2010年02月26日

タチツボスミレ

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タチツボスミレは昔はあまり好きではなかった。花の色は薄く、葉もドクダミを思わせるような丸い形で、しかも長く茎を伸ばして一面にはびこってしまう。本来のスミレはいつも地面から直接葉や花を出すだけで瀟洒な姿を崩さない。花も濃い紫の本当のすみれ色なのだ。それに比べるとまがい物のスミレのようで、しかも嫌になるくらいどこにでも生えているのだった。

しかし山歩きなどするようになると、早春の冷たい風の中でそっと数輪がけなげに咲いていたりするのを見つけるのはうれしかった。そしていよいよ春になると、それを誰よりも喜ぶかのようにいっせいに咲いて日溜りを薄紫に塗りつぶしていたりする。それはなかなか感動的なくらいで、こういうスミレも良いものだと思うようになった。

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屋久島では本土のような大群落は見たことがない。それどころか、たいてい薄暗いところで細々と弱々しげに咲いている。花もちょっと春めいてきたばかりの頃が一番多いようで、どうももっと涼しい土地が好きなようだ。本土では可憐な本来のスミレが、ここではふてぶてしいほどにそこら中で咲いているのに比べて、タチツボスミレは木陰でやっと命をつないでいるといった感じだ。

スミレは種類が多く、屋久島にも文献によればそれなりに分布しているようだ。しかし平地では未だこの2種しか目にしたことがない。山にはヤクシマスミレなどいくつかあるがたいてい小さく目立たないものばかりだ。植物の豊富な島といってもスミレ好きな人にとってはあまり面白いところではなさそうだ。なお高山に行くとヤクシマタチツボスミレといわれる矮小化したものがあるそうだが、変種なのか何なのか、議論が分かれているという。

以前、海岸沿いの林の裾にタチツボスミレの白花の株がいくつもあるのを見つけた。本土でもたまにしか見られなかったのでうれしかった。時々見に行っていたが、ある年の台風の後、あたり一面根こそぎえぐられてしまっていた。それ以来この清楚な花とは巡り会っていない。

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posted by 夜泣石 at 06:45| 花草木 | 更新情報をチェックする

2010年02月21日

ムラサキケマン

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あちこちの木陰でムラサキケマンが花盛りだ。透き通るほどの白に、先の方が濃い赤紫になっている。2cmかそこらの細長い形で折り重なるように咲いているから、上から見るとなんだか小魚が群れているようにも見える。

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その小さな口を覗き込むと、ちょうど餌をぱくついたばかりのようで面白い。口の中の黒っぽい塊の中身は柱頭と葯なのだそうだ。それを左右の花びらが両側から包みこんでいるのだ。つまりこれはマメ科の花と同じような構造をしていて、ハナバチが中にもぐりこもうとすると、隠されていた雄しべ雌しべが飛び出してくる仕組みだった。

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もう実もたくさんできていたが、それもまた小さなエンドウのようだ。しかしマメに似ているのはここまでで、この鞘に触れると今度はホウセンカのようにぱちっと弾けるのだ。鞘は一瞬で二つに割れ、きれいにくるくると巻き込んで、その反動で黒いつやつやした種をあたりに弾き飛ばす。

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種には白いゼリーのようなものが付いている。これはアリの好物でエライオソームと呼ばれるものだそうだ。アリは餌として巣に運び、食べられない黒い種の部分は近くに捨てる。そうやって分布を広げるのだが、これはスミレなどがよくやる作戦だ。ムラサキケマンの仲間はケシ科なのだが、縁もゆかりもないいろいろな植物の良いとこ取りをしているような感じがする。

葉はセロリかイタリアンパセリにでも似ていて、それらよりずっとみずみずしくやわらかい。形もよくおいしそうに見えるが、ケシ科の素性通り有毒なのだそうだ。図鑑などには悪臭がすると書いてあるが、それほどのことはなくちょっと青臭いだけだった。

屋久島では近い仲間のキケマンシマキケマンも今盛んに咲いている。帰化植物のセイヨウエンゴサクも時々見かける。乾いたところは苦手だが、湿ってさえいれば素早くどこにでも入り込む、なかなか隅に置けない連中のようだ。
posted by 夜泣石 at 06:46| 花草木 | 更新情報をチェックする

2010年02月16日

ニガナ

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庭にニガナが咲いていた。日本全国どこでも見かける花だ。この島ではほとんど一年中咲いている。1cm半かそこらで花びらも少なく華奢な感じで、ひょろ長く伸びた茎の先で頼りなげに揺れている。キク科の花は小さな花の集まったもので、タンポポなどはぎっしり束ねられていて派手さがある。しかしこの花は普通は5個しかなく、多い場合でも10個以下だ。キク科の中でかなり貧弱な方だろう。といってもそのおかげで、隙間だらけのこの形は案外目に付きやすい。

