2007年12月30日

ブーゲンビリア

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南国といってもさすがに冬枯れの進む庭に、場違いなほど真っ赤な花が咲いている。このところ気が滅入りそうなくらい雨と曇りの日々が続いているが、そんなことにはお構いなしのこの行き過ぎのくらいの赤が、なんだか頼もしそうで気分を明るくしてくれる。


ブーゲンビリアは真っ青な空や海にすっかり溶け込んで、ハワイや東南アジアの風景の一部になっているが、原産は中南米の熱帯雨林だそうだ。屋久島に持ち込まれたのもそんなに昔でないはずだが、もうほとんど野生化してしまってどこにでもある。熱帯植物といってもあまりの暑さは苦手のようで、涼しくなる頃に咲き出し、こんなに寒くなってもずっと咲き続けている。


青っぽいものや白っぽいものなどさまざまな色があるが、とりわけ鮮やかな赤を見かけて、一枝折り取ってきて庭に挿しておいた。挿し木というものはいろいろ気を使わなければならないはずだが、屋久島では雨の多い季節、ただ地面に挿しておくだけでだいたい根付く。中でもハイビスカスやブーゲンビリアなどの熱帯花木は生命力が強いのか、ほぼ確実に成功する。


ブーゲンビリアの花を近くで見て、中にまた小さな花があるのに気付いた。つまり真っ赤に色付いているのは花びらでなく、花の周りにある葉で、苞と呼ばれるものだった。そしてこの5mmくらいの白い可憐なものが本当の花だった。オシロイバナ科と知ってなるほどと思ったが、この花はオシロイバナをぐっと小さくしたような形をしている。また詳しく見るとこの仲間には花びらはなく、ラッパ型の部分は萼だった。オシロイバナは夕闇に強く香るが、残念ながらこちらには香りはない。


この小さな花の下の方は細い管になっていて、その中に雄しべ雌しべが入っている。長く細い口先を持ったものでなければ蜜は吸えないし、花粉の媒介も出来ない。原産地ではハチドリが来るのだそうだ。日本にはハチドリはいないが、同じような暮らしをしているものにスズメガの仲間がいる。我が家の庭にもホシホウジャクなどたくさん飛び交っているが、なぜかこの花にはやってこない。鳥を呼ぶためのこの真っ赤な色は、虫にとっては魅力的に見えないのだろうか。これほど鮮やかで人目をひきつけていても、どれも徒花にしかならないのだった。
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2007年12月28日

スズガモ

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澄み切った水がゆったりと流れる川に、カモが一羽浮かんでいた。カモはだいたい群れでいるものだが、これはまるで猛禽類のように凛として一羽きりだ。上流から下流まで見える範囲に、他に動くものなどない。水面に映る影だけがそっと寄り添っているのも、かえって孤独感を募らせる。


冬になると屋久島にもたくさんの鳥が渡ってくる。夜明け前の空には、騒々しいほど鳴き交わしながら小鳥の群れが舞っている。薄暗い林の中からは、ふだん聞いたこともない鳴き声も響いてくる。しかしこの島には、東京などで当たり前だったカモの仲間は少ない。海も川も荒々しく、波や流れの緩やかな水面がほとんどないからだろう。


このカモは嘴の付け根が白いのでスズガモの雌とわかった。それがまだ小さいので若い固体のようだ。スズガモは東京湾の浅瀬で、何万羽という群れを見た。一斉に飛び立つ時の羽音が金属的でよく響き、鈴を打ち振るようなのが名前の由来だという。それがここではたった一羽、ただ静かに浮かんでいる。本土への渡りの途中に、群れからはぐれてしまったのだろうか。


ここには大きな花崗岩と透明すぎる水があるだけで、何も食べられそうなものなど見当たらない。スズガモは夕方になると海にまで行って、潜って貝や海藻を食べるのだそうだ。嘴が見るからに頑丈そうなのは、海底を掘り起すためとのことだ。貝はそのまま飲み込んで、これまた強力な筋肉の砂嚢で砕き割るのだそうだ。ひ弱そうに見えたのだが、なかなかすさまじい力を秘めているようだ。
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2007年12月26日

