2010年08月27日

アオギリ(2)

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6月に花を見つけたアオギリの林にまた行ってみると、すでにあの風変わりな形の実がたくさんぶら下がっていた。5枚の葉が古めかしい電灯のような形を作り、中に豆電球がいくつも付いているかのようだ。

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2枚を持ち上げて中を覗いてみる。縁に沿って上の方に、ちょうどグリーンピースそっくりな種子が付いている。1枚当たり2個から4個、並び方も不規則だ。なぜこんなところにと不思議な気がする。

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まだ開く前の実もあった。紡錘形のものが5個、放射状に並んでいる。長さは10cm近く、あの小さな花からこんなものができるのにも驚かされる。

しかし植物の果実の成り立ちから見ていくと、この形は決して奇妙ではないのだった。馴染みのある果実としてたとえばリンゴを見ると、おいしい果肉を食べてしまうと芯が残る。その芯に相当するのがこのアオギリの果実であり、ただ果肉がないだけなのだ。芯には種を包んで薄い爪のような殻があるが、それがこの5枚の葉のようなものに相当する。これは心皮といってもともとは葉なのだが、1枚かあるいは複数枚集まって雌しべになったものだ。リンゴも横に切ってみると芯は5角の星型になっていて同じ5枚の心皮からできているのが判る。心皮は互いにくっつきあって袋状になっていて、普通はずっとそのままか、あるいは種子が完全に稔ってから散布のために割れる。それがアオギリではまだ未熟のうちからすぐにばらばらになってしまっただけなのだ。また種子は心皮の端にできるのが普通だから、こんなところに付いているのも標準的なのだ。たとえばマメの鞘は1枚の心皮を丸めて筒状にしたものだが、割ってみるとその合わせ目にマメが付いている。つまり心皮の端ということだ。こうして謎が解けてみると、一つの原理からこんなに違った形ができることにかえって驚かされる。

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すでに完熟して茶色くかさかさになったものもあった。このスプーンか靴べらのような形は風に乗って種子を遠くに飛ばすためとのことで、理科教室などで実験の題材にしたりするそうだ。試しに何枚か取って放ってみると、きれいにくるくると回って長く空中を舞うものがあった。種子が不規則に付いて重心が偏っているものがよく回るのだそうだ。滞空時間が長ければ、そよ風くらいでも遠くに飛ばされていくだろう。確かに良くできた話だと納得する。

しかしすぐに疑問がわいた。1枚を取ろうとした時、もうこんなに枯れているのにしっかりくっついていて簡単には外れないのだ。なんとか千切ろうとぐずぐずしていると種子がばらばらとこぼれ落ちたりする。これではそよ風の中を船に乗って旅立つというわけにはいかない。カエデはプロペラ型の果実で、木を揺すると小さなヘリコプターがあたり一面に飛び交ってとても楽しい。そんなことがこのアオギリでは起こりそうもない。あたりの地面を見ても靴べらは落ちていない。それどころか5枚くっついたままどさっと落ちていたりする。良くできた話は人間の想像力が生んだ作り話だったのだろうか。それともある時期になったらいっせいに旅立つのだろうか。やれやれいつになったら宿題は終わるのかとたくさんの果実を見上げていると、いやまたそれもうれしいものだという気もしてくるのだった。

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posted by 夜泣石 at 09:38| 花草木 | 更新情報をチェックする

2010年08月21日

ツルマオ

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ハスの実のような、それともミカンを輪切りにしたような半球状のものが葉の付け根にびっしり並んでいる。黄緑の柔らかな色、少し赤みが差したもの、不思議な感じがして気を惹かれる。これが大きければ生け花の花材とかにもなるだろうが、残念ながら1mmくらいしかない。ともかくこれは何だろう。ちょっと見たところ果実かと思う。しかし茎の上の方のできたてのものでも同じ形だ。そして下の方ではこの形のまま茶色くなって、どうもそれが果実であるようだ。ということはこれは花で、真ん中のぽつんとした突起は雌しべということか。

しかしこれで花粉を受け取ることができるのだろうか。いろいろ見ていくと、この突起の先に白い糸くずのようなものが付いているのが見つかった。それは風媒花の雌しべによくある形で、きっとそれがもともとの姿なのだろう。そこまでする必要がなくなったので、いつの間にか退化させてしまったのではないだろうか。また雄しべはどこにも見当たらないのでこれは雌花で、別にきっとどこかに雄花があるはずだ。

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だいぶ探してやっと見つかった。何と半球状のものが割れて、中から雄しべと思われるものが顔を出している。周りにはもう花が終わった後の葯の残骸がいくつも見られる。蕾の状態では雄花か雌花か区別がつかない。

