2010年03月30日

ヤエムグラ

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春になって庭の草払いが今年も始まった。本州にいた頃は草は手で抜くものだったが、屋久島では小さな庭でも到底抜いてなどいられない。機械で刈り払わなければ間に合わない。いち早くこんもりとした草むらを作っているものにヤエムグラがある。この草の直線的な感じは決して悪くない。節々から放射状に8枚の細い葉が張り出している。その間を細い四角の茎がつないでいる。そうした幾何学的な形状の魅力から着物の柄などにもなっていたりするそうだ。しかしこの茂りようを見てしまうとまず好きにはなれないだろう。

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葉が8枚といっても、本来の葉は普通の対生の植物と同じ2枚だけだそうだ。よく見ると枝が出ているのは必ず向かい合った2箇所だけで、つまりそこだけが本当の葉なのだ。残りの6枚は托葉が大きくなったものだという。しかし托葉など普通はごく小さなものが根元に飾り程度に付いているだけなのだが、こんなに葉と見分けが付かなくなってそれがきれいに並ぶようになるなど、その変幻自在ぶりには驚くばかりだ。

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草を手に取るとざらついてくっついてくるほどだ。拡大してみるとびっくりするような鋭い棘がある。これがもう少し大きかったらかなり痛いだろう。これで何かに寄りかかって高みを目指そうというわけだ。しかし普通のつる植物ほどには上に行こうとはしない。ムグラというとあばら家を連想するが、それはカナムグラのことでこれは家を覆ったりはしない。地面を覆って荒れ果てた庭を演出する。しかし水分もある肥えたところで、手入れをすれば豊かな庭になるところだ。もっと乾いた荒地だったらペンペングサが生え、もっとどうしようもないところはススキの原になる。なお屋久島ではペンペングサのようなおとなしいものは見かけず有象無象の雑草が生い茂る。

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花は極めて小さい。よほど注意しないと咲いていることにも気付かない。拡大してみてもただくすんだ白の4枚の花びらの何の変哲もない花だった。この草はアカネ科だ。アカネという言葉には何かとてもかわいらしい語感がある。しかしアカネそのものをはじめこの仲間はこんなみすぼらしい花しか咲かせないものが多い。よく見ると雌しべが2本ある。それぞれに対応して、子房が2つの玉になっている。

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果実は毛むくじゃらというか棘だらけの玉が2つ並んでいる。これで通るものに絡み付く。我が家に遊びに来るノラ猫たちが、最近よくお腹や足などにこんなものを付けている。そうやって分布を広げているのだ。ところでお腹の大きかった母猫が2週間ほど前に子供を産んだ。どこか人目に付かない離れたところで育てているようで、しばらく必死の様子だったが最近はのんびりしている。一度も連れてきたことはない。この春はずいぶん天候不順で何度も豪雨になったし南の島とは思えないほど寒くなったりしている。子猫たちは野外で耐え切れなかったのかもしれない。しかしこんな天候でも植物たちは水の恵みを受けてかえって旺盛に茂っている。
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2010年03月26日

カスマグサ

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道端などであちこちに絡み付いているマメ科の雑草の中に、赤っぽい小さな花をぽつぽつ付けているものがある。あまりに小さく、また細い花柄の先でちょっとした風にも揺れ動くので、なかなか写真に撮るのは難しい。いろいろやってみてやっと何枚か写すことができたが、結果を見て苦労しがいがあったなと思った。まさかこんなかわいらしい花だとは知らなかった。丸っこく膨らんだ感じで子犬か何かを連想させる。鼻先だけちょこんと青みがかっていて、大きな耳がたれている。

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これは野エンドウ3兄弟の中の真ん中のカスマグサだ。カラスノエンドウスズメノエンドウに挟まれているから、カとスの間というのが名前のいわれという、うそのような本当の話だ。しかし間とは言っても決して中間ではない。花はカラスだけが大きく、あとの2つはごく小さい。スズメが4mmくらい、カスマグサが6mmくらいか。

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大きさの違いは実でも顕著だ。左上がスズメ、その下がカスマグサ、右上がカラス、その下がカラスが熟れて真っ黒になったものだ。やはりカラスだけが特別大きい。入っている豆の数も、スズメが2、カスマグサが4に対してカラスは8個ほどで豆そのものも段違いに大きい。