ビワ

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庭でビワの花が咲き続けている。咲き初めたのはもう一月以上も前で、やっと満開近くになったが、まだまだ蕾もたくさん付いている。こんなに早い遅いがあれば、果実の熟す時期にもきっと違いがあるだろう。バナナなどはいっぺんに熟して食べきれないで困るが、長い間に順々と熟す果物は家庭で植えるのに最適だ。


この木は去年、植えて3年目で初めて花をつけた。しかしほんの少しで、実は出来なかった。それが今年は2mほどに育った木全体に数えきれないほどの花を付けている。ビワは珍しい木ではないが、あまり庭に植えたりしないので近くでよく見るということはなかった。旺盛に茂って大木になり、常緑樹でもあって日陰を作りすぎるので、庭に植えると病人が出ると昔はよく言われていた。


バラ科なのだが、バラやサクラなどの美しい花とは程遠い。1cmほどと小さめで、白い花びらは硬くこわばっていて色もくすんでいる。何よりまわりがすっかり茶色の毛むくじゃらだから、よけいにやぼったい感じがする。


しかしこの花にはバラにも負けないすばらしい香りがあった。植物的なさわやかなものでなく、ちょっと重みのある甘くねっとりしたなまめかしいような匂いだ。木の下で目をつぶったら、なんだか妖しげな部屋に連れ込まれてしまったかのような思いだった。


ビワの実は上品な風味はあるが、それほどおいしいとは思わなかった。しかしそれは採り立てを食べていなかったためのようだ。ビワは保存がきかず、冷蔵庫などに入れておくとすぐに味が落ちてしまうとのことだ。やっと今度の初夏に、本当のおいしさを味わうことになりそうだ。


ビワは中に大きな種が入っていて、食べるところが少なくがっかりする。ところがつい最近、種無しの品種が日本で作り出されたそうだ。そんなものが手に入ったらぜひ植えたいと思う。しかしこんな大木、もう我が家の庭には植えるところがない。今の木を切ってしまえばよいのだが、そんなことはできそうにない。
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2007年12月24日

トベラ

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防風林のあちこちに赤い斑点がたくさん見える。トベラの実が割れて、毒々しいくらいの真っ赤な種が出てきたのだ。すさまじいほどの色なのに、さらにねっとりした液体にまみれて、つやつやしてとても目立つ。


赤い色には鳥が引きつけられるという。さらにこれは、甘い蜜でもたっぷりかけてあるような感じでおいしそうだ。ところが見かけとは裏腹に、これは全然甘くない。それどころか全く何の味もしなくて、まるで見本の細工物のお菓子のようだ。果たしてこんなものを鳥は食べるのだろうか。


果実というのは種子のまわりの果肉で動物を引き寄せるものだろう。種子はその中に隠してあって、知らずに飲み込まれて糞に混じって撒き散らされる仕組みだ。ところがこれは種子そのものがこんなに目立って、そのままで食べてもらおうというつもりのようだ。


この赤い種の混じった鳥の糞を見たことがある。またこれがぎっしり入った獣の糞もあった。たぶんあれは猿のものだろう。この種を食べてもおいしくもなく、消化も出来ず栄養にもならないが、彼らはこの見かけにうまくだまされてしまったのだろうか。


この話とは別に、このべたべたで動物の体にくっついて運んでもらうのだという説もある。しかしちょっと触ったくらいではくっつかないし、それほど強い粘着力ではないから付いても振れば落ちる。偶然運ばれることはあっても、それが主ではなさそうだ。


ともかく誰かがせっせと種を運んでくれるようで、この島にはトベラは多い。厚いのっぺりした葉で乾燥や潮風に強そうで、海岸近くにぎっしり林になっていたりする。春にびっしり咲く白い花もきれいで良い香りがする。秋にたわわに実る、丸々した明るい黄色の実もかわいらしい。


