2007年09月29日

スターフルーツ

(105987)s.jpg


スターフルーツの花がたくさん咲いている。屋久島に移住してすぐ通信販売で苗を取り寄せたものだ。高さ30cmもなかったのが、5年後の今では縦横3mほどのすっかり大きな茂みになっている。去年あたりから花を付け出したが、まだ実はできたことがない。


中国名で五歛子、和名はそのままゴレンシというそうだ。果実の切り口が星型なので英名のスターフルーツの方が通りがよい。都会で売っているものを食べたことがあるが、ほんのりした甘みと癖のある酸味があった。これも木の上で十分熟れたら、それなりにおいしいものなのではないかと期待している。


熱帯アジア原産とのことで、冬の屋久島は限界に近いようでだいぶ葉を落とす。夏の暑さもきつすぎるのか元気をなくす。梅雨時と秋雨の頃が一番好きなようで、花をたくさん付ける。


意外なことに、これはカタバミ科だった。カタバミは日本中、最もはびこっている雑草の一つだ。クローバーのような葉と小さな黄色の花は、敷石の隙間とか花壇や芝生の中とかいたるところで目にする。その仲間が木になっていることに驚く。しかし似ても似つかぬ図体になっても、花は確かにカタバミそっくりだ。色はムラサキカタバミに似るが、大きさはそれよりだいぶ小さい。


カタバミは夜になると花を閉じ、葉も閉じ加減になる。この木も同じ動きをする。葉は明るい緑の羽状複葉でなかなかきれいだ。花も葉も果実も楽しめる優れた庭木だった。大きく茂った足元に小さなカタバミが咲いていて、どうしてこんなに違ってしまったのかと自然のいたずらを見るような気がしたりする。
posted by 夜泣石 at 21:51| 花草木 | 更新情報をチェックする

2007年09月27日

ヌスビトハギ

(105938)s.jpg


この形はかなり気取ったサングラスか、それとも新型のブラジャーだろうか。思わず顔のほころびそうな愛嬌のある造形だ。これも東京近郊の野山にはいくらでもあったものだが、残念なことに屋久島ではめったに見かけない。


ヌスビトハギの名前は、この形が盗人の足跡に似ているからだとあちこちに書いてある。抜き足差し足で歩く時、足の裏の外側だけ使うのでこんな形になるというのだ。やってみると、確かに忍び足では足の外側から静かに着地する。しかしそのままでは不安定で、そっと足裏全体を地に着けていく。結局足跡は普通と変らないと思われる。だからこれは、先にヌスビトハギの名前があって、そこから作られた面白話だと思う。


この実はズボンなどにぺたぺたよくくっつく。表面に、肉眼やルーペくらいでは判らないほどの小さなカギ状の毛が密生しているためだ。知らぬうちにそっと忍び寄ってくっつくので泥棒草という地方名があるそうだ。たぶんそのあたりが名前の由来なのだろう。ただ、泥棒は何かを盗っていくものだが、これは置いていくわけだからちょっとおかしな感じだが。


屋久島に来た時、どの家も留守でも鍵などかけていなのに驚いたものだった。駐車場では車はエンジンをかけっぱなしでおいてあったりする。だいたい何か物を出しておいて無くなったためしがない。開けっぴろげの家に帰ってきたら、留守中誰かが野菜を置いていってくれたりして、物が無くなるどころか増えていたりするくらいだ。


田舎はみんな顔見知りだから、昔は本土でもそうだったと思う。車のおかげで、さっとやって来てさっと逃げられるようになってどこも物騒になった。しかし島なら港や空港という関所がある。おかげで昔の良さが残ったのだろう。


我が家でも移住当初は家も車も鍵などかけなかった。それで別に何事もなかった。しかし何となく落ち着かず、近頃は都会にいた時と同じようにまた鍵をかけるようになってしまった。人の心は悪い方に傾きがちで、一度失われたおおらかさというのは、なかなか取り戻すことはできないようだ。
posted by 夜泣石 at 22:07| 花草木 | 更新情報をチェックする

2007年09月25日

イヌコウジュ

(105937)s.jpg


山道を歩いていたら懐かしい花に出会った。細い花穂がすっと伸び、3mmほどのごく小さな花がぽつぽつと咲いている。見覚えのあるシソ科の花だ。ぐっと目を近づけると、赤紫の色の濃淡がかわいらしく、形も思いがけず変化に富んでいる。


