだ。甘いけれどもさっぱりした良い香りが漂っている。花びらの間の点々は雄しべの痕跡のようだから、これは雌花で、きっとどこかに雄花もあるはずだ。

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探したら別な木に雄花も満開だった。だいぶ淡い色合いで、やはり不釣合いに大きな雄しべがきれいな飾りになっている。すっきりときれいで、こちらの方が多くの人に好まれそうだ。

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花の数はおびただしい。木の上はすっかり花に覆われて白い塔のようだ。真上からだと大きな勲章のような形に見える。

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ヌルデはいわゆるパイオニア植物の一つで、崩壊地にいち早く進出する。道路や畑の脇などにいくらでも生えている。当たり前すぎて気にも留めなかったのだが、今年は9月末頃からいっせいにたくさんの花を咲かせた。あまりのおびただしさに、あれ、こんなにあったかと改めて驚かされた。確か例年は夏の終わりの暑い時期に、どうということもなく咲いていたはずだ。この異常さも、今年の夏のあまりの暑さのためなのだろうか。

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ヌルデの葉は奇数羽状複葉で、珍しいことに葉軸に翼がある。こんな葉は他にはまずないから見間違えることはない。長いものは50cmを超え、垂れ気味に出て頭をもたげている様子はいささか不気味な感じがする。これでも本土では秋には真紅に紅葉してきれいだった。屋久島では緑のうちにたいてい虫に食われてぼろぼろになる。そのまま茶色く枯れ落ちてしまい、紅葉に気付くことは少ない。同じウルシの仲間のハゼノキがこの島の里や山を真っ赤に彩るのとは大違いだ。

私はハゼにはちょっと触れるだけで痒くなるがヌルデは平気だ。しかしまれにかぶれる人もいるそうだ。この葉には大きな虫こぶができて、それからお歯黒などにも使う黒い染料を作ったのだそうだ。しかしあちこちの木を見て回ったが虫こぶは見つからなかった。虫こぶはヌルデシロアブラムシが寄生してできるそうだが、その虫はヌルデに取り付く前にチョウチンゴケというコケで幼虫時代を過ごすということだ。してみると屋久島にはそのコケがないのか少ないのかもしれない。ヌルデは日本全国どこにも当たり前にあるし、まず人目を引くようなこともない。しかしそんなありふれたつまらないものでも、よく見れば自然の美しさや奥深さを堪能させてくれるのだった。
posted by 夜泣石 at 09:45| 花草木 | 更新情報をチェックする

2010年10月01日

ツチトリモチ

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9月下旬、山に行くと思いがけずツチトリモチがたくさん出ていた。1000mを超える山々の深い森の中で、この赤はきれいというより毒々しいくらいだ。そんものがじっとりと湿った地面のあちこちからにょきっと顔を出しているのは不気味なほどだ。

いかにも毒キノコのように見えるが、根元の方が鱗片状の葉に包まれているので、菌類ではなく植物であることが判る。ではこれから成長していくとか開いて花が咲くとかいうと、そんなことは起こらない。これはすでに花のかたまりで、少し大きくなるくらいでやがてこのまま真っ黒になって腐っていく。大きなものでも高さはせいぜい10cmくらい、太いところで径1.5cmくらいのものだ。

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ではどれが花かというと、表面の小さなぶつぶつの間に隠れていて外から見えないのだそうだ。よく見ると白い毛のようなものが隙間からたくさん出ている。なぜか雌株しか見つからないということなので、きっとこれが雌しべの先端なのだろう。なぜ雄株はないのか、こんな花でどんな送受粉をしていたのか、何も判っていないようだ。まだ見たことはないが単為生殖で種子ができるそうだ。ところでこの白い毛に気付いたのは今回が初めてだ。ツチトリモチがよく目に付くのはもっと秋が深まってからだが、その頃はもう花が終わっていたのだろう。

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以前、秋の終わり頃、斜面が崩れて根が露出しているのを見た。白っぽい塊で、まるでショウガを思わせる。その表面を突き破って、何本もの花茎が出ている。

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もっと大きな塊もあった。これを掘り出すと、ごつごつしたイモがいくつもくっついていて、かなりの分量があるそうだ。イモは木の根を取り囲んでいて、そこから養分を吸い取っているという。寄生する相手はハイノキの仲間だそうで、それは屋久島の山にはいくらでもある。このイモを潰すとねばねばになり、昔はそれで小鳥を捕ったという。鳥黐(とりもち)はモチノキから作るものだが、その代用品になったのだろう。

紀伊半島あたりから南に屋久島あたりにまで分布しているそうだ。東京近辺では見られなかったし、各地で絶滅危惧種に指定されているほど珍しい植物だから、この島に来てごく普通にあるのには感激したものだった。

10月から11月、以前は太目のツクシのような感じでかなり伸びたものがよく見られた。なぜか最近はあまり見かけない。どうもシカが食べてしまうようだと聞いたことがある。それで9月にはこんなにたくさん芽生えているのに、どんどん消えてしまうのかもしれない。食感は洋ナシのようだと言っていた人がいた。よくこんなものを口にする気になったものだと感心する。

この島にはヤクシマツチトリモチという別種もあるそうだ。見かけはそっくりだが雌花の色が違うとのことだ。ツチトリモチは黄色で、ヤクシマツチトリモチは紅色だそうだ。しかしそれは割ってみないと判らない。私も昔はよくそこまでして調べたものだが、今はもうその気になれない。単なる個人的趣味で皆がそんなことをしたら、これだけあってもすぐに無くなってしまうだろうから。
posted by 夜泣石 at 06:50| 花草木 | 更新情報をチェックする
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