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雄しべが伸びて外に飛び出しているものがあった。白い葯はすっかり開いている。きっと花糸が伸びる瞬間に花粉をはじき出すのだろう。

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その後、5本の雄しべは放射状に展開する。これでやっと花らしい形になった。それでもこんなに太く透明な棒のような花糸は他に見た覚えがない。

それにしても雄花を付けている株はほとんど見つからない。ということは大部分が雌株で、一部に両性株があるということか。それとも雄花は上の方にだけ見つかるので、今雌花しか付けていない株ももっと伸びていくと、やがて先の方に雄花を付けるようになるということか。

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この草はイラクサ科でツルマオという名前だった。確かにツルらしく地面を這いまわるが、その先では自力で立ち上がる。群生すると互いに寄りかかるようにしてかなりの高さまで伸びる。寄りかかる木などがあれば人の背丈を超えたりする。多年草で古くなると木質化して、根元近くは太くなりしっかり根を張って引き抜くのが一苦労になる。

静岡県あたりから南に分布するそうだが、本土ではぽつぽつとある程度で、植物園でやっと見られるようなものとのことだ。屋久島では雑草の中の雑草という感じで、庭や畑のいたるところに生えている。花も冬以外はたいていいつも付けている。

ある日一面に群生しているところでしばらく雄花を探した。数日後にまた行ってみたら見事にすべて草刈されていた。こういうことは何度も経験している。どうも私が観察していたのが引き金になったようで、この島の人は何と意地悪かと思う。しかしきっとそうではなく、こんな雑草を畑に生やしておいて、それをじろじろ見られたのが恥ずかしくて、あわてて草刈したというのが真相なのだろう。
posted by 夜泣石 at 06:48| 花草木 | 更新情報をチェックする

2010年08月15日

モンキアゲハ

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満開になったニクイロシュクシャの周りをたくさんの黒いアゲハが群れている。今年はなぜかそのほとんどがモンキアゲハだ。日本のチョウの中では最大種で、黒地に白と朱色の模様はこの鮮やかな花にとても似合っている。

蜜を吸っているときでもせわしなく羽ばたきをやめない。そっと近付いてもすばやく逃げる。目立つ分だけより用心深いのだろうか。チョウらしく波を描くように飛ぶが、その割には速く力強く、たちまちどこかに行ってしまう。家にいて窓を横切るのを見かけて、一瞬鳥かと思うほどだ。

前翅は真っ黒に見えるが、光の加減で白い筋が浮かび上がる。後翅にはくっきりと白い紋がある。白い模様の目立つ黒いアゲハには他にナガサキアゲハの雌がいるが、そちらには後端の尻尾のような突起がないのですぐに区別できる。縁に沿って朱色の斑紋が並ぶが、これは南方に行くほどくっきり鮮やかになるのだそうだ。言われてみれば東京で見たものよりだいぶ派手なような気がする。しかしもともと南方系のチョウなので東京ではそんなに馴染みではなかった。

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表側を見ると赤い模様はかなり少ない。白い紋だけが鮮やかだ。これは裏側と全く同じ位置にある。逆光で見たとき気が付いたのだが、これは模様と言うより半透明の窓で光が透けているのだった。だから表裏同じだったのだ。

ところでこのチョウの名前は紋黄なのだが、実際はほとんど真っ白だ。これは時間が経つと次第に黄ばんできて、特に標本にすると黄色くなるからだそうだ。標本至上主義のカビ臭い昔の博物学者の付けそうな名前だ。さらに言えば、モンシロチョウやモンキチョウは紋のあるシロチョウ、キチョウという意味だが、こちらは黄色の紋ということでややっこしい。正しい日本語で言えば白い紋のアゲハでシロモンアゲハとでも呼ぶべきだろう。

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この白い紋の効用について、上空から見ると大きな目に見えて、それで捕食者の鳥を脅しているのではないかという説がある。そう言われてみればちょっと怪物か何かの顔のように見えなくもない。しかもいつも閉じたり開いたりしていて、目が現れたり消えたりするので、余計に怪しく思えて鳥も警戒するかもしれない。

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雄は赤い斑紋がほとんどなく黒々している。一回り小ぶりで動きもすばやい。蜜を吸っている雌に背後からちょっかいを出したりしている。

幼虫の食草はミカン科でさまざまな種類に付くが、とりわけカラスザンショウが好物だそうだ。我が家の庭にはいろいろなミカンの木が十数本もあるが、不思議なことに一匹も見つからなかった。隣の雑木林にカラスザンショウの大木があるので、きっとそちらに全部行ってしまったのだろう。その木はまたクマゼミの好物でもあるようで、先月頃から近付きがたいほどの騒音の源になっている。
posted by 夜泣石 at 05:35| 生きもの | 更新情報をチェックする

