2008年03月31日

サカキカズラ

(107280)s.jpg


枝先に1cmもない小さな花がびっしりかたまって咲いていた。よく見ると花びらはよじれ、わずかに曲がって風車の羽のように並んでいる。こんな形の花はあまり見たような覚えがない。びっしり生えた白い毛がきらきらし、ちょっとさわやかな芳香もする。


根元は両手で握れるくらいの太さのまっすぐな幹だから、普通の木だと思った。ところが先の方を見ると、細い蔓になってぐちゃぐちゃに絡み合っている。蔓植物なのだった。厚めののっぺりした細長い葉はキョウチクトウに似ている。そこでやっと同じ仲間のサカキカズラだと気が付いた。名前は葉がサカキに似ているからということだが、サカキの葉はもっと小型で丸く、似ているようには見えない。


サカキカズラは果実の形が面白い。地方によって、牛の角、サイの角などの呼び名のある通り、10cmほどもある細長い円錐形の実が二つ、太い方をくっつけて一直線に並ぶ。そんなものが秋の林の中にぶら下がっているのは、なんだか前衛芸術でも見るような思いがする。


これだけたくさん花が咲いても、果実になるのは一組だけのようだ。何でこれほど効率が悪いのだろう。しかしもしこれらがみな結実したら、一つ一つはかなり大き目だし、枝先にとんでもない爆弾を吊るしたようになってしまう。そんな様子は想像すると楽しいが、木にとっては耐え難いことだろう。一組を残して他はみな生理落果するような仕組みにでもなっているのだろうか。


冬になると果実が割れて、ふさふさの真っ白な毛を付けた種が順番に出てきて風に舞う。屋久島にはキョウチクトウ科やガガイモ科に、同じような種を飛ばす植物が多い。山道などあちこちに、飛んできた真っ白な毛がきらきらしているのをよく目にする。我が家の庭で見つけたりすると、かわいらしい小さなお客様が来たようで、誰の子?どこから来たの?と思わず声をかけてみたくなる。
posted by 夜泣石 at 06:51| 花草木 | 更新情報をチェックする

2008年03月29日

ウマノアシガタ

(107262)s.jpg


ウマノアシガタが一面に咲くと、春もたけなわといった感じがする。混じりけのない黄色で、しかも光を反射してきらきらと輝く。まるで無数の太陽のかけらを、ばら撒いてしまったかのようだ。


咲いたばかりの花は光らないので、これは花びらの表面がコーティングされているのでない。表皮細胞の中に、光を反射する微粒子が合成されるためだという。では何のためにそんなことをするのだろうか。早春に黄色のパラボラアンテナのような花を咲かせる種類はいくつもある。光を集めて、花の中の温度を上げる効果があるのだという。まだ寒い季節、暖かさで虫を集め、動きを活発にさせて受粉を助けてもらおうというわけだ。


ウマノアシガタという名前は葉の形からきているそうだ。しかし誰もが似ていないという。それならば名前を変えればよいのにと思う。だいたいこのきれいな花に、馬とか足など似合わない。この花の八重咲きをキンポウゲというそうだ。金鳳花、つまり金の鳳凰とは豪華な名前だが、この一重の花の輝きも、そんなに名前負けするものではない。ウマノアシガタでなくキンポウゲを正式名称としてほしいものだ。そもそもこの仲間はキンポウゲ科なのだから。


日本全国に分布し東京あたりでも時々目にしたが、どこでもぽつぽつ咲いている程度だったと思う。屋久島ではそれこそ一面に咲く。道路のふちを飾るように、ずっと金色の帯が続いているようなところもあちこちにある。しかも春早くから咲き始めて、初夏の頃までずっと咲き続けている。
posted by 夜泣石 at 06:54| 花草木 | 更新情報をチェックする

2008年03月27日

シマキケマン

(107210)s.jpg


畑の隅の日溜りで、きゃしゃな感じのキケマンがたくさん咲いていた。黄色とは普通、けばけばしくて派手なものだが、この花では淡く控えめな色になっている。それでもこうしてびっしりまとまって咲くと、あたり一面明るく華やいだ感じになる。


