2009年12月25日

カミヤツデ

(109951)s.jpg

冬になるとあちこちの道路際などにカミヤツデの白い花のかたまりが目立つようになる。もともと数メートルもの高さの木で巨大な葉を茂らせているから存在感はあるのだが、ウコギ科によくある陰気な雰囲気で普段はあまり気にすることはない。それが花が咲くと巨大な鹿の角が密集しているような感じでなかなか見応えがある。

(109948)w.jpg

葉はヤツデに似ているがはるかに大きい。花穂もとんでもなく大きいが、花そのものは小さく似た感じだ。蕾は綿毛に覆われていて、その霞んだようなところがちょっとカリフラワーを思い出させる。それが開くと4枚の花びらが平らに広がって、その中から同じく4本の雄しべがぴんと突っ立つ。こうして冬でも飛び回るハエやアブに受粉してもらうのだろう。ただこういう状態は短く、花びらも雄しべもすぐ落ちてしまう。そしてふくらんだ子房の上に2本の花柱がチョキの形を作ってなかなかかわいらしい。結実率が高いから自家受粉をするのかも知れない。

名前にカミが付くのはこの木から紙を作ったからだそうだ。といっても、繊維を取りだして紙を漉くというのでなく、茎の中心に真っ白な髄があり、それを薄く剥いでいったものだという。昔の人は器用に包丁か何かでごく薄く皮むきするように取り出していったのだろうか。とても吸水性があり、昔、縁日などで売られていた水中花の花びらはこれで作られていたのだそうだ。小さなかたまりをコップに入れると、たちまち水の中で神秘的なほどの可憐な花が開くのを、まだ幼い頃、見とれていたことがあったなとかすかに思い出す。

台湾や中国南部原産だそうだが、最近は関東あたりでも暖かい沿岸部で増殖して問題になっているという。旺盛に茂りすぎて他の植物を圧迫してしまうのだそうだ。屋久島でも一年中青々としているのを至るところで目にする。地下茎で広がるのだそうで、場所によってはかなりの広さの純林になっていたりする。しかしそれは道路際や崖崩れの跡などであって、自然の林を侵食しているわけではない。崩壊地をすぐ覆ってくれるのだから、それほど目の敵にしないでも良さそうに思う。

ある時林の裾の草むらに大きな葉がきれいな形に広がっていた。何かと思ったらカミヤツデの幼木だった。遠くからでもあれっと思うほど南国的な情緒を醸し出している。庭の片隅に観葉植物として植えるのも良さそうだ。しかしかわいらしいのは最初のうちだけで、たちまち巨大化するからよほど広い庭でないととんでもないことになるだろう。

(109644)s.jpg
posted by 夜泣石 at 10:03| 花草木 | 更新情報をチェックする

2009年12月18日

屋久島のポンカンは不味い

(109914)s.jpg

今、ポンカンの収穫がピークを迎えている。あちこちの畑に人影が増えて、ポンカンを満載したトラックが道路を行き来している。その収穫した実を見てびっくりすることがある。まだずいぶん青いのだ。黄色の部分はせいぜい半分くらいだろうか。

ポンカンは屋久島の特産品の一つなので、島に来て期待して食べたのだが、そのおいしくないのに驚いたことがある。もちろんすべてが不味いというわけではないのだが、出荷用の見た目のきれいな大玉のものが特にいけない。全体がとてもきれいな黄色に色付いているから、余計に裏切られた感じがする。

そのうちこれはガス処理されたものであることを知った。まだ青いうちに採ってエチレンガスにさらす。そうして人工的に熟させるのだ。そうすると表面はきれいな黄色になる。また果肉の酸味は抜ける。しかし甘みはそれほど増えないようで、結局甘くも酸っぱくもなく風味のない馬鹿みたいな味になるのだ。ある農家の人の話では、家族の誰もこんなものを食べたりしないのだそうだ。

なぜそんなことをするのか。ただ儲けるためだった。暮れ正月に贈答用で相場が跳ね上がる。それに間に合うよう、まだ青いのにすべて採ってガスでむりやり熟させて出荷してしまおうというわけだ。贈答用だから見た目が第一なのだ。それに自分で買って食べるのではないから、おいしくなくても苦情はあまり出なかったのだろう。農協の指導で島中ずっとこんな事が行われてきたのだった。

