2009年09月30日

ナガエコミカンソウ

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ミカン畑の脇がベールを掛けたかのように、何とも涼しげな繊細な感じの草に覆われていた。初めて見る草だ。こんな何でもないところに見慣れぬ草が生えていたら、それはもう外来種に違いない。また見慣れぬと言ってもどことなくなじみがある。コミカンソウに似ているのだ。さっそく帰化植物図鑑を調べて、すぐにナガエコミカンソウと判った。なるほどそのものずばりと言った名前だ。コミカンソウでは枝に直接くっつくように並んでいた実が、一つ一つ長い柄の先にぶら下がっている。

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この長い柄はいつ伸びたのか。よく見ると雌花はもともと長めの柄の先に付いていて、それが実って果実が大きくなると、柄もさらに伸びていくようだ。雄花にもごく短い柄がある。一つの葉腋に一対の雄花雌花が付いていることが多いが、それぞれ複数の場合も結構ある。どうも株によって、多かったり少なかったり個性があるようだ。

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花はやっと2mmくらい。よく見ると中に丸い粒々が光っている。蜜がこんなに出ているのだ。これなら小さなアブなどがよく集まって来るだろう。雌花と雄花は別々だが、おかげでどれもよく結実して、たくさんの玉飾りになっている。

別名をブラジルコミカンソウと言うが、それはブラジル原産と誤解したからだそうだ。実際はブラジルにあったのも帰化種で、原産はアフリカとかインド洋諸島などと言われている。今ではほとんど世界中の暖地に広がっているそうだ。日本では以前より植物園の温室などに生えていたが、野外で見つかったのはせいぜい20年くらい前とのことだ。それが今では関東地方より南の都市部で普通に見られるという。それだけ急速に温暖化が進んできたということなのだろう。

屋久島にはどうやって入って来たのだろうか。近頃花屋などに熱帯の珍しい草花の鉢植えなどがよく並ぶようになっているから、そうしたものに付いて来たのかも知れない。屋久島の気候にはよく合っていそうだし、熱帯植物らしく季節性がなく周年花が咲き実を付けるようだから、他のコミカンソウ類を押しのけて、これからあっという間に広がっていくような気がする。まあコミカンソウ自身も史前帰化植物といわれているから、帰化植物同士の興亡史を見ることになるのかも知れない。
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2009年09月26日

コミカンソウ

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枝の下に一列に並んだ小さな実がとてもかわいらしい。コミカンソウとはよくも名付けたものだ。もっともミカンとは縁もゆかりもなく、食べられるものでもないのだが。枝の左右に小さな葉がびっしり並んだ様子も、丹念に作られた細工物を思わせる。普通こういうのは複葉で、1枚の葉が切れ切れになったものなのだが、この草の場合はもともとの1枚1枚独立した葉だった。だからそれぞれの付け根に花が咲き実がなるわけだ。

野の花などに初めて興味を持った人にこれを教えると、たいてい感激してくれる。なにしろ足元の何でもない草なのに、その裏にこんなすてきな世界があるのだから。しかし残念ながら感激はそう長くは続かない。じつはこれは、どこにもいくらでも生えてくるうんざりするような雑草なのだった。

屋久島に来たら、特にそのはびこりぶりがすさまじく、驚いてしまった。そのうち何だか様子が違うのに気付いた。東京では茎や実がだいぶ赤っぽかったのだが、ここでは全体が緑色なのだ。それに膝を超すほども高くなる。ネットで調べたらキダチコミカンソウというのがあった。全草緑色とある。しかし果実までが青いミカンのようで、表面は平滑と書いてあった。こちらの方は果実は薄い黄色で表面はでこぼこしている。しかしコミカンソウではもっとイボイボな感じで、色も赤でずっと濃かった覚えがある。どうもこれは新しい外来種か、それとも両者の雑種のように見える。あちこちを見て回って、見慣れたコミカンソウや、ネットに載っていた通りのキダチコミカンソウらしきものもあったが、この島に圧倒的に多いのはこの雑種のような種類だった。

ネットには、また興味深いことが書いてあった。トウダイグサ科とずっと覚えていたのだが、最近の遺伝子解析の結果、コミカンソウ科と独立させていたのだった。こうした分類もやっと明確に数値的に決められ、博物学から科学に進歩したなと実感させられる。そうしてまた一歩、自然の内奥に入っていくことができるのだ。その一方、研究室に閉じこもって実際の自然を見ない若い科学者が増えるのではないかと心配になる。自然に対する情緒や感傷をなくしたら、科学者の心を占めるものは競争と功名心だけになってしまうのではないだろうか。