2010年08月09日

ニガガシュウ

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東京にいた頃、これからの季節に野山を歩くとヤマノイモのムカゴがたくさん採れた。塩コショウして軽くレンジにかけると格好のつまみになった。屋久島でもあちこちにあるのだが、なぜか小粒で量も多くない。その代わりにぶつぶつのいびつなムカゴがたくさん見つかる。大きくて径は2cm、重さも2gほどある。これが食べられたらいいなあと思って試してみたが、苦味が強くて全くおいしくないものだった。

調べてみてニガガシュウという名であることがわかった。関東以西に分布するそうで珍しいものではないようだが、屋久島に来るまで知らなかったし、なぜか一般的な図鑑にも載っていない。

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白い花穂がたくさん垂れ下がっている。その上の方が黒っぽく変色している。アップで見たら濃い臙脂色でなかなかきれいなのに驚いた。白い花が時間が経つにつれだんだん濃くなっていくようだ。この仲間の花はたいてい見栄えがせずヤマノイモなど小さな白いつぶつぶにしか見えないが、これは例外的にきれいだ。ヤマノイモ科はユリ科に近いそうだが、この花を見ればなるほどという気がしてくる。

ニガガシュウは雌雄異株だそうでこれは雄花だった。では雌花はないかと探したが見つからない。なんでも雌株は極端に少ないのだそうだ。ただ花穂を付けていない株も多いので、そんな中に雌株があり、何か条件が整うと花を咲かせるのかもしれない。まあ種子はできなくてもこんなしっかりしたムカゴをたくさん作るのだから繁殖には差し支えないわけだ。ムカゴとは考えてみれば奇妙なものだが、もともとは腋芽であり、いわば肥大化した枝なのだそうだ。

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葉は丸くずいぶん大きくなる。屋久島の里の林にはフウトウカズラなどこんな葉のつる草がたくさん絡み付いているが、そんな中で大きさといい色艶といい一番存在感がある。先のかなり尖ったハート形はドクダミに似ている。ニガガシュウの名は葉の形が漢方薬のカシュウに似ているからだそうだが、カシュウは別名がツルドクダミで、つまり3者とも似たような葉というわけだ。しかしこれらはみな別の科で、葉脈の描く模様など全く違っている。

なお名前の由来については、中国にこれを品種改良して苦味をなくしたものがあり、その塊根がカシュウのそれに似ているのでカシュウイモと呼ばれ、その野生種をニガガシュウと呼んだという説もある。カシュウイモはムカゴが巨大になり、エアポテトの名で園芸カタログに載っていたりする。ところでカシュウと聞くとカシューナッツを思い出すが、そちらはポルトガル語由来だそうで、それに対しこちらは中国語だから、たまたま音が近いだけで全く関係はない。

この葉を見て、以前ヤマノイモ科を図鑑で探した時、単子葉類に分類されているのに気付いて驚いたことを思い出す。どう見ても双子葉類と同じ網目状の葉脈で単子葉類の平行脈ではない。実際子葉は2枚で、またツル性であることも単子葉類の中では珍しく、異端児と言われたりもするそうだ。まあ分類というのは我々が自然を理解しようと勝手に作った規則であり、自然がそれに従っている訳ではないということなのだろう。

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posted by 夜泣石 at 10:01| 花草木 | 更新情報をチェックする

2010年08月04日

オオミノトケイソウ(2)

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やっとオオミノトケイソウが実った。毎年たくさんの花が咲いていたのだが、自家不和合性ということでみな徒花になってしまっていた。一昨年ある人から庭にあるという話を聞き、一枝もらってきて挿し木した。それが育ってこの冬頃からたくさんの花が咲いた。我が家にもとからある株も早春に咲き出したので早速人工受粉した。ふと気付くと果実がずらりと実っていた。柱頭も萼も花弁も副花冠も付けたまま子房だけがもっこり膨らんでいる様子はなかなか愛嬌がある。

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せっせと受粉させるとほとんどすべての花が実る。初夏にはずらりとぶら下がった。こんなに結実しやすい果物だったのだ。それなのに今までほとんど実ることがなかったのはそれほど自家不和合性が強いということか。

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普通のトケイソウの実(パッションフルーツ)と並べてみるとずいぶん大きい。長さは13cmほど、重さは300gを超えている。パッションフルーツは真っ赤になってから食べるが、こちらは赤く熟したりせず、全体が黄色っぽくなると食べごろのようだ。お尻の辺りが少し柔らかくなってきて、置いておくとどんどん傷んでくる。