この仲間には似たようなものがたくさんある。どれも小さく目立たない花なので、植物を見始めた頃は図鑑と首っ引きで調べたものだった。中でもイヌコウジュとヒメジソはよく似ていて、別にどうでもよいようなことなのだが、目に入ると気になっていちいち確認したりした。さっそくこの花もよく見たが、葉の形や萼の先が尖っていることなどからイヌコウジュと判断した。


かわいらしさに似合わずかしこまった名前だが、香需(コウジュ)とは漢方薬の一種で、薬草を陰干ししたものだそうだ。日本ではナギナタコウジュがそれに当るという。イヌコウジュは似ているが役に立たないのでイヌが付いたそうだ。しかしこの葉も、もむとミントのような良い香りがして、そんなに蔑むようなものではないと思う。


東京近辺ではどこにでもあったが、屋久島で見たのはこれが初めてだった。南にいくと少なく、沖縄では希少種なのだそうだ。屋久島の山野には南方系の珍しいものもあるが、このように本土と共通のものも多い。若い時は珍しいものばかりを探していたが、近頃は懐かしいものとの出会いがうれしくなってきた。思うところあって知る人もない遠くに移り住んでしまったが、「おお、お前も来ていたのか」と仲間を見つけたような気分になる。
posted by 夜泣石 at 21:00| 花草木 | 更新情報をチェックする

2007年09月23日

トキワカンゾウ

(105922)s.jpg


9月に入っても暑い日が続いているが、それでもこの花が咲き出すと夏が終ったことを意識させられる。東京にいた頃も、郊外では八重のヤブカンゾウやすっきりしたノカンゾウが咲いて、秋を実感したものだった。


これらはみな同じ種で、それぞれ変種扱いされている。トキワカンゾウは鹿児島県から琉球にかけて分布するそうだが、なぜかほとんどの図鑑に載っていない。ノカンゾウによく似ているから、多くの植物学者は特に区別しないのだろうか。しかし花はだいぶ大きく径が12cmほどもあり、色も濃いめでずいぶん鮮やかだ。


なぜか屋久島にはトキワカンゾウだけが分布しているようだ。それも畑の周り、雑木林の境などいたるところにある。どんどん増えるようで、かたまって咲いているととても華やかだ。人家の周りにも多いが、それはきっと移植されたものだろう。園芸品かと思うほどきれいな花だし、密集した細い葉も年中青々として感じが良い。


別名をアキノワスレグサというそうだ。そもそも萱草はワスレグサと呼ばれている。中国の故事に、この花を眺めていると憂いを忘れるという話があるのだそうだ。一日だけ豪華に咲いてすぐ萎れてしまうから、憂いや未練など断ち切るいさぎよさを感じてしまう。咲かず散らず、うじうじと生きながらえている身には、まぶしいような花かもしれない。
posted by 夜泣石 at 21:49| 花草木 | 更新情報をチェックする

2007年09月21日

ゴンズイ

(105926)s.jpg


夏になると雑木林のあちこちに赤い実が目立つようになる。はじめは柔らかなピンクで、だんだん真っ赤になり、今頃になると割れて真っ黒な種が飛び出してくる。赤と黒の毒々しいくらいの極端な色合いだ。


赤く色付くのは鳥を呼び寄せるためだそうだ。鳥はかなり大きめな実でも丸飲みする。知らずに種まで飲み込んで、それは消化されないから糞と一緒にあちこちにばら撒かれる。しかしなぜかこの実は種を隠さないで堂々と表に出している。割れた実の端に危なっかしく付けている。この固い黒い種だけを食べようとする鳥などいるのだろうか。


一度、何が食べに来るか見てみたいものだ。しかしこのあたりにはヒヨドリなどたくさんいるのに、これに来ているのを見たことがない。そしてこの実は黒くしなびてきても、たいてい種を付けたまま、いつまでも木にぶら下がっている。


ゴンズイという名前も意外で面白い。魚に同名のものがいて、よく釣れるのに食べられないので、役立たずの代表のようになっているそうだ。この木もかなりの大木になるのに、材はもろく役に立たないから、その名で呼ばれるようになったというのが定説のようだ。しかし雑木林の彩りとしては、存分に役立っていると思う。
posted by 夜泣石 at 21:47| 花草木 | 更新情報をチェックする

2007年09月19日

ヤマトシジミ

(105914)s.jpg


庭を歩くとたくさんのシジミチョウが足元から舞い上がる。といってもはかなげな小さな蝶だから、ちょっとひらひらしてすぐまた近くの花に止まる。たいていは翅をたたんでいるが、中には閉じたり開いたり体操でもしているようなものもいる。