この島のコミカンソウは畑の際などにずいぶんしっかりした茂みを作る。いずれ冬が近付くと一面とてもきれいな草紅葉に変る。憎まれ役のふてぶてしい雑草だが、目をこらしていればこうして最後まで楽しませてくれるのだ。

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2009年09月23日

町議会選挙のあとさき

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屋久島灯台

屋久島町議会の議員選挙が20日行われた。1.5倍の競争率で新人も多数出たし、それなりの変化も期待したが、結果は前職14名、新人6名だった。まあまあだったとも言えそうだが、昨年から渦巻いていた町政批判、議会批判、また国政で革命的な変化があった割りには、あまり変り映えしなかったとも言えそうだ。特にずっと翼賛議会を形作ってきた何もしない多選議員が何人もそのまま居座ってしまったのが残念だ。彼らは今回も政策など訴えることなく名前だけ連呼していた。選挙期間だけお願いしますとひたすら頭を下げ通し、当選すれば4年間ふんぞり返る。乞食は3日やると止められないというが、これではまるで乞食議員だ。

それはともかく全体的には、これほど政策や議会改革が叫ばれたことはなかっただろう。改革を志す議員は未だ少数派のようだが、それでも着実に増えている。体制派の前議員は3人も落選している。また住民としても、選挙が済んだら後は何もできないというのではない。監査請求や住民訴訟、リコールなど、直接訴えるさまざまな手段がある。改革派の議員と手を組んで、そうした住民運動を次々と展開していけばよいのだ。

これから一月以内には不当な崖地購入訴訟の判決が出る。勝訴になるか、たとえもし敗訴になっても、それは時効のためという可能性が高い。そのどちらにしても町長の犯罪行為は明白なのだ。それでもこの町長は居座るつもりだろうか。そうなったら議会には辞職を求める決議案が出されるだろう。この議会は、かつて自ら調査することを拒否したように、今度もそれを否決するだろうか。それなら次はリコールだ。その時、否決した議員たちもただでは済まされないだろう。

ただ問題として、次の町長候補がはっきりしないということがある。何人か密かにうごめいているように聞くが、今の町長と同じ穴の狢といった人ばかりのようだ。改革を志し、それを遂行できる人材を早急に擁立しなければならない。

ゴミ処理施設に関する監査請求も一月以内に回答が出る。これは役場も違法性を認識してすぐに契約をし直したほどなので、後はどのように決着を付けるのが住民にとって最善かというだけの話だ。もともとこれは業務委託の契約金額の不当性を追求するために起こしたものだ。以前の議会ではそれを調べようともせず、追求する議員の発言を多数決で封じ込めてしまっている。もう一度この問題に携わっている議員によって、議会で追求が可能になるような形に収めたいと思っている。

ところで今回当選した議員のうち半数近くが、公約で議会改革を訴えている。そのうち数名は、定数削減や報酬カットにまで踏み込んでいる。早急にこの人たちから改革案の提出か、あるいはそれを検討する特別委員会の設置が提案されることを期待したい。逆にもしそれをしなければ明らかな公約違反になるのだ。

議会はどのように変わるべきだろうか。まず何より議論をする場になって欲しい。そんなことは当り前のようだが、今の議会では本来の意味での議論は行われていないのだ。ただ各自がそれぞれの意見を表明しているだけで、お互いに話合って理解を深め、より優れた案を共に作っていくなどということはない。役場側は常に言い訳と隠蔽に終始し、議会と協力してより良い町政にしていこうなどという気はさらさら無い。議会は民主主義を装う儀式の場に化している。議員から議案が提出されることはまずなく、役場が提出した議案はほとんどすべてそのまま通っている。

議論が見えない原因の一つに、常任委員会というものの存在があると思う。通常、議案はまず担当の常任委員会で審議される。そして委員長が本会議に報告する。ある時、他の議員から質問が出た。ところが委員長はそのことは話合われなかったと答えただけで終ってしまった。常識があれば自らの落ち度を謝罪し今後の対処を約束するだろう。また重要事項を見過ごすしたことへの追求が本会議であってしかるべきだろう。しかし委員会付託ということで、最初に託してしまったのだから後から文句は言えないのだそうだ。どうも委員会というのは密室で事を進める隠れ蓑になっているようだ。またある時、委員会で決まったことに反論が出て本会議で覆されてしまったことがあった。ではそれほどの大議論があったかというと、ただ数人が意見を述べただけで、採決まで10分とかからなかった。これでは委員会で何をしてきたのか、彼らだけで審議する必要があったのかすら疑わしい。