トベラという語感もなかなかしゃれている。南欧かどこかの言葉かと思ったら、じつはこれは扉が訛ったものだそうだ。枝葉に悪臭があるので、どこかの地方にメザシやヒイラギなどと同じ魔除けとして戸口に飾る習慣があったという。それで「扉の木」といわれたのが語源だと、どの本にも書いてある。しかし扉というのは開き戸のことだろう。昔の日本の民家は引き戸がほとんどであったはずだ。「戸の木」というならともかく、わざわざ扉と付けるはずはないと思うがどうだろうか。いやそれ以前の問題として、この枝葉をちぎってみても、確かに臭いはきついが、とても鬼が逃げ出すほどの悪臭など感じないのはどうしたことだろう。昔の人と我々とは臭いの感覚もかけ離れてしまったのだろうか。
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2007年12月22日

シマニシキソウ

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冬の弱々しい西日に照らされた道をとぼとぼと歩いていたら、足元に変に赤っぽいものがあるのに気付いた。かがんでよく見たらシマニシキソウの花が色付いているのだった。ボールのような花のかたまりは1cmくらいで、対生の葉の付け根ごとに付いてずらっと並んでいる。表面が細かく毛羽立って、暖かみのあるれんが色をさらにしっとりした感じにしている。


この草は道端や畑の隅などにいくらでもある。だいたいすすけたような色で地面にべたっとはりついているから、ちゃんと見ようとも思わなかった。冬の寒さとわびしげな日差しが、一時こんなきれいな演出をしてみせたのだろうか。


ぐっと目を近付けると、ごく小さな白い花びらのようなものが見える。しかしこの一つの花のように見えるものは、トウダイグサ科独特の杯上花序というもので、一つの雌花といくつかの雄花の集まったものだそうだ。そして白い飾りは、その花序の周りの付属体と言われるものなのだった。


花というものは元々は雌しべも雄しべも持っていたが、そのうち片方を捨てるものが出てきて、雌花、雄花ができた。その後で再びそれらがくっついて、あたかも一つの花のようになったのがこの花だろうか。自然の融通無碍ともいえる移り変わりの自由さに改めて驚かされる。


こんなに小さくて地面にはりついていては、アリの餌食になってしまわないかと心配する。ところが何とこの花は、花粉の運び屋としてアリを選んでいたのだった。アリは翅のある多くの昆虫に比べて移動力は小さい。しかし地面を覆うように四方に枝を伸ばせば互いに交差したりして、すぐ近くに別の株の花があるようになる。アリが歩く範囲で、十分花粉が運ばれるというわけだ。


シマニシキソウは熱帯アメリカ原産で近畿地方以南に帰化しているとのことだ。全国に普通にあるコニシキソウに比べてずいぶん大きく、葉もでこぼこしていて見た目はだいぶ違う。他の雑草と競合するような場所では膝の高さくらいに立ち上がっていたりする。そうなるとアリでは花粉を運ぶことができそうにない。ふと一羽の蝶が来ているのが目に入った。もしかしたらこの花はもう一度飛ぶ虫を呼ぶために、これからもっときれいに鮮やかに変身していったりするのかもしれない。
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2007年12月20日

サヤエンドウ

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庭でサヤエンドウがきれいに咲きだした。4cmほどとわりと大きいのでマメ科の花の作りがよく判る。ピンクが旗弁、えんじが翼弁で、この色合せはなかなか魅力的だ。中央に盛り上ってうねっているのは2枚の竜骨弁の合わせ目で、しっかりと合着している。本来ならハナバチの類が蜜を求めてもぐり込もうとすると、竜骨弁が下がって中から雄しべ雌しべが飛び出してくるはずだが、この花では虫の力ぐらいでは動きそうにない。野菜として品種改良が長いから、自花受粉するようになって虫の助けなど必要なくなったためだろう。それなのになぜかこんなきれいな花を咲かせる遺伝子は捨てられなかったようだ。


サヤエンドウは鮮度の低下が速いから、自分で作らないと本当のおいしさは味わえない。大株になり次々に鞘を付けるから、数ヶ月は収穫することが出来る。家庭菜園にはもってこいの作物で、毎年種をまいている。今年はフランス大莢という品種を試しに買ってみたら、思いがけず花も大柄できれいだった。