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これら3種は手入れの悪い畑や畦など、いたるところに生えている。同じ場所で互いに絡まっていることも多い。秋に芽生えて冬の間につるを伸ばし春先に咲き出す。最初に咲くのがカラスで次にスズメ、これらは2月中には花盛りになる。カスマグサは先の2つより数も少なめで、咲き出すのも少し遅い。それでももう実もたくさんできていて、早いところでは茶色く枯れ始めてもいる。月日の経つのはただでさえ早いのだが、急ぎ足で生き過ぎていく花たちを見ていると、その早さが悲しいほど実感させられる。
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2010年03月22日

マムシグサの春

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薄暗い林の中で、マムシグサの仲間のヤクシマテンナンショウが2本、しっとりと寄り添っていた。名前の通り少々薄気味悪い花だが、こうしているのはなんだか人間ぽくて親しみが持てる。よく見るともう盛りの季節は終っていささか崩れかけている。晩春の悲哀もかすかに漂っているといったところか。
posted by 夜泣石 at 10:45| 花草木 | 更新情報をチェックする

2010年03月19日

スナヅル

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海岸の林と砂浜の境あたりに、緑色の紐が無数に絡み合っていた。あたりを一面に覆って、なんだか漂着ゴミか産業廃棄物の不法投棄のようにも見える。ネナシカズラのことを知らなければ、これが植物の繁茂している姿とはまず思いもつかないだろう。この島ではこれまでアメリカネナシカズラしか見てないが、これはそれよりずっと太い。もしかして在来のネナシカズラかと思って花を探した。なにしろ全体が紐でしかないから、花でも見なければ区別がつきそうにない。

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紐の先端に、小さな粒々をやっと見つけた。ほとんど開かず、大きさはせいぜい3mmくらいか。確かネナシカズラならもう少しまともな花らしい形のはずだ。するとこれは何だろう。ふと近くの海岸にスナヅル自生地という看板があったのを思い出した。もしかしてと図鑑を調べたら、まさしくこれがスナヅルだった。ネナシカズラはヒルガオ科だがこちらはクスノキ科だそうだ。なんでこれがあの大木のクスノキと親戚なのかと驚くが、一方縁もゆかりもないネナシカズラにそっくりなのにもまた驚く。全く別の進化の道をたどったのに行き着いた先がそっくりになるのを収斂進化というそうだが、この生き方はそんなに理にかなったものなのだろうか。

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葉がないのは、他の植物に絡み付いて吸着根から養分を吸い取ってしまっているからだ。被害者は誰かと思ったら、このあたりを我が物顔にはびこっているキダチハマグルマだった。通常はグンバイヒルガオハマゴウが襲われるとのことだが、それらよりずっと寄生しがいのある相手だ。それでもこれだけ絡みつかれて、さすがの強者もだいぶ枯れてしまっている。枯れると寄生者自身も枯れざるを得ない。つるには緑と黄色があるが、黄色の方は枯れかけたもののようだ。

ところで寄生植物は、水分や無機栄養分だけ奪って光合成は自ら行う半寄生植物と、全く葉緑素を持たず炭水化物まで相手に依存する全(完全)寄生植物に分けられるそうだ。スナヅルは茎が緑だから自ら光合成はしているはずだ。しかしそれだけではとても足りず有機物まで奪っているはずだから完全寄生に分類してよいのだろう。

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果実がびっしりと付いているところがあった。あんな小さな花でどうやって受粉などできるか不思議だ。果実は花に比べて大きく7mmくらいある。よく見るとてっぺんの割れ目からきれいな緑が見える。むいてみると小さなグリーンピースのような玉が出てきた。中はどうなっているかとまたむいてみると更に小さな玉が出てきた。あれっと思って輪切りにしてみると、果肉や果皮が2重になっていたのだった。調べてみると外側は花被が分厚くなって果実を覆ったものだそうだ。こんなにしっかり保護するということは、もしかしたら潮流に乗せて分布を広げているのかもしれない。

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スナヅルはオーストラリア、アジア、アメリカにかけて太平洋周辺の熱帯から亜熱帯の海岸に広く分布しているそうだ。日本では以前は鹿児島本土にもあったが今では絶滅し、屋久島が北限のようだという。それも島の南西部の栗生の周辺にしかない。なぜこの海岸から出られないのか不思議に思う。このあたりの潮流が島から離れていく方向にしか流れないためかもしれない。果実を鳥が食べればあちこちばら撒いてくれそうだが、種子までやわらかいのできっとすべて消化されてしまうのだろう。
posted by 夜泣石 at 06:35| 花草木 | 更新情報をチェックする