そもそもこんな小さな町の議会をなぜさらに細分化する必要があるのか。委員会など止めて最初からすべて全員で審議すればよいのだ。それで時間が足りないというなら会期を延長すればよいだけだ。議員報酬は常に貰っているのだから、議会は一年中開いていてもおかしくない。

よく報酬カットや日当制にするべきだといった議論を聞く。今の議員の仕事ぶりからすれば当然の主張だろう。しかし議員の仕事が今のままであって良いはずがない。議員には町政を監視し、ややもすると自己目的を追求しがちな役場を住民側に引き戻す大事な仕事があるのだ。本来の仕事をしてもらうなら、今の報酬は決して高くない。それどころか年中議員活動をするとなれば、もう副業などしている暇はないから、生活保障ということで報酬を引き上げてもよいくらいだ。そしてそうすれば、大事な仕事をしている、町民から期待されているという意識も高まることだろう。

ただ議員の人数はあまりに多い。すべて全員で審議するなら10人かそこらで十分だろう。また今回、得票数はかなり平準化されていたが、それでも下位は300票弱で当選している。これだと親類縁者の多い人なら身内を固めるだけで当選できてしまう。そうした議員は一部の人たちの利益代表でしかない。島全体のことを考える議員を選ぶためには、島中から幅広く票を集めなければ当選できないくらいにハードルを上げなければならない。議員数が減れば身内しかあてにできない候補者はいなくなり、散らばっていた票がまともな政策を訴える候補者に集まることが期待される。

ところで以前の町長選や今回の議員選でも、全島のブロードバンド化を訴えた人が何人かいた。たぶんそれに反対する議員などいないだろう。しかし設備だけ整っても使われなければ意味がない。残念ながら未だ島民でネットを使う人などごくわずかしかいない。普及させるにはハードだけでなく中身の充実が必須だ。住民が知らなければならない町政の動向に通じている議員は率先して情報の提供を図るべきだ。たとえば議会のサイトの中に各議員のページを用意し、常時議会活動の報告をする。中身が問題なのだから最初のうちは紙に書いて人に入れて貰ってもよい。こんな事はお金をかけずにすぐできる。屋久島のITリテラシーの底上げを図るためにも、また町政をガラス張りにするためにも、議会としてさっそく取り組んで貰いたい。
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2009年09月19日

シロオビノメイガ

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アメリカネナシカズラの写真を撮っていたら、2cmほどの小さな蛾がとまっているのに気付いた。じっとしているが触角だけ微妙に動いている。どうやら蜜を吸っているようだ。この花は小さく目立たないけれども、ちゃんと虫が訪れているのだった。

この蛾には見覚えがある。というより、いつでもどこでもよく目にする。蛾はたいてい夜に動き回るものだが、これは昼間でも見かける。草地など歩くと、足元からはらはらと飛び立つ。といっても飛び回るというほどでなく、ちょっと先に行ってはすぐとまる。

よく見ると白い帯がくっきりしてなかなかきれいだ。蛾というのは何しろすごく種類が多く、しかも図鑑には自然の姿でなく磔の形でしか載っていないので調べられない。しかしこの蛾は特徴が明確だし、これほど普通にいるのだからきっと判るだろうと図鑑を見る気になった。案の定すぐ見つかった。単純明快にシロオビノメイガというのだった。

この名は最初、白帯のメイガと読んでしまった。そうではなく白帯ノメイガだった。メイガというのは、ニカメイガなど稲作の大害虫として小学校で習った覚えがあってなつかしい。この仲間は非常に多く、記載されているものだけでも日本で700種ほどいるそうだ。その中でノメイガという集団はちょっと離れた仲間で、科を分ける学者もいるそうだ。生態も含めて、まだ十分に研究が進んでいないようだ。

よく見かけると思ったら日本中に分布し、春から秋遅くまで、半年くらいは発生するそうだ。食草も幅広いが、中でもホウレンソウに大発生し、害虫として有名なのだった。驚いたことに、初夏に中国や東南アジアから集団で渡ってくるのだそうだ。休眠性がなく、寒い日本の冬は乗り越えられないのではないかという。もしかしたらウスバキトンボのように、海を渡ってきて大発生を繰り返しながら北上し、寒くなるとそれらがすべて死滅するという壮絶な運命を、人知れず毎年繰り返しているのかも知れない。
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2009年09月16日