翅を開くと淡いすみれ色が現れる。このくすんだ紫がシジミの貝殻の内側に似ているのでシジミチョウの名が付いたという。ずっと昔こんな寂しげな色の道を歩いたことがあった。泥んこ道にシジミの殻がいっぱいに撒かれていた。あの頃、シジミは安く買えたし、川口の泥をすくえば自分で獲ることもできた。貧しい暮しをずいぶん支えてくれたのではないか。両側にバラックの立ち並ぶすみれ色の細い道。私の家も貧しかったが、それでもそのあたりは得体の知れない世界の入口のようで、子供心に怖かった。


その貝もこの蝶も、同じヤマトシジミという名で呼ばれている。どちらもたくさんいて、日本を代表する種類だったのだろう。しかし貝は、日本の多くの川が自然の姿を失うと共にほとんど姿を消した。幸いなことに蝶は、どこにでもあるカタバミを食草とするから、都会の真ん中にもたくさんいる。おそらく今の日本で最もありふれた蝶だろう。


翅を閉じると明るい灰色にたくさんの小さな黒い斑点がある。地味でじっとしているから、あまり気付かれもしない。しかし淡い思い出のように、いつでもそっとすぐそばにいる。
posted by 夜泣石 at 21:53| 生きもの | 更新情報をチェックする

2007年09月17日

クマノギク

(105871)s.jpg


海岸から畑や集落の周りまで、いつでもどこでも黄色の野菊が目に付く。中でも多いのがクマノギクで、我が家の庭では厄介な雑草の一つになっている。茎を地面に這わせ、節から次々に根を出して長々と伸びていく。成長は早く、取っても取っても隣の空き地から侵入してくる。ちょっと手を抜くと、瞬く間に庭の一隅を覆いつくしている。


クマノギクの名は紀伊半島の熊野にあったからだそうだが、本州や四国では数は少ないようだ。各地で絶滅危惧種に指定されてもいる。こんなにしぶとい雑草がどういうことかと思ってしまう。亜熱帯の少し湿ったようなところが好きだというから、屋久島には特別合っているようだ。


花期は本来、春から秋だそうだが、このあたりではほぼ一年中咲いている。それでも一番きれいなのは今頃のようだ。といっても2.5cmくらいのごく当たり前の菊の花なので特によく見ることもなかった。それがしばらく降り続いてやっと上がった朝、庭に出て思わず足が止まった。薄日に照らされてみずみずしく咲いている姿は、どこか野性的でとても美しかった。


長雨の間にまたいっそう伸びて通り道をふさいでいる。どんなにきれいでも踏みつけていくしかない。どうせまたいつものように抜き取らなければならないと思いながらも、つい足元に注意して通った。
posted by 夜泣石 at 21:14| 花草木 | 更新情報をチェックする

2007年09月15日

イソヒヨドリ

(105717)s.jpg


書斎で本を読んでいると、すぐ近くでとてもきれいな鳴き声がする。なんだか誰かに呼ばれたような気がして、そっと覗いてみるとイソヒヨドリだった。デッキの手すりに止まって、しきりにさえずっている。こちらをちらっと見て、また空を見上げて鳴き続ける。


このあたりにはたくさんの鳥がいるが、部屋の中に入ってくるほど人懐っこいのはヤマガラとイソヒヨドリだけだ。ヤマガラは間違って入ってしまったようだが、イソヒヨドリの方は自らの意思で入ってくる。部屋の中を物色したり、窓枠に止まって縄張り宣言をしていたりする。ある時、階段を上っていったらばったり顔をあわせてしまった。こちらは驚いたが、鳥はあわてる風もなく首を回してしばしにらめっこをして、それから糞を一つしておもむろに飛び去っていった。


我が家の周りには一年中一羽の雌がいる。色は地味だが鳴き声はすばらしい。高く澄んだ声で心をくすぐるような複雑な節回しで歌う。春や秋に、時々雄もやってくる。頭から背中にかけてとてもきれいな青で、日が当たると鮮やかに輝く。


昔、伊豆の海岸で初めて見た時、瑠璃色と美声で有名なオオルリかと思ってしまった。オオルリはお腹が白いがイソヒヨドリはレンガ色で全く違う。それを長い渡りの旅路で汚れてしまったのだろうと思った。人は一度思い込むと、何かおかしいところがあっても辻褄合せばかり考えるようだ。