キケマンは黄色の華鬘ということだが、華鬘というものを見た覚えがない。お寺のお堂の中を飾るものだそうだが、そういわれてみれば、欄間やその下あたりに、板状の小物がたくさんかかっていたような気がする。調べてみたら、花や葉を流れるように模式化して透かし彫りをしたものだった。真ん中には鳥や仏様が模様になって入っていたりする。そんなものに似ているといわれると、なんだかこの花までありがたいもののように見えてくる。


屋久島にはキケマンの仲間は帰化植物を含めていろいろ見かけるが、名前の通り黄色いのは2種類だけだ。黄色の濃い大柄な本来のキケマンと、薄い色の小柄なシマキケマンだ。この弱々しげなキケマンを見かけて、最初は東京などでよく見たミヤマキケマンかと思った。しかしそれよりももっと色は薄く、先の緑色が目立つのが違っている。シマキケマンは四国より南に沖縄にかけて分布しているという。しかし四国や九州ではかなり珍しいものだそうだ。


屋久島ではあちこちに普通にある。それでもこの花を浜辺の岩陰で見かけた時はびっくりした。あたりにはいかにも海浜植物といった、無骨な連中しか見当たらない。そんな中にぽつんと、誰も来るなといいたげに、きらきらしたざらめのような砂に囲まれて、小さくひっそり咲いていた。
posted by 夜泣石 at 06:50| 花草木 | 更新情報をチェックする

2008年03月25日

ツルナ

(107232)s.jpg


海辺に行ったら、赤いヘビのような蔓が砂地を這いまわっていた。黄ばんだ古い葉が厚紙のようにごわごわして、びっしり地面を覆っている。しかし蔓の先は少し立ち上がって、明るい緑の新しい葉をたくさん付けている。そしてその葉の付け根ごとに、小さな花が点々と咲いている。


ツルナだった。花は黄色だけの単純な形だ。花びらのように見えるものは萼で、分厚く、外側が緑、内側が黄色と色分けされているのが珍しい。雌しべの先が6本ほどに分かれて触手のようになっているのも、風媒花にはよくあっても、虫媒花ではあまり見かけないように思う。


葉はきらきらと輝いている。まるで雨上がりで水滴が残っているのか、あるいは砂糖をまぶしたお菓子のようだ。これは葉の表面の細胞に粒状の突起がたくさんあるためだそうだ。リビングストンデージーがやはりこんな感じだったと思ったら、なんとこれらは同じツルナ科の植物だった。しかしリビングストンデージーの、あのサイケデリックともいえる花と、この花びらもない地味な花とが同じ仲間にはとても見えない。


ツルナは蔓菜で、若葉が食用になるからだという。昔はかなり一般的な伝統野菜で、特に真夏の端境期に重宝されたそうだ。分厚い葉は食べ出がありそうだし、こんな浜辺に生えるのだから極めて丈夫なのだろう。これなら我が家の庭に持ってきても簡単に育ちそうだ。ともかくまず、おいしいかどうか試してからだが。


種が水に浮くため海流に流され、太平洋沿岸の世界各地に分布しているという。日本でも全国の海辺に普通だそうだが、あまり見た覚えがない。最近はなぜかずいぶん減ってきているとのことだ。今の時代、食べられてしまったからとは思えない。もしかしたら浜辺がゴミだらけになって、生える場所がなくなってきてしまったためだろうか。
posted by 夜泣石 at 06:55| 花草木 | 更新情報をチェックする

2008年03月23日

アカホシカメムシ

(107158)s.jpg


熱帯には珍奇な虫がいろいろいて、本やテレビなどでよく紹介されている。そんな中に人面カメムシと呼ばれる、人の顔そっくりなものがいる。屋久島にもそこまではいかないが、それでも一目で顔を連想する虫がいる。


細長い赤ら顔で、かなり目立つ髪形だ。一昔前のリーゼント・スタイルか、それとも近頃はやりのモヒカン刈りか。どちらにしてもあまりまともな方ではない。といってもこわもてではなく、ちょっと気の弱い能天気な奴といった感じだ。


これはアカホシカメムシといって、九州から南にずっと、東南アジアなどに分布しているのだそうだ。主にアオイ科の植物の汁を吸うので、綿やオクラの害虫になっているとのことだ。屋久島でよく見かけるのは、大好物のサキシマフヨウがこの島に多いからだろう。