花はどこにでも生えているカラスノエンドウに似ている。それにキヌサヤなど名前も食感も日本的だから日本の伝統野菜かと思ったら、実際は中東あたりのごく古い栽培植物なのだそうだ。欧米で盛んに品種改良され、日本で広まったのは江戸時代以降とのことだ。


サヤエンドウは普通は春から初夏の野菜と思うが、屋久島では冬から早春に採れる。これだけでなく、このあたりではだいたい野菜は冬ぐらいしか栽培できない。ちょっとでも暖かくなればたちまち虫の餌になってしまう。しかし今年、もうだいぶ冷え込んできたのにあちこち虫食いの葉があるのに気付いた。数cmもある青虫がいくつも見つかった。温暖化のためか、冬でも油断できなくなったようだ。


虫だけでなくモグラもひどい。本やネットで調べたあらゆるモグラ対策をやってみたが効果はなかった。冬の方が動きが活発のようで、このごろは朝晩毎日、作物の浮き上がった根元を押さえ、穴を埋め、庭中のでこぼこをならして回っている。サヤエンドウも根元を掘られて何本も枯れ、何度か作り直している。我が家の庭は、初めは広く菜園を作ったが、虫とモグラに攻められ、もうほとんど野菜作りはあきらめている。その跡には果樹とパイナップルを植えている。サヤエンドウを楽しめるのも今年あたりで終りになるかもしれない。
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2007年12月18日

ハナガサノキ

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空中に酔っ払いの赤ら顔がいくつもかたまって吊り下がっている。ひょうきんな感じだが、どこか恨めしそうでもある。いろいろなことに疲れ、運のないことをかこちながら、愚痴を笑いに紛らせているお人よしたちか。忘年会の季節、都会の居酒屋では安酒に酔った勤め人たちが、こんな顔をくっつけてわいわい騒いでいる。私もまた、昔はそんな中の一人だった。


ハナガサノキはアカネ科の常緑のつる植物で、屋久島あたりから南に分布するそうだ。名前からするとどんなにきれいな花が咲くかと思うが、実際はほんの小さな白いさえない花だ。それでも枝先にかたまって付き、その下に何枚もの葉が重なって笠のようになっているので花笠に見立てられたのだという。この実の目玉模様は花の付いていた跡で、いくつかの花がくっついて一つの実を作るので、こんないびつのおかしな姿になるのだそうだ。


酔っ払いにとってはうれしいことだが、この木は漢方薬で、わりと知られた滋養強壮剤なのだそうだ。使われるのは根だが、根に薬効があるのなら、葉や実にも少しは効き目があってもよさそうに思う。この島にたくさんいる猿は、冬にこの葉や実をよく食べるそうだが、経験的にそんな効き目を知ってのことだろうか。鳥も好むようで、よく突付かれた跡があるのはたぶんメジロの仕業だろう。


初めてこの実を見た時、面白くていっぺんに好きになった。最初は緑のさえない顔色で、だんだん赤く楽しそうになっていく。そんな様子を何度もご機嫌伺いに行った。ある年、道に垂れ下がってきたつるが邪魔になったか、ばっさり切られてしまった。がっかりしたが、少し離れたところに別の株があるのに気付いた。成長が早く、今年はそれがたくさんの実を付けてくれた。見に行くたびに、なんだか昔馴染みに出会ったような気分になる。
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2007年12月16日

ボチョウジ

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年末が近づくと、薄暗い雑木林の中ではセンリョウやマンリョウなどの赤い実が目立つようになる。それらは赤一色だが、そんな中に色とりどりの実を付けているものがある。緑から黄色、そして赤と、移り変っていく色の実がだいたいいつも並んでいる。少し透き通るような感じで、つやつやして小さな飴玉か何かのようだ。


センリョウなどは寒さの中でも青々とした葉と赤い実がきれいで正月の縁起物になっている。この木もきれいさでは負けてはいない。もしこれが東京あたりにでも生えていたら、マンリョウよりも上のジュウマンリョウとかヒャクマンリョウの名が付いたかもしれない。残念ながらこの木は屋久島あたりが北限で、熱帯から亜熱帯にしかないのだそうだ。