しかしさすがに最近、屋久島のポンカンは不味いという評判が広がってきたという。それにガス処理されたものは痛みやすい。箱を開けると真っ白にかびていたといった苦情も時々寄せられているという。自然遺産の島のブランドがあるから、そのギャップに人々の失望は余計に大きいようだ。そういう経験をした人はもう屋久島ブランドには手を出さなくなるだろう。目先の利益を追求した結果、長い目で見ればブランドそのものを台無しにしてきてしまったのだ。屋久島にはタンカンなどおいしいものが他にあるが、それらも敬遠されることになる。最近は相場も下がって、ミカン農家はほとんど儲からないのだそうだ。

この島の農業の抱える問題はそれだけではない。我が家の周りのミカン畑はどこもかなりの年の老農夫ばかりだ。彼らはあと5年も続きそうにない。そして後継ぎもいない。このあたりは一面雑木林に戻るだろう。そして同じことがこの島中に広がりつつあるのだ。

農協に言われるままに肥料を買い農薬をまいて、ガス処理してまた農協に納める。おいしいものも不味いものも一緒くたで品質に責任はない。これでは努力して良いものを作る意欲など湧くはずがない。働く喜びもなく、じり貧になるのは当然だ。そしてこんな農業の後継ぎをしたいなどと若者が思うわけがない。親たちもほとんど子供を本土に出したままで呼び戻す気などないようだ。

ところで屋久島のポンカンはもともと不味いのだろうか。中には個人で努力し、おいしいものを作って農協を通さず出荷している人もいるようだ。またごく少数だが、無農薬で一つ一つ袋がけして作っている人がいる。それはとてもおいしく見た目もきれいだ。ただ手間がかかり、また樹上完熟させるので暮れ正月に間に合わない。しかし確実にファンを掴んでいるようだ。それとは別につい最近、意外なポンカンをもらった。なんでも切り倒すつもりの木を暇がなく放って置いたのだが、それがたくさんの実を付けたのだという。何も手をかけず肥料も与えなかったそうで、見た目はそれほどでもないが、これがびっくりするくらいにおいしいのだ。甘みも酸味も強めで何より風味がある。皮をむいた瞬間、立ち昇るような香りがあるので、我が家ではそれで毎日ミカン風呂を楽しんでいる。

これと比べると肥料漬けの木は成人病にかかったようなものだと思う。野生を取り戻し、自分の力で生きてこそおいしい果実も実るのだ。そしてこんな野性的な味わいこそ、最近の果物に最も欠けているものだろう。このあたりに今後のミカン作りのヒントがあるのではないだろうか。木が最も健康になるよう自らの目でしっかり見て最適な手入れをする。必要なのは見て回る時間と木の状態を見抜く能力で、肥料や薬などはぐっと減らすことができそうだ。そしてそんな自然遺産の島にふさわしい付加価値の高い果物ができれば、相応な価格で売ることができるはずだ。

幸いなことにここには観光客が年間何十万人も来てくれる。観光業と手を組んで、手塩にかけて育てたおいしいものを食べて貰う。そして通信販売のパンフレットを渡す。感激するくらいおいしいものならばかなりの人が注文してくれるはずだ。また最近はミカンだけでもさまざまな品種がある。ミカン以外も入れれば、この島の気候ならほぼ一年中果物の収穫はできるだろう。そうして年間を通じてさまざまな果物を提供できれば、狭い島の農業くらい十分支えられるほどの注文が来るものと期待できる。

離島なのだから本土と同じことをしていては立ち行かない。しかしこの島には観光とか気候とか、他地域では望めない利点があるのだ。もし全国に試食会を開いて回ったら、いったいどのくらいの宣伝費がかかるだろうか。それがお金をかけずに居ながらにしてできるのだ。そうした強みを生かす道を考えればよいのだ。多品種、高品質、直接販売といったアイディアはすぐ出てくると思う。