アメリカネナシカズラ

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車で走っていると、ふと県道沿いの草地がいやに黄色になっているのに気付いた。草刈りした後の枯れ葉にしてはずいぶん鮮やかだ。もしやと思って見ると、やはりそれはアメリカネナシカズラだった。ラーメンをぶちまけたようだとよく言われるが、確かに細い焼きそばにこんな感じなものがある。それがいったい何百人分だろうか、道ばたのシロノセンダングサの草むらを、数十メートルに渡って覆ってしまっている。

ラーメンのようなものは茎だ。根元はどこかとたどっていくと途中で消えてしまう。名前の通り根無しなのだった。細い蔓は相手の茎や葉に絡みついてくっついてしまっている。融合したという感じで、そこから相手の養分を吸い取っているのだそうだ。だから自分では根も葉も持たない。奪い取った栄養で小さな白い花をいっぱいに咲かし、たくさんの果実を実らせている。

略奪のあまりのすごさに、寄生された方は枯れてしまったりするそうだ。すると自分も死ぬことになるのだから、ほどほどにすればよいのにと思ってしまう。旺盛に素早く伸びていって、次々に新しい獲物を襲っているのか。それとも一年草だから種子ができればもういいということなのか。

種子はどうやって運ばれるのだろう。粘着性があるとか、風で飛ぶとかいうのではなさそうだ。3mmほどの果実は食べでのあるようなものでないが、小鳥たちならつつくだろうか。それよりこの島では、何でも食べてしてしまう貪食のシカが、丸ごと飲み込んでしまいそうだ。するとこれが島中に広がるのは時間の問題かも知れない。

北アメリカ原産で、日本には1970年頃入ってきたそうだ。瞬く間に広がり、今では日本全国で見られるという。東京近辺でもたまに見かけたが、屋久島で見たのはこれが初めてだ。ああ、こんなものまでこの島に来てしまったと、感慨というより無念といった思いにかられた。それからふと、自分のことを棚に上げてという気がした。考えてみれば、私自身もこの島の自然と、そして人々のまつりごとの昔から続いた生態系を乱そうとする外来生物の一つなのだった。

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2009年09月12日

タイワンアヤシャク

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夜、窓ガラスの向こうにたくさんの蛾が集まっているが、その中にいつも気になっていたものがあった。3cmくらいの大きさで、内側が派手なオレンジ色、中程から外側が黒い帯になっている。お腹を見せている蛾の中では特に目立つ方だ。夏の初めから終りまで長い期間、時々見かける。しかし残念ながらお腹では図鑑で調べようがない。

夜に入ると急に涼しくなったこの頃、蛾たちはあまり動かずじっと止っている。これならそんなに飛び込んできたりはしないだろうと、そっと窓を開けてみた。ゆっくり手を近づけて触れてみると、飛び立たずに指に乗り移ってくれた。そのまま部屋の中に入れて表側を見てびっくりした。裏とは似ても似つかぬ渋く複雑な色合いなのだ。とても同じ蛾だとは思えない。

淡くくすんだ色なのに、緑と茶色が互いを引き立てている。そして黒い筋がめりはりを効かせている。白い模様が鳥の翼のようで、一本一本、羽が重なっているかのようだ。しかしこれは平面に描かれた偽の羽なのだが。

これほどの模様ならすぐ名前はわかるだろうと思って図鑑を頭から調べた。ところが図が鮮明でないのか、あるいは個体変異がかなりあるのか、なかなか見つからない。やっとアヤシャクの仲間に行き着いた。その中でウスアオアヤシャク、オオシロアヤシャクそしてタイワンアヤシャクのどれかだろうと見当をつけた。ふだんはこれから分布域を見て絞り込むことができるのだが、驚いたことに前の二つは本州から屋久島まで、三つ目は南西諸島に分布し北限が屋久島と、日本でこの島だけには三種ともいるのだった。ネットで調べたらありがたいことにこの三種の比較表が見つかった。「裏面の内側が濃い黄色で、黒帯外側の輪郭がはっきりしている」という特徴から、タイワンアヤシャクと決めることができた。

食草は幅広いようで明確ではないが、中にアカメガシワを食べている幼虫の写真が載っていた。それならこのあたりにいやというほど生えている。これから注意してよく見てみよう。やっと気になっていたものの氏素性が判って、ほっとした気分になった。まあ名前など判らなくとも、十分自然の神秘を感じさせてくれるほどのものなのだが。