アカネ科で初夏にかわいらしい薄緑の星型の花を付ける。しかしとても小さいのでまず気が付かない。ボチョウジというあまりこの木にふさわしくない、いかめしそうな名前のいわれは不明とのことだ。別名をリュウキュウアオキというそうだ。アオキはミズキ科だから全く縁はないが、日陰でいつも青々としてきれいな赤い実をつけるところは似ている。アオキは園芸植物として海外にも広まっているが、気候が許せばこの木も庭木として喜ばれそうだ。


真っ赤なものを齧ってみるとかなり甘く、全く渋みとかえぐいようなところなどない。このような実の中ではおいしい部類だ。しかしなぜか鳥はあまり食べないようで、いつまでも枝に残っている。我が家の庭にも一本ぐらいあったら良いがと思うが、鳥が種蒔きしてくれないため、残念ながら芽生えてこない。
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2007年12月14日

サワガニ

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庭で何かが動いたと思ったらサワガニだった。黒い眼を飛び出させてこちらを睨み、2つの鋏を思いっきり開いて威嚇する。小さな体で精一杯戦おうとするところがなんだかいじらしい。これは鋏が小さいから雌の固体だ。雄は右側の鋏が数倍は大きい。冬になると土の中で越冬するというから、どこかもぐる場所を探していたのかもしれない。


カニは水の中に暮らすもののはずだが、サワガニは水辺からずいぶん離れたところにもいる。花壇の石など動かすとよくその下に隠れているし、道路を歩いているのを見かけたりもする。どこから迷い込んだか家の中でも何度か見つけた。入ったはよいが出られなくなったようで干物になっていた。


サワガニは昔から馴染みだが、それらはきれいな赤い色だった。屋久島では青白いものばかりだ。種類が違うのかなと思ったら、もともとサワガニにはいくつか違う色の系統があるのだそうだ。分布も入り乱れていて、東京などでは赤も青もいるとのことだ。サワガニは酒のつまみになったりするが、青というのはあまり食欲をそそる気がしない。


サワガニは一生を淡水域で過ごす唯一のカニだそうだ。他のカニのように幼生を海に放ったりせず、お腹でしっかり育成する。出てくる時は小指の爪くらいしかないのにちゃんとカニの形になっていて、小さな足をばたつかせて必死に横歩きするところなどとてもかわいい。


日本固有種でほとんど全国に分布し、屋久島が南限とのことだ。それでは南西諸島などにはいないかというと、近縁の種類が島ごとにいるのだそうだ。海を渡れないから、それぞれの島で孤立して独自進化をしたというわけだ。屋久島でも最近、ヤクシマサワガニという新種が別に見つかったそうだ。小さめで赤く、山地に住んでいるという。屋久島の真ん中は高山地帯だから、そこに隔離されて普通のサワガニとは別の道を歩んだのだろう。


子供の頃、よくサワガニを捕まえて遊んだものだった。何度も飼ってみたが、いつもすぐに死んでしまった。今思うと、水のたっぷり入った水槽に入れたのがいけなかったかもしれない。ほとんど陸上にいるようだから、水はちょっとだけにして、石や木切れを並べておけばよかったのだろう。春になったら久しぶりにまた飼ってみようか。いやもうそんなことをしないで、時々庭で出会えばそれで十分な気もする。
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2007年12月12日

アマクサギ

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鮮やかな赤に青黒い実。毒々しいくらいで、しかもこんなにびっしりかたまっているから、ちょっと気味悪いほどだ。派手な色合いにもいろいろあるが、ここまで極端なものは人は作らないだろう。自然は良くも悪くも思い切ったことをするものだ。


この木の花はほぼ純白で、こんな存在感ある実からは想像もできないほど繊細な感じだ。そして甘く魅惑的な匂いがする。こんもり茂った枝の先々に一面に咲くから、近づいただけですばらしい香りに包まれる。ナガサキアゲハツマベニチョウなども周りにたくさん舞っていて、ますます夢見心地にさせてくれる。


花は初夏に咲き出すが、木によってずいぶん差がある。夏から秋、ずっとあちこちで咲き続け、冬近くなってもまだばらばら咲いている。そして実も、夏からずっと目にしているが、まだまだこれから熟すものも結構ある。鳥はよく食べるようで、早く熟した実はとっくになくなっている。真っ赤な萼だけが残っているのもきれいで、紅葉かと見間違えるほどだ。