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少ない花びらは一枚一枚がよく見えて、その先端のぎざぎざが目立つ。花びらは普通丸く終わるか、あるいは尖るかへこむか、いずれにせよ形よく終わるものだ。また花びらは葉の変形したものだそうだが、先がぎざぎざの葉というのもあまり見た覚えがない。この仲間の花びらが、たいてい先がそこで千切ったかのようにぎざぎざで終わっているのはどういうわけだろうか。

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花をよく見ると雌しべが2段式になっている。これはキク科によくある形で、下側の黒っぽい棒の部分は雄しべが何本もくっついてできた筒だ。その中を雌しべが貫いて出てくるとき、筒の内側にある花粉を掻き出す仕組みだそうだ。おかげで雌しべは花粉だらけになっている。これではすべて自花受粉になってしまわないかと心配するが、最初のうちは柱頭が開いていず受粉できないのだそうだ。やがて二又になった柱頭の先はくるりと丸まってくる。これは運悪く受粉できなかった場合、自分の花粉で受粉するための工夫だと、いくつかの資料に書いてあった。しかしそれなら、こんなにきれいな弧を描くより下のほうに垂れ下がった方が確率は高いと思う。もっともらしい話はそのまま信じ込まず、自分の目でしっかり観察する必要がありそうだ。またセイヨウタンポポのように受粉しなくても種子ができるという説もあるようだ。どうも本当のところはよく判らない。

葉も細長く厚みもなくしかも少ない。ニガナは苦菜なのだが、この葉からは菜の感じはしない。それよりニガナとカタカナで書くと、なんだか日本語らしくなくてどこか外国から来たような感じがする。あまり群落を作るということはないが、里地のいたるところで見かける。そして乾ききった荒地でも湿った畑や田んぼの畦などでも咲いている。我が家の庭にも、一番カラカラでどの草も干からびているようなところにいつの間にか侵入していた。こんな弱々しい外見にもかかわらずかなりの生活力を持った植物のようだ。

(追記)花に詳しい人からメールをいただきました。この花は5枚の花弁のくっついたもので、花びらの先のギザギザはその名残りだそうです。普通花は放射相称なので切れ目は円周上に等分に並ぶのですが、これは細い舌状花なので、その先にぎっしり集まってしまったという訳です。
posted by 夜泣石 at 14:42| 花草木 | 更新情報をチェックする

2010年02月10日

オオハクチョウ

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屋久島に白鳥が来たと聞いてぜひ見たいものだと思っていた。白鳥そのものは東京でも大きな池や湖でたまに見かけたから珍しくはない。北国の風物詩のようなものがこんな南の島の風景の中にいることが珍しいのだ。といってもいるのは永田という島の北部の集落で、そこは南部の我が家から車で1時間ほどだが、こちらと比べて気温は5度は違うといわれる寒いところだ。天気の悪い日が多くてぐずぐずしていたが、明日からまた当分雨模様が続くという予報にせきたてられて思い切って出かけてみた。

まだいるのだろうか、あちこち探し回らなければならないかなとか心配していたが、集落に近づいたら拍子抜けするくらいにすぐ目に入ってきた。県道沿いの田んぼに絶対に見間違えることのない大きな二羽の白い鳥がいた。一羽は首を高く上げて、もう一羽はしきりに草をついばんでいる。首を上げているほうは外敵の見張りをしているのだろうか。しかし肉食獣の少ないこの島ではこんな大きな鳥を襲うものなどいそうにない。実際ずいぶんのんびりした感じで、少しくらい近付いてもゆっくり歩き出すくらいだ。白鳥は泳いでいたり舞っている姿は絵になるが、雑草の中をヨチヨチ歩いているのは、太目の体型もあってちょっとこっけいな感じだ。

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体は真っ白だが首は少し薄汚れている。普通は水の中に首を突っ込んで水草など食べるはずだが、屋久島にはそんな水草の生えるような湖沼や池というものがない。いつも地上で採食しているため泥が付いたのだろう。田んぼは水抜きされているが、このあたりは低地のためいつも湿っていて、また裏作はなく放ったらかしで、みずみずしい雑草が一面に茂っている。

オオハクチョウは普通は北日本あたりまでしか渡って来ないはずだが、何を間違えてここまで来てしまったのだろう。まあ彼らの翼では数日もかからないだろうし、来てみれば冬でも草が青々として草食の彼らには天国みたいなところだから居付いてしまったのだろう。北国では給餌などしているそうだが、ここならたとえ大群が来ても困ることはなさそうだ。今年になって飛来したと報道されていたが、一緒に見ていた地元の人の話では去年のうちに来ていたとのことだ。ともかく今まで一度もなかったそうだ。ずっとどこにも行かず、たいてい河口近くの3つの田んぼのどこかにいるという。たまに川に浮かんでいるが、飛んでいる姿はまだ見ていないそうだ。

なぜか一羽のカラスが近くにいる。別に何かちょっかいを出すこともないが、しょっちゅうまつわりついているのだそうだ。見たこともないものに知恵のあるカラスも興味しんしんなのか。本州のオオハクチョウは3月には飛び立ち、まず北海道に集まり、そこから4月にシベリアに向けて旅立つそうだ。この2羽ももう一月ほどすれば北に帰っていくのだろうか。しかし屋久島の今は北国の春よりずっと暖かいし、日も高く、いったい何を合図に飛び立つのだろう。体内に目覚まし時計のような仕組みがあると聞いたが、こんないつもと違う環境ではそれが狂ったりしないだろうか。そうしていつ飛び立てばよいか判らず、このままぐずぐずと居続けることになるのかもしれない。