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切ってみた。薄茶色の半透明のぶよぶよしたものが詰まっていて、ふとウミホオズキを思い出す。ただ皮が厚く中身はずいぶん少なくがっかりする。スプーンですくって食べてみるとあっと思うほど甘い。パッションフルーツのような酸味や特有の香りはほとんどない。風味は知らずに食べたらブドウかと思うだろう。特別甘くおいしいブドウだ。たぶんこちらの方が万人受けするだろう。

ただ問題がある。種が大きいのだ。口の中で種を出そうとしてもぶよぶよとしっかりくっついていて剥がれない。それにそんなことをしていると酸っぱい味が広がる。種のまま飲み込めばよいのだが、ちょっと大きさがあるのでつい噛んでしまう。するといくらか青臭さがしてあまり食感が良くない。つまりとてもおいしい果物なのだがこの食べにくさが足を引っ張る。自分の庭で作って食べる分には最高だが、残念ながら商品として売るには気が引ける。それがこの果物の普及しない理由なのだろう。

もらってきた株の方はひと回り小ぶりの花をたくさん咲かせた。しかも大量に花粉を出すので授粉用には最適だった。もとからある株はとても花粉が少ないので逆はなかなかうまくいかない。やっと10個ほどが実った。姿かたちは確かにオオミノトケイソウなのだが実の大きさは普通のトケイソウとあまり変り映えしない。食べてみると味は良く似ているが、いくらか甘味は少なくちょっと青臭さがある。どうもこちらは受粉用と割り切った方がよさそうだ。

トケイソウは極めて強靭で枝を挿せば簡単に根が出てくる。最近、新しい株をもらったのでどんな実ができるか楽しみだ。我が家からも何人かに渡しているので、人から人へこれから島内に広がっていくかもしれない。
posted by 夜泣石 at 06:24| 花草木 | 更新情報をチェックする

2010年08月01日

プルメリア

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半月ほど前、まだ梅雨の続く中でプルメリアが咲き出した。多くの花が長雨に打たれて溶けるように崩れていってしまう中で、この厚みのある花びらは凛として、しっとりとした色合いを深めてかえって美しさを増していた。

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梅雨が明けたらその強烈な日差しの中で、今度は別な輝きを見せている。濃い桃色と黄色が、はっきりと色分けされずに純白の中ににじんでいくのが、神秘的なほどの奥深さをかもしだしている。

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香りは世に言われる程のむっとするような甘いものではなく、ちょっと刺激のあるスパイシーな感じだった。インドや東南アジアの土産物屋に入った時につんと鼻に来るあの香りに近い。厚い花びらそのものが香りを持っていて、摘んでだいぶ経って萎れてきても香り続けている。レイなどには最適なわけだ。

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ねじれた蕾は思いがけないほど見事に赤い。その上部のねじれがほどけてラッパ型に開くと、隠されていた純白の部分が現れる。花びらは下のほうはくっついて細い筒になっている。

花は中心部に毛のようなものがあるだけで雄しべ雌しべなど何も見えない。試しに千切ってみたら細い筒の内側はびっしり白い毛が生えていた。一番奥に緑色の子房があり、その上に白い柱頭が2本あった。ごく短く、ちょこんと小さな粒が2個載っているような感じだ。それを取り囲むように短い雄しべが筒の内壁にくっついていた。子房は光っているので蜜が出ているようだが、そこに至る道が長く狭く毛でふさがれている。たぶんある特定の昆虫とだけ契りを交わして共進化してきたのだろう。当然日本にはそんな虫はいないから、たくさん咲いてもまず種はできないわけだ。たまたまできたらしい果実の写真を見たら、同じキョウチクトウ科のサカキカズラに似て、二本の角が対向しているものだった。

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プルメリアは大木になるので熱帯各地で街路樹に植えられたりもするそうだ。しかし枝は木でも草というのでもなく、多肉植物といった感じで簡単に折れる。先の方にばさばさと大きな葉がかたまって付いているためもあって、台風の後などボキボキに折れた破片がたくさん転がっている。我が家の株はそれを拾ってきて挿したものだ。まるでサボテンのように挿せばすぐに根を出す。

熱帯アメリカ原産とのことだが、ハワイや東南アジアの花のように思われている。簡単に増やせるから世界中の熱帯地方に広がったのだろう。屋久島でもあちこちの庭に植えられている。ただ台風のためか、あるいはさすがにここでは冬の寒さに葉を落としてしまうためか、残念ながらどれもそれほどの大木にはなっていない。
posted by 夜泣石 at 05:35| 花草木 | 更新情報をチェックする
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