ともあれとても愛嬌のある鳥だが、しかし食事風景は見られたものではない。屋根の上にトカゲやバッタ、カマキリなど、ずいぶん大きなものをくわえて来る。足で抑えるというのは苦手らしく、嘴でふり回したり、屋根にたたきつけたりしてちぎって食べる。あたりにはトカゲの白いお腹など、しばらく無残なバラバラ死体が散らかってしまう。昔話によくあるような、美女の正体を見てしまったような気がしてくる。
posted by 夜泣石 at 21:06| 生きもの | 更新情報をチェックする

2007年09月13日

ワルナスビ

(105817)s.jpg


道路沿いに白い花が一面に咲いていた。こんなにはびこるのは帰化植物だろうと車を止めて見たら、やはり北米原産のワルナスビだった。花は2.5cmほどと雑草としては大き目で、ナス科らしい星形をしている。そしてバナナでも並んでいるかのような大きな黄色の葯が目立つ。


普通、葯というものは長い花糸の先にちょんと付いているものだが、これは雄しべがほとんど葯だけになっている。この袋いっぱいに花粉を作ったらかなりの量だろう。花粉は葯の頭の穴から出るのだそうだが、穴は小さいから揺らしたくらいでは出そうにない。


ネットで調べたら面白い観察例があった。顕微鏡で覗いていたら、時々花粉がもぞもぞと動いたそうだ。葯の中に小さな虫が入っていて花粉を押し出していたとのことだ。もしそれが常態なら、葯は虫を入れるために大きくなったのかもしれない。これは花と昆虫の共進化の新しい事例になるのだろうか。


ワルナスビなどという名が付いているのは、全身がとんでもなく刺だらけだからだ。そして地下茎を出してどんどん広がってしまうためだそうだ。引き抜いても地下茎の切れ端からでも再生してしまい、まず駆除などできないという。一面に茂ると鉄条網の束でも置いてあるみたいで通り抜けることもできない。ナス科はだいたい毒を持っていて動物は食べないというのに、いったい何でまたこんな刺まで持ったのだろうか。


ワルナスビの名付け親の植物学者は「花も実もなんら観るに足らないヤクザもの」と書き残しているそうだ。しかし花はそれなりに人目を引く。傍らに1〜2cmほどの緑の実がずらりとぎっしりできていたが、スイカのような縞模様がちょっとかわいい。刺さえなければ私には花も実もなかなか好ましく見えるのだがどうだろうか。
posted by 夜泣石 at 21:27| 花草木 | 更新情報をチェックする

2007年09月11日

イタドリ

(105904)s.jpg


これはまたすばらしくきれいな赤だ。一抱えもある大きな株に、小さな花が無数に咲いている。遠くからでもそのあたりだけがぼっと浮き立って見える。


よく見ると花は白で赤いのは実であった。厳密に言えば果実の周りの翼の部分だ。これは萼の突起で、イシミカワなど他のタデ科と同様、花の咲いた後、萼が伸びてきて果実を包みこむのだそうだ。翼は種を風に運んでもらうためのものだ。しかし風には色は判らないから、赤く色付く必要などないはずだ。単なる偶然なのだろうが、そう思いたくないほどきれいな赤だ。


イタドリは子供の頃から見慣れた雑草だが、普通は赤くならない。小さな黒い果実が白い半透明の薄膜に包まれ、ずらっと並んで風に震えているのも、それはそれできれいだった。赤いものは富士山麓あたりで何回か見ただけだった。ベニイタドリとかメイゲツソウとか特別な名前で呼ばれたりもするそうだ。


イタドリは屋久島が分布の南限だそうだ。しかしまだ一ヶ所しか自生地は見つかっていない。ここは道路工事で切り開かれたところで、その両側の崖の下にたくさん生えている。もしかしたら人為的な分布のような気もする。


東京あたりではハムシやケムシなどがたくさん付いて、葉がぼろぼろになっていたのをよく見た。ここでは虫食いは少ないので、害虫は一緒にやってこなかったのだろう。イタドリは非常に繁殖力が強く、欧米で観賞用に持ち込んだら、あっという間に各地に広がってしまったそうだ。しかたないので害虫も日本から連れていったという。