そしてこういう取り組みは行政主導で島を挙げてやらなければならない。しかし今は何ら手は打たれていない。町長は議会で農業振興について質問され、協議会を作ったとか、営農支援の担当者を増やすよう県に要請したとか答えていた。そんな小手先のことでこんな状況を打開できるわけがない。何が重要かと言えばビジョン作りだ。産業はすべてどこにどのように売るかという話があって、何をどう作ればよいかが決まるのだ。農業だけ考えて、作りさえすれば良いというのではないのだ。観光や流通など他の産業と一体とならなければ振興などできるわけがない。そうしてやりがいがあって儲かる農業になれば、働く人は自然に集まってくる。老齢化や過疎問題なども解決する。この島で今一番必要なのは、ビジネス感覚にあふれ、指導力ある首長を早急に登場させることだろう。
posted by 夜泣石 at 11:04| 屋久島町の動き | 更新情報をチェックする

2009年12月11日

オニタビラコ

(109876)s.jpg

キク科の花たちは種を付ける綿帽子のようになるのが多い。このあたりでは季節を問わずいつもそんなものが目に付く。ノゲシやベニバナボロギクなどはタンポポを小さくしたような真っ白な玉になっている。そんな中でオニタビラコはだいぶ貧弱だが、透明感ある細い糸がきらきら輝いてこれはこれできれいだ。

(109877)s.jpg

オニタビラコは日本全国そこら中にある雑草だ。屋久島ではほぼ一年中咲いて、次から次へと種を飛ばしている。放って置くと庭中黄色の花園になってしまうので、かわいらしい花だが片付けるしかない。みずみずしく柔らかな茎を引く抜くと、透き通るほどの白い小さな大根のような根が出てきて、なんだか痛々しい。

こんな花にオニとは似つかわしくないと思うが、中には1m位の巨大な株になって、ぎざぎざの葉を思いっきり茂らせているのもある。タビラコというのは水の抜けた田んぼなどで地面に張り付くように葉を広げている小さな草だから、それに比べると確かにオニだ。しかし今度はオニタビラコと比べて、本来のタビラコをコ・オニタビラコと名付けているのだから、植物学者というのはおかしな連中だと思う。コオニタビラコは最近ずいぶん減ったそうで、屋久島では未だ見たことがない。コオニタビラコはまたホトケノザの名前で春の七草の一つだが、オニタビラコも春の若芽は食べられるそうだ。

オニタビラコを、大ぶりのアカオニと小ぶりのアオオニに分類する説もあるそうだ。確かに立ちはだかるように茂っている株と、くるぶしくらいの高さで1、2輪の花をけなげに咲かせているのと、ちょっと同じ草には見えない。しかし花は全く同じだし中間的なものがずっとあるし、単に環境の違いだけのような気もする。

いつかの春、すばらしくきれいに咲いているのを見つけた。ちょっと黄色が濃く、少しオレンジがかったものも混ざって、たくさんの花がかたまって咲いていた。これなら花瓶に挿して部屋に飾っても十分に見応えがあるなと思ったが、残念ながらこの花は日差しの下でないと開かない。本当にきれいなものは野外でないと楽しめないのだった。

(101098)s.jpg
posted by 夜泣石 at 09:26| 花草木 | 更新情報をチェックする

2009年12月07日

バジル

(109866)s.jpg

庭でバジルの花がまだ咲き続けている。真っ白で小さな花が6個、茎の周りをぐるりと取り巻いて輪になって咲く。シソ科らしく茎が四角なのに割り切れないなと思ったら、片面に3個ずつ、向かい合わせに付いているのだった。ぐっと目を近付けると、下側の花びらだけが手を差しのべるように長く、その上に雄しべ雌しべがすっきりと並べられている。なかなか清楚な感じの花だ。

我が家の庭にハーブはいろいろ植えてみたのだが、たいてい1、2年で消えてしまった。多くは欧州が原産だそうで、乾燥した冷涼な気候が好きなようだ。そんな中でバジルは、今年など台風で折れてしまったのに、平気でまた新しい茎をいくつも伸ばして茂っている。もともとインドやセイロン島などが原産で、高温多湿が大好きなのだった。バジルはイタリア料理のバジリコとして有名だが、本来この強い特有の香りは熱帯アジアのエスニックなものなのだ。

(109868)s.jpg

屋久島も朝晩はだいぶ冷え込むようになったが、まだまだ新しい花穗も伸びつつある。一方、すっかり実って茶色く枯れたものも目立つ。傘が段々になってずっと続いている様子も面白い。これは花びらが散った後、種を守るために萼が伸びたものだそうだ。