アマクサギはクサギの変種で、九州南部から南西諸島に分布しているという。見かけはあまり変らないが、葉に毛がなく少してかてかして明るい感じだ。クサギは北海道から沖縄まで全国に分布しているそうだが、不思議なことに屋久島にはアマクサギだけしかないようだ。


我が家の庭には鳥が種を撒き散らすおかげでそこらじゅうから芽生えてくる。成長が早く、うっかりしているとすぐに大きくなって根を張り、そうなると簡単には引き抜けない。取り除こうとして葉がちぎれたりすると、漢方薬か何かのようなかなり異様な臭いがする。初めはこんな香りよい花が何でクサギなのかと思ったが、この葉の臭いをかいで納得したものだった。
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2007年12月10日

ホシホウジャク

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花のまわりを、ぶーんと低い機械的な音を立てて飛ぶ茶色の虫がいる。巨大なスズメバチかと一瞬ひるむが、たいていはこのホウジャクの仲間だ。すごい速さで翅を動かし、空中に静止して蜜を吸う。次の瞬間、まるでテレポーテーションでもしたかのように、どこか向こうの花の上にいる。いつもせわしなく飛び回っていて、普通の虫のように花にとまったりなどすることはない。


寸胴で重量感ある体を見ると、空中にこんなものが浮かんでいるのが不思議な気がする。飛んでいる様子はなんだか恐ろしげだが、蛾の仲間だから口は糸のようなストローだ。これで刺したり噛み付いたりはできない。蜂のような針なども持っていないし毒もない。蝶と同じで花の蜜を吸うだけの無害な虫だ。


それにしても何でこんなにせわしげなのだろう。おそらくこの体で飛ぶにはかなりの燃料がいるはずだ。たくさんの蜜を吸わなければならず、そのため花から花へと飛び回るのだろう。飛べば更に燃料補給が必要になる。いたちごっこでますますせわしなくなっていったのではないか。生きものは一度一つの生き方を選ぶと、どんどんその方向に加速され極端になっていくもののようだ。


ホウジャクは蜂雀の音読みで、ハチのようなスズメガということだそうだ。漢字をひっくり返すとスズメバチになるのが面白い。あるとき花の写真を撮っていて、近くでブーンと音がした。またホウジャクか何かだろうと無視していたら、目の前にオオスズメバチが現れて牙をカチカチさせた。背筋がぞっとして思わずのけぞってしまった。


ホシホウジャクは日本全国に分布しているそうだ。食草がヘクソカズラで、これまたどこにでも絡んでいるありふれたつる草だ。東京の都心でも植え込みや鉢植えの花などによく来ていた。屋久島にももちろんたくさんいる。里の周りでは冬近くになっても、ちょっと暖かければ日差しの中を飛び交っている。


この幼虫はお尻に角を一本生やしたイモムシだが、それもごろごろいる。地中にもぐって蛹になるので、時々地面をのそのそ歩いていて、何度か踏みつけそうになった。もし踏みつぶしたら、かわいそうと思うより、こちらがぞっとしてしまいそうな大きなイモムシだ。
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2007年12月08日

ヘツカリンドウ

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ふた月ほど前からヘツカリンドウが咲き始めていた。あれからずいぶん冷え込んできたが、まだまだ蕾も多く年内くらいは咲き続けそうだ。膝くらいの高さの花茎に4cmくらいの花をぱらぱらと付ける。薄暗い林のへりに濃い赤紫に咲くからほとんど目立たない。しかしよく見ると不思議な色合いで、黒紫のたくさんの斑点が不規則に散っているところなど、骨董の銅製品でも見るようだ。


なぜか崖地に多く、べろんとした大きな葉が一年中、崩れかけた地面に何枚も重なっている。初めてそれを見た時、只者ではないような感じがした。芽生えてしばらくは小さな葉で、それから何年もかかって大きな葉になる。そしてやっと花を咲かせる。さらに大きな株になっていき、花茎を高く伸ばしてたくさんの花をつけるようになる。