雌雄異株だそうだからこれは雌株だが、どうも雄しべもしっかりあるように見える。そのためか種はたくさんできるのだが、この島ではほとんど広がっていかない。南限の地では調子が狂うのか花期もはっきりしない。早いものは夏の初めには咲き出し、遅い株はまだこれからだ。おかげでずいぶん長い間楽しませてくれる。
posted by 夜泣石 at 20:58| 花草木 | 更新情報をチェックする

2007年09月09日

イシミカワ

(105886)s.jpg


水色、藍色、さまざまな青の実がいくつも並んでいる。お皿のような丸い葉の上に載って空中に差し出されている。鳥たちにさあ食べてよと言っているみたいだ。口に含むとほんのり甘く、さくさくしてなかなかおいしい。だけどどこにも止まる所がないから鳥たちは苦労しそうだ。


このみずみずしい部分は萼が肥大したものだそうだ。同じタデ科のツルソバがそうだった。中には黒くとても固い3mmくらいの種が入っているが、実はこれが本来の果実(痩果)だった。ところで図鑑などには最初に白く、だんだん濃い青になると書いてあるが、どうも逆のようだ。一週間前に見た時にはどれも濃い藍色だったが、今はほとんどが白みがかった色になっている。


下の方を見ると、細い茎が針金のように伸びて、ところどころに丸い葉(托葉)が刀のつばのように付いている。そこからまた細い柄がすっと伸びて、その先にほとんど正三角形の葉が盾のように直角に付く。針金と丸と三角、とても愉快な造形だ。


しかし見た目の面白さとは裏腹に、これはとんでもない雑草だった。茎にも葉柄にもいたるところ無数の刺が生えている。小さいが鋭く強い。ちょっと触れただけでもしっかり肌に食い込んで痛い。これで周りの草や木に張り付いてどんどん上に伸びていく。引っぱってみたがまるでマジック・テープのようで、べたっとしっかりくっついて離れない。


イシミカワというのは何か由緒のありそうな名前だが、語源は不明だそうだ。日本全国に普通にあるとのことだが、東京にいた時には玉川上水の土手で見ただけだった。屋久島にもあると聞いていたが、なかなか見つからなかった。川辺に生えることが多いが、この島の川は暴れ川で普通の植物は育ちにくい。もう見ることはないかとあきらめていたら、たまたま通りがかりの川の近くの畑のフェンスに絡まっていた。植物を見ていると、時々こういう思いがけない出会いがあって楽しい。
posted by 夜泣石 at 21:31| 花草木 | 更新情報をチェックする

2007年09月07日

夏の終り

(105880)s.jpg


夏が終っていく。どんより淀んでいた空気はすでに青く透明になった。空はどこまでも澄み渡っている。しかしいまだ日差は強烈で、水平線には入道雲が並んでいる。磨き上げられたような海が、空と雲とを映している。


若い頃、夏の終りは物悲しかった。たくさんの夢をとり残したまま、巨大なものが去っていく感じがした。いつしか夢は砕けてしまった。夏のすさまじさにじっと耐えて、じきに平穏な日々の戻ってくるのを待つだけになった。


月日の去っていく速さに驚くようになったのはいつのことか。何もできず一日が終り、あわただしく季節が移り、あせりと悔恨を残して一年が過ぎ去っていった。


今、一日が無事に終っていくことをありがたいと思う。そうして何事もなく、季節の巡る中を静かな日々を重ねていく。ふと昔の記憶がよみがえって心の疼くことがある。そんなことも足早に過ぎる時間が、いずれ消し去ってくれるだろう。
posted by 夜泣石 at 21:45| 屋久島暮らし | 更新情報をチェックする

2007年09月05日

オオムラサキシキブ

(105840)s.jpg


雑木林の陰にムラサキシキブの薄桃色の小さな花の束があった。長く飛び出した雄しべ雌しべ、不釣合いなほど大き目の黄色の葯、小さな花でもなかなか凝った作りをしている。咲いたばかりはとてもきれいだが、じきに葯が茶色く黒っぽくなってきてしまう。初夏の頃たくさん咲いていたが、それからずっと、あちこちで少しづつ咲き続けている。


屋久島にあるのはすべて変種のオオムラサキシキブだそうだ。暖地の海岸近くに生えるという。なよなよした感じのムラサキシキブに比べて、枝は太く、木もずいぶん高くなる。葉は倍くらいに大きく、厚めで少し光沢がある。秋の紫の実も一回り大きく、しかもびっしり付いて、重みで枝先がたわむほどだ。