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posted by 夜泣石 at 14:25| 生きもの | 更新情報をチェックする

2010年02月06日

コハコベ

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我が家の庭は冬になっても多くの雑草が枯れないままだ。しかも年が明ければ早々に新しい芽がぐんぐん伸びだす。一角をすっかり覆いつくしてしまっているのはハコベだ。やれやれと草取りを始めたが、白い小さな花がたくさん咲いているのにふと手が止まった。無造作に命を奪ってしまうのがためらわれるほどの可憐さなのだ。

花はせいぜい7mmくらいで単純に白いだけだ。貧弱で全く目立たない花なのだが、よく見るとすっきりと整った形をしている。花びらは10枚に見えるが、真ん中が深く切れ込んでいるためで、実際は5枚だ。さりげなくおしゃれをしているといったところか。それに中央の3つに分かれた柱頭もちょっとした飾りのようだ。たまにピンクのかわいらしい粒をつけたものが見つかる。どうも葯の帽子のようだが、残念ながらすぐ落としてしまう。

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花は朝、日が当たらないと開かないし日陰になると閉じてしまう。引っ込み思案の少女といった感じか。それなのに萼が毛むくじゃらなのがこの可憐さに比べてちょっとおかしい。葉には全く毛はなく、とてもみずみずしい。子供の頃飼っていた小鳥に与えると、菜っ葉よりおいしいといった感じですぐに食べてしまったものだった。このような雑草の中では珍しいほど全体に毛深くないのだが、茎の片面に一列ばかり産毛が生えているのが不思議だ。いったい何のためだろうと不思議に思う。何かに役に立つなら全体に生えるはずだし、役に立たないのなら無くなるはずなのだが。茎は対称形に二つに枝分かれしていくが、その内側に毛がある。互いに離れやすくしているのか、茎ができる時の仕組みで否応なくできてしまうのかもしれない。

普通ハコベと呼ばれるものには在来のハコベ(ミドリハコベ)と帰化植物のコハコベの2種がある。コハコベは大正の頃にヨーロッパから来たものだそうだ。しかしミドリハコベも有史以前に農作物とともに渡来したものだそうだから、来た時期が違っているだけだ。しかしこのおとなしげな感じは古くからの日本の草といった風情がある。この二つはほとんど区別が付かないほど似ているが、茎が赤みがかっているのはコハコベだ。屋久島の里にハコベは多いが、どうもコハコベばかりでミドリハコベにはまだ気付いていない。

昨年の冬の初め、まだ芽生えたばかりで数えるほどしか葉をつけていないのに、その真ん中に一つだけ花を咲かせているものがあった。対生の葉が対称形の美しい形を作っている。この小さな造形のすばらしさに思わず感心してしまった。

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posted by 夜泣石 at 09:54| 花草木 | 更新情報をチェックする

2010年02月02日

ウメ

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庭に出て、ふととても良い香りに気付いたのは一月に入って間もなくの頃だった。見れば梅が咲き出していた。それから毎日香りを楽しんでいるうちに、下旬ごろには満開となり、今はもう散り敷いた花びらで根元のあたりが白くなっている。

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我が家のウメは果実をとるための品種で、観賞用と違って花はかなり小さく白だけの単純な形だ。しかしこれも素朴な味わいがあってよいものだと思う。ウメは真っ白な花びらと濃い赤の萼との取り合わせもきれいだ。春の訪れか、このところだいぶ雨の日が多くなったが、濡れた花の後ろ姿にかえって風情を感じたりする。

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私が幼い頃は、だいたいの家庭で梅酒を作っていた。子供たちの夏の飲み物の定番だった。多くの家にウメが植っていた。だから屋久島に移住して庭ができると当然のように植えた。たいていのバラ科の果樹が寒さが足りずにちゃんと花を咲かせることができない中で、ウメはすぐに毎年花盛りになった。しかし残念ながらまだ一度も実をつけたことがない。自家不稔性の傾向が強いとのことで小梅と南高の二本を植えた。ところが花が同時に咲かないのだ。小梅が咲き終わる頃、やっと南高のつぼみが開き始める。果実の大きな南高はウメとスモモの雑種だそうで、本来のウメほど強健ではないようだ。木の高さも半分ほどしかなく、花の数もずいぶん少ない。

庭に植えたスモモの類は、ずいぶん待ったがろくに花も咲かず果実もできないので、昨年あたりから切り倒し始めている。しかしウメはその気にならない。実はできなくとも、花だけで植えておく価値は十分にある。どこから来たのか、多くのミツバチが集まっている。花の少ない時期、ハチたちのためにも大事にしておかなければと思う。

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posted by 夜泣石 at 09:49| 花草木 | 更新情報をチェックする
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