人の顔に似せているのは捕食者を脅かすためか。いやいやこの虫が進化してきた時代、人の祖先はこんな髪型ではなかったはずだ。カメムシの仲間はいやな臭いを出すので、鳥なども敬遠する。この鮮やかな朱色は、間違って手を出さないよう警告しているのだという。それならばこんな顔模様は不要のはずだが、自然はちょっと遊んでみたくなったのか。


人は社会を作って暮らしてきたため、脳は顔を見分ける能力を進化させてきたのだという。それが必要以上に働いて、天井の木目とか、石や雲などいろいろなところに顔を見つけてしまうのだそうだ。どうもこの虫の顔模様も、我々の脳がそう見たがっているために浮き出てきた錯視のようだ。


最近、近縁種のベニホシカメムシというのが、こともあろうにこのアカホシカメムシを食べていることが判ったそうだ。この両者は見かけもよく似ていて、専門家でも混同するほどだという。ベニホシカメムシは間違って共食いをしてしまわないだろうか。こんな派手な連中の殺し合いは凄惨な感じで、ちょっと見てみたいと思うが、ベニホシカメムシは石垣島あたりにしかいないようだ。屋久島のアカホシカメムシは安心して暮らせそうだ。
posted by 夜泣石 at 06:54| 生きもの | 更新情報をチェックする

2008年03月21日

イヌガシ

(107179)s.jpg


イヌガシという名前を初めて聞いた時、あまり興味をそそられなかった。カシやシイの仲間などありふれているし、それにイヌなど付いたら、どうせたいしたことはないと思っても当然だろう。しかし図鑑を開いたら、見たこともないような可憐な赤い花が目に飛び込んできた。それ以来、何とかこの花を見たいものだと思っていた。


やっと山の日当たりのよい道脇で偶然見つけた。それは予想以上にきれいだった。小さな花がいくつもまとまって、ポンポンのように、あるいはブラシのように連なって咲いている。透き通るような朱色は明るく華やかで、見ていて気持ちが弾んでくるようだ。


カシという名前が付いているが、実際にはカシとは関係なくクスノキの仲間だった。かさかさして硬めの常緑の葉は、3脈が目立って確かにクスノキに似ている。もむとかすかに良い香りがする。雌雄異株だそうだから、この雄しべがたくさん飛び出ているきれいな花は雄花だろう。花の真ん中に見え隠れする白いものは雌しべのなりかけだろうか。


本州の関東南部の暖地から南にずっと分布しているそうだ。屋久島には高木層のないところに密生していると図鑑には書いてあるが、意外に見つからない。どの枝先にもびっしり花をつけるから、密生していたらさぞかし見事なことだろう。まだまだ探し続ける楽しみが残っているわけだ。
posted by 夜泣石 at 06:58| 花草木 | 更新情報をチェックする

2008年03月19日

ヤクシマテンナンショウ

(107167)s.jpg


林道の脇におかしな花がにょきにょきと突っ立っていた。後ろからだと長い髪の昔の女性のように見え、横からだと前髪を伸ばしたキザな若者のようにも見える。しかしそれよりなにより、ちょっと気味の悪い縞模様のためか、鎌首をもたげた蛇のように見える。


その感じの通りこれはサトイモ科のマムシグサの仲間の花だ。もっともマムシの名は、茎の斑点模様がマムシに似ているからだそうだが。その中でこれはヤクシマテンナンショウという種類だった。花が大きめで、縞模様がくっきりしていること、切れ込んだ葉が細くて、すっきりと半円形に広がっていること、なぜか花茎が斜めに立ち上がっていることなどが特徴で、本来のマムシグサよりきれいな感じがする。屋久島特産だそうで、ここでは低山から1,000mを越す山の上までどこにでもたくさんある。


この花びらのようなものは、実は仏炎苞と呼ばれる葉の変形したものだ。中に突っ立っている白い棒は付属体と呼ばれるもので、その根元は、小さな本当の花がたくさん付いた肉穂花序につながっている。そのあたりで、付属体は鼠返しのように膨らんでいて、苞のつるつるの内壁とともに、虫を捕える罠になっているそうだ。


この花は雌雄異株で、雄株は花粉を運び出してもらうために、暴れて花粉まみれになった虫が這い出る穴を用意している。虫は酷い目にあったのに、懲りずに今度は雌株にやってきてまた罠に捕えられる。しかし雌株には穴がなく、受粉を助けた虫はそのまま閉じ込めらて死んでしまうのだそうだ。