蕾が開くとまず葯が破れて花粉が出る。それに合わせて花びらの中ほどの緑の部分から蜜が出てくる。何日かたって花粉がなくなる頃、柱頭が二つに裂けて受粉可能になる。そのころ蜜はあふれるほどに盛り上がっている。しかしなぜこんなところに蜜を出すのだろうか。蜜を作るのもなかなか大変なことだから、普通は効果的に使おうと花の奥などに隠している。この花は気前が良すぎるようで、受粉の助けにならないアリなどが群がってどんどん盗んでいく。


たぶん寒さに強いハエに来てもらうためだろう。こんな冬近くに咲くから、もうハナバチなどいなくて、天気の良い日にハエがあたりを飛ぶくらいだ。彼らは表に出ているものをなめ回すことしかできないから、ご馳走をお皿に盛って用意しているというわけだ。雄しべ雌しべも、その時ちょうどハエの体に触れやすい位置にあるようだ。


花びらは5枚のようだが、じつはリンドウの仲間は合弁花で、元がくっついていて先の方が裂けているのだった。ところでこれが4つに裂けているものが時々ある。それに合わせて雄しべの数も4本になっている。こうした数は花の名前を調べる時の手がかりにもなるようなものだから、こんなに明白に違っていて同じ種でよいのかと気になってしまう。しかし数が違っているだけで他は全く同じようなので、きっと基本数を4にする劣性遺伝子が一つあるのだと思う。


ヘツカリンドウは九州南端から南西諸島に分布し、日本固有種とのことだ。ヘツカの名は、大隈半島の辺塚で見つかったからだそうだ。図鑑で見るとそれは白い花だった。なぜか屋久島にはこの赤紫の花しかない。変種かと思ったら、沖縄ではいろいろな色合いの花が混じっているそうだ。その土地の虫たちの好みにでも合わせているのだろうか。色も形も謎めいた感じがして、花の咲く時期、毎年飽きもせず何度も見に行っている。
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2007年12月06日

ハゼノキ

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窓から見える山肌の一面の暗い緑のあちこちに、赤い模様が目立つようになった。この島を覆う照葉樹林の中に、こんなに紅葉する落葉樹が混じっていたかと驚かされる。きれいな赤はたいていハゼノキだ。麓から中腹くらいまで、多くの大木たちに負けない高さになって、樹冠を鮮やかに彩っている。


ウルシの仲間はこの島では、本土で普通のヤマハゼもヤマウルシも見たことがない。ヌルデはあるそうだが、里の周りの紅葉はだいたいハゼノキばかりだ。芽生えて間もない幼木がまるで草紅葉のようになって、初々しい紅で草むらを彩っていたりもする。


ハゼノキは秋にたくさんの実を付ける。冬になって葉がすっかり落ちても、鈴なりの実がずっと枯れ枝を飾っている。そうして一冬が過ぎ2月も終りになる頃、何が合図か全く判らないが、突然鳥たちがいっせいに群がりだす。大きなものではカラス、アオバト、中ぐらいならヒヨドリ、シロハラ、そしてメジロのような小さな鳥までが争うようにむさぼり食う。そうしてわずか数日で無数にあった実が食べつくされてしまう。


あたりに食べ物はたくさんあるのに、この時だけはハゼの実しか目に入らないようだ。同じウルシ科の実にカシュウナッツやピスタチオなどがあるから、ハゼの実もおいしいのだろうか。昔は木蝋を取るために栽培されていたほど脂肪分が多いそうだから、栄養補給に良いのかもしれない。


屋久島に来て何度もハゼにかぶれた。強い痒みと皮膚のただれに1週間以上も悩まされる。ウルシの類は東京の山などにもよくあったが、かぶれた経験はなかった。屋久島に来て突然腕や首筋が赤く腫れて、初めはかぶれと判らなかった。体質が変ったのか、それともここの木は特別作用が強いのか。気付かずにうっかり触れただけでもてきめんに痒くなる。我が家の庭は鳥たちのおかげで、そこらじゅうからハゼノキが芽生えてくる。今では草取りも恐る恐るになってしまった。
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2007年12月04日