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2009年09月09日

民主党政権に望むこと

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中途半端な夜明け

多くの識者が、自民党が再生することに疑問を提起している。自民党はこのまま崩壊すると言い切る人も多い。しかし私は、それは予測というより願望に近いのではないかと思う。自民党は確かに代議士の数では惨敗だったが、得票数ではそれなりの数字が上がっている。これほどの逆風で、しかもあれほど自殺行為を繰り返し、なにより実際の政権運営で日本をここまで酷くしておいて、それなのに未だこれだけの票数を取ること自体が本来はあり得ないはずなのだ。

そもそも今度の選挙では主義主張より何より、ただ麻生太郎の顔をもう見たくないといった生理的嫌悪感から民主党に入れた人も多かったと思う。もし自民党が選挙の直前にでも新しい顔にすげ替えていたら、たとえそれが誰であったとしても、こんな大敗にはならなかった気がする。

なぜ自民党はそんなに強いのか。それは地方を見ればよく判る。地方の首長、そして地方議会は圧倒的に自民党ないしはそのシンパなのだ。田舎選挙では主義主張など関係ない。それどころか能力や人間性すらも関係ない。利害と地縁血縁の強固な結びつきだけで決まる。だから票数の予測など、今までは極めて正確だった。彼らはこの総選挙の敗戦はちょっとやり方を間違ったくらいにしか思っていない。そして自分たちの権益を盗み取ろうとする民主党に恨みをかき立てている。

日本中の有識者の眉をひそめさせた、例のどぎついピンクのチラシなど、未だにバイブルのように抱え、堂々と公式の席で述べる政治家も地方にはいる。そしてそれを受け入れる土壌がある。長期に政権を握る間に、しっかりと築き上げられたピラミッドの底辺はそれほど強固なのだ。対する民主党には労働組合などの支援組織があるが、それは主に都会でのことだ。日本の多くの地方の住民の間に、民主党はほとんど浸透していない。もし民主党が早期に、スキャンダルとか内紛などで揺れたら、いっぺんに揺り戻しが起こるだろう。

欲と人間関係で結びついた地域集団は、いずれは政権与党に尻尾を振るようになる。民主党はそれまで、任期一杯の最低4年は政権を維持して欲しい。さらにじっくり地方に浸透し、こんな風土を風化させていくには、もう4年が必要だろう。一方、保守政党が旧弊を脱して新しく生まれ変わるにもそれくらいの期間が必要だ。できればみんなの党あたりがしっかり成長して、民主党に対抗できるようになって欲しい。そうでなければ真の二大政党制の実現などあり得ないのだ。

では民主党が8年の政権を維持するにはどうしたらよいか。まず、今まで自民党がやってきたように、政権維持という至上目的のためには主義主張を曲げてでも結束して欲しい。何だかとても卑怯なことのようだが、今はそれが日本のために必要なのだ。どうせ民主党は政権運営では素人集団だ。今の各自の主義主張など、素人のたわごとかも知れないのだ。しばらくは勉強のつもりで、皆の意見を聞いて折り合ってやっていくべきだろう。そうした8年の修練を経た後、たぶん不満を募らせるであろう党内右派は、ここまで協力したからと円満に党を出て新生保守政党に加わればよい。

また早期に理想を実現しようなどとあせることなく、堅実な国家運営に徹して欲しい。特に外交では、対米対等とか東アジア共同体などは将来の夢の範囲にしておくべきだ。日本には今これだけ米軍が常駐しているのだから、実質属国状態であることは紛れもない事実だ。しかしそのことに多くの日本人は未だあまり不都合を感じていないのだ。こんな大変な時期にわざわざ手を出すことはない。下手に逆らえばどんな裏工作をされ、足を引っ張られるか判ったものでもない。またこの点から、社民党との連立は止めた方がよいと思う。

経済政策は何をすればよいのか誰も判らない。各国とも右往左往しているだけのようだ。専門家などというのも、誰も現状を予測できなかったし、今言っていることもばらばらだ。といっても何もしないわけにはいかないから、周りを見ながら試行錯誤していくしかない。ともかく訳もわからず世界のリード役を務めるなどと言うのは止めて欲しい。温室効果ガス削減など、もはや科学的な話でなく、政治経済的な駆け引きの道具になってしまっているのだから。