こんな酷いことをしているのに天罰が下るなどということもなく、この作戦はたいがいうまくいっているようだ。秋に真っ赤なトウモロコシのような果実をあちこちで見かける。赤い実は鳥に食べられて種を運んでもらうためのはずだ。しかしこの短めのトウモロコシは、だいたい粒がそろったまま、冬枯れの林の中でいつまでも毒々しく突っ立っている。


またこのあたりには猿も鹿も多く、たいていの植物の葉や実は食べられてしまっているが、マムシグサの仲間は齧られることもないようだ。植物全体に有毒で、また根などにシュウ酸カルシウムの針状結晶を多量に含んでいて、食べると粘膜に刺さって悲惨な目にあうのだそうだ。全くこれは付き合えば付き合うほど、名前に負けない酷い奴ということのようだ。いや逆に謎めいていて、なかなか神秘的な感じで、薄暗い林の中で見かけると、ちょっとうれしいような気がしたりする。
posted by 夜泣石 at 06:56| 花草木 | 更新情報をチェックする

2008年03月17日

ヤマモモ

(107161)s.jpg


今の時期、枝先が真っ赤になっている木があちこちで目に付く。だいたいはタブノキかヤマモモだ。タブノキは若葉が赤く、また赤い葉に囲まれて、黄色のかわいらしい花がたくさん咲いている。ヤマモモは鮮やかな朱色の小さな蕾が房になって、枝先から何本も飛び出している。まるで海の動物か何かの卵塊のようで、ちょっと気味が悪い。


ヤマモモは雌雄異株で、この目立つ方は雄花だ。風媒花だから一つ一つの花は実に小さい。蕾が赤いのは花粉を紫外線から守るためだという。これが開くと、薄いクリーム色の無数の花粉がほこりのように風に舞う。屋久島の西部林道を通ったら、杉などはまずないところなのに、鼻がむずがゆくなり何度もくしゃみをした。この赤い房はよく見かけるので、ヤマモモもまた花粉症の原因になるような気がする。


ヤマモモは本州南部の暖地からずっと沖縄の先まで分布しているそうだ。根粒により空中窒素を利用できるので、養分の乏しい土地にも耐えられるという。花崗岩の痩せ地だらけの屋久島では競争に有利なのだろう。平地にも山にもたくさん生えていて、見上げるほどの大木も多い。


ヤマモモの実は初夏に熟す。栽培種と違って小さいが、甘酸っぱい味が濃く、このあたりの野生の果物の中では一番おいしいと思う。ただし赤い実がほとんど黒くなってからでないと、ヤニ臭くて食べられたものではない。しかし猿や鹿はそんなことにはお構いなしのようだ。彼らも大好物らしく、これを食べている時は人が近付いてもなかなか逃げない。アップの写真を撮るには、この時期が絶好の機会のようだ。
posted by 夜泣石 at 06:55| 花草木 | 更新情報をチェックする

2008年03月15日

ホラシノブ

(107140)s.jpg


大きな頭に小さなお手々、これは一目で人の胎児を連想する。春の柔らかな日差しに優しく照らされて、あたかも母親の愛情にすっぽりと包まれているかのようだ。


ホラシノブの芽生えだった。このシダは大きくなっても、芽生えの時のかわいらしさを裏切らず、細かく分かれた葉がレース編みのようでとてもきれいだ。こんな感じの、ヒノキの葉とかニンジンの葉を思わせるシダは、ほかにもいろいろ種類がある。中でもシノブ玉に仕立てられるシノブは観葉植物としてお馴染みだ。吊りしのぶとも呼ばれ、昔はよく軒先などに吊るされていたものだ。シノブは細かく分かれた葉の先が細くさらさらと流れるようで、侘び寂といった言葉がしっくりする。同じように細かく分かれても、ホラシノブは丸っこくてかわいく、楽しげな感じがする。


ホラシノブは寒い地方を除いて、日本各地で普通に見られるそうだ。ホラは洞穴ということだが、実際には日当たりの良い、かなり乾いたところにも生えている。またシノブは耐え忍ぶということで、個別の名前だけでなくシダ一般の別名でもあるそうだが、ホラシノブの明るい感じにはあまりふさわしくはなさそうだ。