(109890)w.jpg

種はごま粒ほどでたくさん採れる。これについて面白い話があった。水を吸うとふくらむというのだ。さっそく試してみると、水に入れて数分ですっかり寒天のようなものに覆われて、なんだかカエルの卵のような感じになった。これは表面にこんにゃくと同じ成分の物質があるからだそうだ。ダイエットのためのサプリメントとしても販売もされているという。食べてみると味も素っ気もないが食感としては面白い。しかしもともとごく小さなものだ。ダイエットにならこんにゃくそのものを食べた方が良さそうに思うのだが。

バジルは和名をメボウキというのだった。このふくらんだ種を目に入れて表面のゴミを取り除くのに使ったからで、それで目の箒なのだそうだ。確かにこれは何でも吸着するし、小さくぶよぶよだから目に入れても痛くなさそうだ。しかし目に入ったゴミは、目をぱちぱちさせて涙で流すのが基本だし、せいぜい水で洗い流せば済むことだろう。いちいちこんなものを目に入れたりするだろうか。しかし真剣にそんなことをする様子を想像するとちょっと滑稽で、何だか落語にでも出てきそうで、昔の人のユーモアを感じてしまう。
posted by 夜泣石 at 10:11| 花草木 | 更新情報をチェックする

2009年12月03日

ホソヒラタアブ

(109822)s.jpg

まだ咲き続けているサツマノギクに何種類かハナアブが来ていた。花というとすぐミツバチを思い浮かべるが、こんな空を見上げて華やかに咲いている花にはハナアブの方が多い。特にだいぶ寒くなった今頃など、もうハチの姿は見えずアブやハエの仲間ばかりだ。彼らは寒さに強いらしく真冬でも寒さのゆるんだ日など、同じく寒さに強いキクなどの咲き残りの花によくやって来る。しかし普通ハチが来たと思われているのは、彼らはちょっと見にはハチそっくりだからだ。よくみるとハチには羽が4枚あるのに、こちらは2枚しかない。羽の少し下に半透明のごく小さな棍棒が付いているが、これが後翅の退化した平均棍と呼ばれるものだ。平均棍は飛翔時に体のバランスを取るものと昔は習ったが、今では体の動きを感知する感覚器で、いわば航空機のジャイロスコープの働きをするものとされている。

この点以外にも、アブは胸と腹の間にくびれが無く寸胴であること、目玉が馬鹿でかいこと、触角が短いことなどいろいろ違いがある。というよりハナアブというのは、色や模様が違っているだけで形はハエそっくりだ。実際これらはごく近い仲間で、逆に人を刺したりするアブなどとはだいぶ遠縁なのだそうだ。ハナアブたちは蜜や花粉をなめるだけの全く無害な虫なのだが、彼らがハチに見間違えられるのは毒針を持つハチに擬態しているからだ。実際ハチを食べようとして酷い目にあったカエルは絶対にアブにも手(というより舌)を出さなくなるそうだ。ただ平和な彼らも幼虫時代は肉食で、ありがたいごとに葉に付くアブラムシをテントウムシと並んでむさぼり食ってくれる。

(109885)s.jpg

彼らは飛翔の名手で、空中静止と瞬間移動を繰り返す。花に止る前、そのちょっと上でしばらくホバリングしている姿をよく見かける。こんなに広々とした花なのだから、着陸地点を厳密に定めなくても良いのにと思う。もしかしたら警戒しているのかもしれない。花にはクモとかカマキリなど外敵もいっぱい来ている。その連中にはハチに擬態しても効果はなさそうだ。

(109884)s.jpg

ホソヒラタアブは日本中どこでも一番多く目にするアブだろう。1cmほどと小さく行動も忍びやかなので人の気を惹くこともないが、よく見るととてもきれいな色合いをしている。名前の通り細長くて平たいのだが、その平たさがびっくりするくらいだ。頭でっかちでぺちゃんこの腹の姿は飢餓状態かと思ってしまう。しかしどんなにご馳走の上にいても、彼らの腹がふくれることはない。
posted by 夜泣石 at 09:08| 生きもの | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。