それではどうやって国民の人気を得ていくことができるだろうか。短期的には約束したばらまきを一部実行することだろう。しかしそれよりなにより、内政の無駄の排除と不明瞭な金の解明、特にその原因となっている官僚支配からの脱却に邁進して欲しい。もともと政治家と官僚の癒着がその要因の一つなのだから、人が変っただけでも効果は出てくるだろう。もちろん官僚を敵に回すわけにはいかないから性急にはできないが、一つ二つ成果が出ただけでも国民はきっと納得する。これが今の日本の最大の病根であるというのは、ほとんどの国民の共通認識なのだから。
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2009年09月06日

オニヤブマオ

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農道を走っていると道脇に白い紐の束のようなものが日を浴びて輝いていた。あれっと思って車を止めて見ると、それは見慣れたイラクサ科カラムシ属のヤブマオとかいう種類の花だった。この仲間には似たようなものが多く区別が付きにくい。風媒花だからきれいな花を咲かせるわけでもなく、それにところ構わずとんでもない茂みを作るのであまり良い印象はない。普段は無視を決め込んでいたが、こんなに美しい一瞬があるとは知らなかった。

調べてみたら屋久島にはこの仲間は10種類ほど分布していて、そのうちこのように巨大になるものにはオニヤブマオと、さらに大きくなるニオウヤブマオがあるそうだ。確かに海岸に行くと潮のかかるようなところに、大きなごわごわした葉の、とても中に踏み込めそうもない茂みがよくある。きっとそれがニオウヤブマオだろう。ただそれらは環境による変異かも知れず、両者を区別しない研究者も多いようだ。図鑑にはオニヤブマオ、別名ニオウヤブマオとしているものが多いので、あまり細かいことを言う必要はなさそうだ。

花をよく見ると、とても小さな花がたくさん団子状にくっついていて、それらがさらにらせんを描くように連なって長い花穗になっている。全部でいくつ花があるのか見当も付かない。毛羽だった細かい糸がたくさん出ているが、これは雌しべで、風に舞う花粉を捕まえようとしているのだろう。では雄しべはどこにあるのだろうか。図鑑によれば茎の下の方の葉腋に雄花のかたまりが付くのだという。しかし探したけれども見あたらない。そもそもこの仲間は雄花ができなかったり、受粉しなくても種ができたり、種はほとんどできず栄養繁殖に頼ったりと、実に変異が多いのだそうだ。

花穗がこんなにきれいなのは数日くらいだ。じきに雌しべは茶色くなり、花穗は薄汚れた紐のようになる。びっしりと茂った大きな葉も、縮緬のように皺だち細毛に覆われて、濁った緑の汚れたような感じだ。そうして空き地を覆う嫌われ者の藪として、誰も見向きもしなくなる。

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2009年09月03日

オオミズアオ

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夜、窓の向こうにさまざまな虫が集まってくるが、中でも一番驚かされるのがオオミズアオだ。青白い大きなものがばさばさと飛び回る様子は、一瞬、魔女か幽霊の類に見える。そんなものが、どこか隙間を探して部屋の中に押し入ろうとしているかのようだ。そのうち飛び疲れると、ガラスに止って今度はじっと動かない。本当にいつまでもぴくりともしない。10cmを超える大きさ、着物の裾のように伸びた羽、繊細な飾り物のようなその姿は神秘的ですらある。色からしても、西洋で月の女神などと呼ばれているのも判る気もする。

裏から見ると真っ白な太めの胴体から、ずいぶん細い赤い足が出ている。子供の工作か何かのようで、ちょっと不格好だ。指にとまらせると、重たい体を支えようと華奢な足でしっかりしがみついて、どこかかわいらしい。しかしいつだったか濃い血のような液体を出して手を汚したので、それ以来遊ぶことはやめにした。

オオミズアオ(大水青)は、日本全国に普通にいる蛾の中では一番大きな種類ではないだろうか。大型のため寒さに強いせいか、高山のずいぶん冷え込んだ夜に山小屋の窓に来たことがある。東京でも何度か見たが、幼虫がカバノキ科、バラ科、カエデ科、ブナ科など節操もなく食べるので、モミジの植わった公園や桜の並木の多い都会で十分暮らしていけるのだろう。屋久島で見た時は懐かしかったが、ここが分布の南限だそうだ。春から夏の終りまで、我が家の窓にはたびたびやってくる。見慣れた種類ではあるが、こんな大きくきれいなものが身近にいると思うと、ちょっと幸せな気分になる。

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posted by 夜泣石 at 05:46| 生きもの | 更新情報をチェックする
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