我が家の庭にも普通に生えてきて、石垣など感じよく飾り立ててくれる。ただ難点は、条件が良いとびっくりするくらい大きくなってしまうことだ。こんなかわいい葉が1mにもなるとかえって不恰好にも見えてくる。邪魔にもなるし、他の雑草と共に退治せざるを得なくなる。
posted by 夜泣石 at 06:57| 花草木 | 更新情報をチェックする

2008年03月13日

シキミ

(107080)s.jpg


シキミはその枝葉がお墓や仏前に供えられるから、子供の頃から馴染みがあった。昔はだいたい家の中に仏壇があって身近だった。神棚もあったから、神様にはサカキが供えられ、仏様にはシキミが供えられるのも知っていた。だからサカキは神聖な木、シキミは縁起の悪い木だと思っていた。


初めてこの花を見た時、これがあのシキミだとはなかなか思えなかった。淡いクリーム色の花は密やかで奥ゆかしく、縁起が悪いどころか、早春のすがすがしささえ感じられる。ずいぶん不揃いな花びらと、中心にきれいにまとまった雄しべ雌しべの対比も面白く、どこかかわいらしくもある。


それからまたいつか、シキミの実を見て、とてもこの花とは結びつかなかった。それは不揃いな8個ほどの実を放射状にくっつけて上から押しつぶしたような形で、いびつな勲章かコースターとでもいった感じの、奇妙でちょっと滑稽なものだった。


シキミは有毒で、特にこの実に毒が多いのだそうだ。中華料理のスパイスである八角が近縁の木の実で似ていて、間違えて使った中毒例がかなりあるとのことだ。それで「悪しき実」と呼ばれ、それが訛ってシキミになったという。しかし葉をちぎったりすると、そんな毒があるとは思えないほどの芳香があり、それで仏事に使われるようになったとのことだ。またこの枝葉を燃やすとにおいが強く、それで死臭を消したのだという。


シキミは本土の東北南部あたりから南にずっと分布しているそうだ。しかし山野で野生のものを見たのは、屋久島が初めてだった。ここでは平地から1,000mを越す山の上まで、あちこちで見かける。なぜかまとまっていることはなく、かなりの大木がぽつんぽつんと生えている。シキミの花が咲き始めたのはもう一月も前だったが、未だ小さな蕾もたくさんある。ずいぶん長く咲き続けて、春の山歩きを楽しませてくれる。
posted by 夜泣石 at 06:51| 花草木 | 更新情報をチェックする

2008年03月11日

ウラジロ

(107121)s.jpg


シダの芽吹きはどれも、昔なつかしいおもちゃか棒の飴のように、くるくる巻いていてかわいらしい。しかしそれが1mもの高さになり、100本以上も並んでいたりすると、もう不気味としか言いようがなくなる。それでもしばらくすると、この先が2枚の葉に分かれ、空に向かって大きく手を上げたようになる。なんだか大群衆がいっせいに万歳しているようで愉快な感じだ。


ウラジロはよく知られたシダだ。冬でも青々としているし、裏が青白くきれいなので、裏返して正月飾りに使われている。ダイダイに付けられた葉は控えめで趣があった。しかしここに生えているものは似ても似つかぬ姿だ。この大きさでは鬼の城くらいでないと飾ることは出来ないだろう。


ここは林道の脇の斜面で、道沿いにずっと上から下まで、ウラジロがすっかり覆いつくしている。古い葉の間から新しい葉が出て、それが何段にも積み重なって、また隣の葉とも絡み合っている。そうして背丈より高くびっしり茂っているから、元の地面がどこらへんにあるのかも判らない。写真を撮りにちょっと中に入ってみようとしたが、とても身動きの出来るものではなかった。


屋久島では土砂崩れの跡や道路を切り開いたところなど、たいていシダに覆われる。ぎらぎら日の当る乾ききったところをコシダが、少し陰になったところをウラジロが占有する。どちらもすさまじく茂るが、ウラジロの方が何倍も大きな葉で分厚く覆い尽くす。この2種は近い仲間で、もともとコシダはウラジロに比べて小さいという意味で、こちらが本家だった。シダは進化の過程では花の咲く草木よりも初期の段階とされるが、実際にはこの島で最も繁栄している植物といえそうだ。
posted by 夜泣石 at 06:52| 花草木 | 更新情報をチェックする