ツマベニチョウ

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屋久島の空には早春から初冬まで、真っ白で羽の先の鮮やかな紅色の目立つ蝶がいつも見られる。他の蝶よりずっと高いところを、速く力強く舞っている。真っ赤なハイビスカスの周りに群れていたりすると、まさに南国という感じがする。


ツマベニチョウはモンシロチョウなどと同じシロチョウの仲間だが、その中で最も白く、最も派手だ。また最も大きく、小柄なアゲハチョウくらいもある。意外なのは翅の裏側で、地味な茶色の濃淡になっている。枯葉に擬態しているのだという。日差しの中で翅を閉じたり開いたりしていると、現れたり消えたり、まるでまばゆい閃光を見るような感じになる。


熱帯系の蝶で、九州南端部が分布の北限だそうだ。近年の温暖化で多くの生きものが北上中だが、この蝶の場合は簡単にはいかない。食草がギョボクというちょっと珍しい木のためだ。それで各地でギョボクを植え、ツマベニチョウを人工繁殖させて放つなどしているそうだ。そうして最近は九州を北上しつつあるとのことだ。動植物の勝手な持ち込みは生態系を乱すとして問題視されているが、蝶が槍玉にあがった例は聞いていない。誰からも喜ばれる美しいものの特権ということだろうか。


冬の初め、屋久島の里のあちこちでポインセチアが鮮やかに色付く。地植えだから見上げるほどの高さになって、大きめの葉がどんな花より見事な赤に輝いている。その葉に囲まれた小さな花にツマベニチョウが来る。いくら強靭な蝶といっても、この季節ではさすがに翅はもうぼろぼろだ。それでも毅然として、真っ赤な絨毯が自分のために敷かれているとでもいうかのように、悠々と翅を広げている。
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2007年12月02日

キツネノマゴ

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道端にとてもきれいな草紅葉があるのに気付いた。何だろうと近寄って見たらキツネノマゴだった。普通、紅葉は字の通り紅色か赤茶色になるのだが、これは全く赤そのものだ。葉脈に沿って緑が残ったものもあって、それもまた流れるような模様が浮き出て美しい。


キツネノマゴは本州でも普通に見られる雑草だが、紅葉になるとは屋久島に来るまで知らなかった。紅葉は寒い方がきれいだから、東京で気が付いていてもよかったはずなのに。改めてあちこち見て回ったら、どうも海岸に近いところで紅葉していることが判った。もしかしたら潮風の影響でもあるのかもしれない。


まわりにはまだ花を付けている花穂もあった。幅が5mmもない小さな花だが、明るい赤紫にくっきりした白い模様があって、よく見るとなかなかきれいだ。花穂は5cmほどでたくさん出ているから、全体が一度に咲いたらかなり見栄えもすると思う。しかしこの花はいつも一つか二つくらいしか咲いていない。そうやって少しずつ、夏から秋遅くまでずいぶん長い間咲き続ける。


草丈は膝ほどもないし、花もこんなに小さいのに、意外に虫がよく集まっている。この色が良いのか、それとも蜜標がくっきりしているためだろうか。かわいらしいシジミチョウがちょこんと上にとまっていたりすると、なんだか絵本の中のようだ。しかしそういうとまり方をされると、雄しべも雌しべも上唇にぴったり収まっているため口吻がそれに触れず、蜜を盗まれてしまうだけになるのだそうだ。


図鑑にはまた面白いことが書いてあった。果実ができ、果皮が乾くとぱちんと裂けて、中の種子を弾き飛ばすのだそうだ。見てみたかったが、ここには枯れた穂かあるいは未熟なものばかりで、ちょうどよいものは見つからなかった。


キツネノマゴという名の由来は、毛むくじゃらな花穂を狐の尻尾に見立てて、しかもあまりにも小さいので子狐を通り越して孫狐になったとのことだ。しかしそれ以外にも、花が狐の顔に似ているからとか、諸説あるようだ。いずれにせよ狐の孫とは、童話の中の何かのようで、この小さな花にはとても似合っていて一度で覚えられる。
posted by 夜泣石 at 21:43| 花草木 | 更新情報をチェックする
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