2010年03月15日

ハクサンボク

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海岸近くの雑木林に白い花が咲き出しているのに気付いたのは2月の末ごろだった。あれ、こんなところにこんな花があったかなといささか驚いた。そこはいつもの散歩道なのだからなぜ今まで気がつかなかったのか。大方、この島にいくらでもあるクマノミズキに遠目が似ているので気にも留めなかったのだろう。しかしそれが咲くのは初夏のことだ。この島では季節の変わり目がはっきりせず狂い咲きはいつものことだが、それにしてもいくらなんでも季節が合わない。

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近くに寄ってよく見て、ガマズミという言葉が浮かんだ。しかしどうも様子が違う。たぶん近い仲間だろうと図鑑でガマズミの前後を探してやっとハクサンボクだと判った。ガマズミは落葉樹だがこれは常緑樹なので葉の感じがだいぶ異なる。またクマノミズキは花弁が4枚で離弁花だが、こちらは花弁が5枚で合弁花だった。小さな花が密集して咲くのは同じでも、花そのものはまるで違っていた。合弁花らしくすぽんと抜け落ちた花びらが、雨に濡れた葉の上で一つの生き物みたいに雨空を仰いでいた。

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白い花は7mmくらいと小さいがこれだけ集まると見ごたえがする。図鑑には悪臭がすると書いてあったが、決してそんなことはない。いささか青臭いが自然の中では時々ある香りだ。ちょっとクリの花に似ているがそれよりずっとましだ。

本土ではどこにでもあるガマズミは屋久島には分布していなくて、隣の種子島が南限とのことだ。一方、ハクサンボクは本州では伊豆と山口県のごく一部にしかなくて、九州から沖縄にかけて分布しているのだそうだ。道理でハクサンボクなど聞いたことがなかったわけだ。しかし園芸の世界では良く知られているそうで、この見事な咲きぶりやつやつやした大きめのきれいな葉、そして秋にびっしり実る赤い実が喜ばれているとのことだ。ところでこの場所に赤い実があったら、とっくに気付いていてよいはずなのにどうしたことだろう。この実は食べられるそうだから、それほどのものをあたりにいくらでもいる鳥たちが見逃さなかったということか。真相はどうなのか、今年の秋の楽しみが一つ増えたようだ。

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posted by 夜泣石 at 06:40| 花草木 | 更新情報をチェックする

2010年03月12日

ネズミフグ

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一昨日は日本全国を大寒波が襲ったが、南国屋久島でも霰が舞う寒さだった。海は荒れてすべての船便が欠航していた。翌日、打って変わってすばらしい快晴が広がったので珊瑚礁の海岸に出かけた。特に目的はなかったが、こんな久しぶりの晴れ間にどこかに出かけずにはいられなかった。海はまだ荒れていて風も冷たかったが、それでも砂浜に着くとつい何かを探して歩き始める。こんな日には面白い物やきれいな物がよく見つかるものだ。案の定、30cmは超えるずしりとした魚が打ち上げられていた。

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大きな青い目が印象的だ。まだ生きていて遠くを眺めてでもいるかのようだ。丸い潤んだ表面に空や辺りの景色が写っている。棘がまつげのようにも見えて、尖った小さな口と共にとてもかわいらしい。

体中を覆う針から、ハリセンボンだと思った。念のため図鑑を開くと、体の模様が違っていて、これは同じ仲間のネズミフグだった。ハリセンボンは茶色の大きな模様だが、これは透けるような肌に黒っぽい斑点が散らばっている。この仲間の中では一番きれいで、目もひときわ大きかった。この愛くるしい顔つきでネズミと名付けられたようだが、その名に反して一番大きく、90cm近くになったりするそうだ。昼間は岩陰などに隠れていて、夜になるとこの大きな目で貝やカニなど探し出して食べるとのことだ。この嵐の間、そのままじっとしていれば良かったのに、空腹に耐えかねてつい出てきて波にさらわれてしまったのだろうか。それともあまりの荒波に岩ごと飛ばされてしまったのだろうか。

初めて見たように思うが、そんなに珍しいものではなく日本海側では青森県あたり、太平洋岸では神奈川県あたりにまで分布しているそうだ。しかし多いのはやはり暖かい海で、沖縄では食用なのだという。この仲間は無毒のふぐでとてもおいしいのだそうだ。それを知っていたら持ち帰っただろうか。中身を食べた後、皮は干して飾り物にでもすればよかったかもしれない。いやいやこんな無念そうな姿を見るととてもそんな気持ちにはなれない。

ネズミフグに別れを告げて少し行くと、今度は5cmほどの小さな魚を見つけた。うろこ模様がきれいでいかにも魚らしい形だ。ひれを前に突き出して、まだ泳ぎたかったのにと言っているかのようだ。