2008年03月09日

アトリ

(107086)s.jpg


数日前、我が家の2階の窓から見える大きなハゼノキに、見慣れぬ小鳥が来ていた。派手な橙色なのに、白と黒の縞模様がたくさんの枯枝にまぎれて見分けにくい。そのうち5、6羽が地面に舞い降りて何かをしきりについばみ始めた。スズメより一回り大きいくらいで同じような体型をしている。色の濃い方が雄、淡い方が雌だろう。


アトリだった。屋久島では初めて見た。冬の日本各地に大群が渡ってくるのだそうだが、わざわざこんな南国にまではあまり来ないのかもしれない。アトリという語感は、なんだか異国情緒があって魅力的な名前だ。けれども一説によると、集まっているから集鳥(あつどり)で、それが訛ってアトリになったのだという。なんだか語呂合わせみたいな感じだ。だいたい大群なのはこの鳥だけでなく、たとえばムクドリなどすさまじいくらいの群れになる。


ともかく何を食べているのだろう。後で行ってみると米粒を数倍大きくしたような薄茶色の種がたくさん落ちていた。これはハゼノキの種で、厳密に言うと、硬くなった内果皮に種子が包まれた核といわれるものだった。冬の間、ハゼの実が鈴生りになっていたのを、ヒヨドリなどがきれいに食べつくした。核は消化されずに糞に混じって出てきたものだ。それが雨に洗われて地面に無数に散らばっている。それまでも食べられてしまったら、ハゼノキの種子散布戦略は台無しだ。しかし核はペンチを持ち出さなければならないほど硬い。アトリの嘴で割れるのだろうか。


本当にこんなものを食べているのか、もう一度、今度はじっくり見てみたいと思う。しかし気をつけてはいるが、あれからアトリは二度と現れない。あの日はずいぶん寒かったから、たまたま山の方から下りて来たのかもしれない。今年はメジロをはじめずいぶん鳥が多かったが、それも山が寒かったからだろうか。ようやく暖かくなってきたこの頃、気が付けばあれほどいた鳥たちがずいぶん減ってきたような気がする。いつの間にか、ウグイスもチャッチャッというだけでなくホーホケキョと鳴き出している。そろそろ今年も、冬の鳥と夏の鳥が入れ替わる時期になってきたようだ。
posted by 夜泣石 at 06:57| 生きもの | 更新情報をチェックする

2008年03月07日

クロキ

(107060)s.jpg


枝先に小さな白い花がびっしりと咲いていた。黄色い花粉を出したたくさんの雄しべが長く飛び出ているから、離れて見るとクリーム色のブラシのように見える。そうしてかなりの大木の上から下まで一面に咲いているから、遠くからでもよく目立つ。


厚めで硬くのっぺりした葉は当り前の形で、こんなような木はこのあたりにはたくさんある。だから花が咲くまで気が付かなかった。ありふれた木の感じからは予想外の、ちょっとけばけばしいような花だ。調べてみたらハイノキ科のクロキだった。樹肌が黒っぽいというだけの、なんだかつまらない名前だ。


東京あたりであまり馴染みがなかったのは、ハイノキの仲間は熱帯性で、多くは関東南部より南に分布しているからだった。こういう類のものはだいたい屋久島には多い。気が付いてみれば、クロキも海岸近くの山道沿いなど、あちこちで咲いていた。


こんなに雄しべを長くしてびっしり付けているのはなぜだろうか。これなら花蜂でなくても、虻、蝶、甲虫、誰でも花粉の媒介に役立ちそうだ。まだ虫の少ない時期、何が来てもよいようにしているのか。そして遠くからでも呼び寄せるためか、いまだ冷たい風の吹く中、よい香りを漂わせている。なんだかお風呂上りの子供のような、どこかせっけんみたいな匂いだ。
posted by 夜泣石 at 06:54| 花草木 | 更新情報をチェックする

2008年03月05日

オオアマクサシダ

(107037)s.jpg


身をよじって、小さな葉を丸めて、やっとこの世に生まれ出てきたばかりのようだ。ちぢめた手足や頭を少しずつ伸ばして、恐る恐る世の中を見回し始めたところか。それとも暖かな春の光の中で、これから思いっきり大きくなるぞと勇んでいるのか。