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posted by 夜泣石 at 10:22| 生きもの | 更新情報をチェックする

2010年03月09日

スズメノエンドウ

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屋久島の里ではもう地面はどこも萌え出た緑でいっぱいだが、日当たりの良い畑の脇など、たいていそれにネットでもかぶせたように、こまかな葉の規則的に並んだつるが絡み付いている。赤い花は見慣れたカラスノエンドウだが、よく見ると米粒より小さな白い花もたくさんある。

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肉眼ではどんな花かわからないほど小さいが、拡大してみると思いがけないほどのかわいらしさだ。ほとんど真っ白だが光の加減で青か紫のごく淡い色が浮かび上がる。こんなに小さくてもマメ科特有の複雑な形をちゃんと保っている。そんなものが5つ6つ、肩を寄せ合って咲いている。

小雀が巣の中で押し合いへし合いして餌をねだっているようなこの花はスズメノエンドウだ。といっても名前のいわれはそういうことではない。カラスノエンドウに比べて小さいからスズメなのだそうだ。しかしの二つの花の大きさの差は、カラスとスズメどころではない。また植物名には小さなものにスズメと名付けたものがいくつもあるが、小鳥の中でスズメがそんなに小柄というわけではない。まあ一番身近にいてかわいらしいからということなのだろう。またスズメノエンドウと聞くと、スズメの、スズメのためのエンドウといった意味だと思うが、実はこれはスズメ野豌豆だった。

本土でもあちこちで見かけたが、屋久島には特に多いような気がする。真冬につるを伸ばし、2月に入ればもう咲き出す。今の季節、盛んに咲いている傍らでもう実ができている。1cmくらいと小さいが確かにエンドウで、2つ豆が入っている。しかし毛深いところはエダマメに似ている。スズメノエンドウも食用になると聞いて、こんな小さなマメを食べるのは大変だなと思ったら、そうではなく伸びだした蔓の先を20cmほどもちぎっておひたしや天ぷらにするのだそうだ。

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posted by 夜泣石 at 05:45| 花草木 | 更新情報をチェックする

2010年03月04日

スイレンボク

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屋久島はすっかり春になって、少し歩くだけでも汗ばむほどになった。この時期天気は安定せず雨模様の日が多い。そんな中でスイレンボクの花がひときわきれいに咲いている。睡蓮に似ているからと名付けられたのだから濡れた姿のほうがこの花は引き立つかもしれない。黄色の葯の雄しべが密集していて、その周りを細長い桃色の花びらがたくさん取り囲んでいる姿は確かにちょっと似ている。しっとりとした色合いも水辺に咲く花の趣がある。花は数日でしぼむが大小のつぼみが控えていて次々に咲く。

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花びらが10枚あるように見える。しかし横から目を凝らすと2段になっている。実は下側の5枚は萼だった。花を豪華に見せるためか、花弁とそっくりになっていたのだ。萼であることは開きかけのときによく判る。外面の色がまるで違うし、開くのも外側の萼が先だ。

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見慣れない形の花だと思ったらシナノキ科だった。この仲間の木は日本には数種類くらいしかないしこの島には分布していないようだ。草ではラセンソウだけだが、それはそこらじゅうに生えている。花の感じはだいぶ違うが、よく見れば同じ構造をしている。

南アフリカ原産だそうで寒さは苦手とのことだが、この島では真冬でも咲いている。きわめて強健で全く手入れが要らず、名前によらず乾いたところが好きだそうで水遣りもいらない。これからの時期ケムシが大発生してそれこそ何にでもつくのだが、これは大丈夫だ。葉に毒があるとの説明があったが、一方では草食動物が好んで食べるとの話もある。果実は鳥の好物とも書かれてあったが、なぜかここでは一度も実ったことがない。日本に流通しだしたのはわりと最近だそうで、まだあまり情報がないようだ。

(110200)s.jpg我が家の木は数年前にたまたま立ち寄った花屋に小さな鉢植えがあって一目惚れして買ったものだ。3mくらいになると書いてあったので庭に植えてみた。しかし枝はまっすぐに伸びず横に這っていった。支柱で強制的に上向きにしたのだが、いつまでたってもしっかりしてくれない。それに枝振りがおかしい。四方に形よく出ないで、左右に互い違いに出てしまうのだ。ちょっとみっともないような、なんとも収拾のつかない形になっている。つる性との記述もあったので、もしかしたらまっすぐにしようとしたのが迷惑だったかもしれない。盆栽のように刈り込めばびっしりとした茂みになって良かったように思う。
posted by 夜泣石 at 05:05| 花草木 | 更新情報をチェックする
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