オオアマクサシダの葉の芽生えだった。シダは花が咲くわけでもなく、どれも似たような葉を広げているだけだから、なかなか名前が判らない。しかしアマクサシダはとても特徴があってすぐ覚えられた。下の方の大きめの葉(羽片)の何枚かが、下側だけ幅広くて切れ目が入っている。あたかも鳥が翼を広げたようなのだ。色も深い緑で光沢があり、茂みの中でも存在感がある。


珍しい種類かと思ったら、房総半島より南の暖地に普通にあるのだそうだ。しかし東京にいた頃は見たことがなかった。屋久島に多いのは大型のオオアマクサシダで、全長が80cmくらいにもなる。熱帯性でここより南にしかないそうだ。それでは北限の地で細々生きているかというと、全くそんなことはなく、あちこちにたくさんある。


我が家の庭にも雑草に混じってよく出てくる。邪魔ではあるが、観葉植物にもなりそうなほどきれいで、なんだかもったいなくて、他の雑草ほど抜かないようにしている。
posted by 夜泣石 at 06:55| 花草木 | 更新情報をチェックする

2008年03月03日

カラスノエンドウ

(107053)s.jpg


まだ風は冷たいが、日増しに強まる日差しの中で、カラスノエンドウが咲き出していた。どこにでもある雑草だが、ほんのりした赤紫の花を足元に見つけると、つい屈んで見つめたくなる。マメ科の典型的な形も、横から見るのと正面から見るのとぜんぜん違っていて、どこか可愛げのある造形が面白い。


屋久島のカラスノエンドウは、本州で見慣れたものより色が淡いような気がする。そのためよけいにはかなげに見える。そんな感じから、日本在来の野草だと思ったら、もともとはエジプトやメソポタミア地方での栽培植物だったとのことだ。豆やその若い鞘も若芽も食べられるという。日本には古代の人々が持ちこんだものだそうだ。


熟した鞘は黒々としている。明るい緑の草むらの中で、その黒さはちょっと異様で目立つ。なるほどカラスの名前がぴったりだなと思う。しかし名前のいわれはそういうことではないのだそうだ。野生のエンドウということで野エンドウとなり、しかもそれらの中では大きめだからカラスが付いたとのことだ。


しかしそんな本来の由来はともかく、”カラスの”エンドウの方が我々の感覚によく合っている。”赤い鳥小鳥”の童謡ではないが、カラスがこの実を食べたらとても似合っていそうな気がする。
posted by 夜泣石 at 06:51| 花草木 | 更新情報をチェックする

2008年03月01日

スイカズラ

(106825)s.jpg


スイカズラがきれいに咲いていた。変った形は影絵遊びの手のしぐさを思い出す。それらが防風林から垂れ下がった蔓の先にひしめくように付いている。薄桃色の棍棒のような蕾もかわいらしい。それが開いて真っ白な花になり、次の日には黄色くなる。その変化も面白い。


日本全国ありふれた花だが、絡みついた木々の上から下まで一面に咲くと見事で、あたりにすばらしい香りもして、初夏の山歩きの楽しみの一つだった。あちこちの野山で見てきたが、箱根の山で見つけたものは淡く紫がかった神秘的なほどの色だった。簡単に挿し木できるから、一枝折り取ってくればよかったと後々まで悔やんだものだ。


屋久島にはスイカズラは多い。平地から山の方まで、あちこちの樹木に絡み付いている。海岸近くでは近縁のハマニンドウと混在する。しかしそちらの葉は肉厚で、てかてかして毛がないので触ればすぐ判る。


スイカズラの漢名は忍冬で、日本でもそのままニンドウとも呼ばれている。冬にも葉を落とさないためだそうだが、それだけでなく、葉が茶色に霜焼けしたり丸まったり、いかにも冬を耐え忍んでいるような風情があるからだそうだ。しかしこの島では真冬でも青々としている。おまけに花まで咲かせてしまう。


月が変り急に暖かくなったが、今年の2月は屋久島でもずいぶん寒かった。寒い寒いと人間はちぢこまっていたが、本当はこんな花の咲くくらいの気温だったのだろう。落葉樹も、暖地向きの柿や栗などは葉を落としているが、寒さに強いリンゴやバラなどすっかり常緑樹になっている。思えば私も東京から来たばかりの頃はずいぶん薄着をしていたものだった。気温でも何でも、動物は相対尺度で、植物は絶対尺度で感じるもののような気がする。
posted by 夜泣石 at 06:48| 花草木 | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。