この紫色があまりにきれいで、ムラサキシキブという優雅な名前が付けられたという。しかし実際に紫式部の書いた小説の主人公は、今の世なら変態扱いされそうな人物だ。政治家とか高級官僚であったようだが、今ならスキャンダルですぐに失脚するだろう。もっとも現代の規律や基準の方が正しいということもないのだが。


この実は少し甘みはあるがおいしいものではない。深みのある紫は飾り物としてはすばらしいが食欲をそそる感じはしない。実際、鳥も食べないようだ。おかげで雑木林の秋をじっくり楽しむことができる。冬が近付き、しなびて黒ずんでくると急に減っていく。鳥たちが食べてばら撒いてくれるのだろう、春になると我が家の庭でもあちこちに芽生えてくる。
posted by 夜泣石 at 21:38| 花草木 | 更新情報をチェックする

2007年09月03日

パイナップル

(105787)s.jpg


パイナップルの花が咲いた。まるでポインセチアのように周りの葉が真っ赤になっていてとても目立つ。大きな松ぼっくりのようだが、花そのものは長さ1cmもない薄紫の四角い筒で、小さな葉の間からにゅっと突き出ている。それが一ヶ月ほどもかけて下の方から順に咲いていく。長い間きれいだから観賞用にもなりそうだ。


春に咲いたものは周りが赤くなどならなかった。どういうわけか夏に咲くとこんな色になる。もともとブラジルなどの熱帯原産だそうだから、これが本来の色なのだろう。この色や形からすると、もしかしたら鳥媒花なのかもしれない。虫が訪れているのは見たことがない。


店で買うパイナップルに小さな種が入っていることが多い。産地には何か媒介者がいるのだろうか。それとも自家受粉をするのだろうか。種は積み重なった花の中で、あっても下の方の何段かだけだから、受粉しなくても果実は肥大するようだ。


果肉の部分はたくさんの花の子房や花托がくっついたものだそうだ。果実というものは本来子房が膨らんだもので、代わりに花托が膨らんだものは偽果だが、イチゴやリンゴのようにおいしいものがある。両方が食べられるパイナップルは豪勢な果物と言えるかもしれない。


それにしてもなぜこんな堅い皮に守られているのだろうか。甘い果実は動物に食べられて種子を散布してもらうためのものだが、これでは食べにくそうだ。もしかしたら強い嘴を持った鳥が突付くのだろうか。種子は小さいし表面近くにあるから、小さめの鳥でも飲み込んでしまうだろう。


我が家では朝食で、いつも果物にヨーグルトをかけて食べている。果物の少ない夏はパイナップルが多い。食べた後、切り取った頭の部分の下の方の葉をむしると、そこにはもう次の根が出始めている。それを土に挿しておけば一本残らず根付く。そうして我が家にはもう何十本もの苗ができてしまった。3年前に挿したものが、今年次々に花を付け出した。


パイナップルは強い。荒地の日照りにびくともしない。雑草に埋もれてもモグラに根元を掘られても青々と育っている。こんな堅い葉をバッタが齧るのには驚いたが、それくらいに負けたりはしない。手入れの行き届かない我が家の庭で、多くの果樹が枯れたり成長不良になっていく中で、パイナップルだけがどんどん増えてきてしまった。
posted by 夜泣石 at 21:18| 花草木 | 更新情報をチェックする

2007年09月01日

ナガサキアゲハ

(105843)s.jpg


黒地に白模様のきれいな蝶が無心に花の蜜を吸っている。そこに真っ黒な暴漢が二人、背後から襲いかかろうとしている。まるで今の世相を映しているかのような情景が、毎日我が家の庭で繰り広げられている。


ナガサキアゲハは南方系の最大級の蝶で、シーボルトが長崎で採集したのでこの名があるという。しかし四国あたりから南ではごくありふれた蝶だそうだ。東京では見たことがなかったが、近年急速に北上して、もう南関東あたりには定着したとのことだ。


屋久島では最も数の多い蝶のようで、我が家の庭では春先から秋遅くまで途切れることなくいつも悠然と舞っている。アゲハの仲間はたいてい後ろの翅に尻尾のような突起があるが、それが無いので見間違えることはない。まただいたいは雄と雌はほぼ同色だが、これはかなり違う。しかも動物界の一般法則とは逆に、きれいな方が雌で真っ黒なのが雄だ。


雌の姿を見つけると雄はすぐに追いかける。通りかかった雄も次々に参加し、一羽の雌の後ろを数羽の雄が行列を作っていることもよくある。6羽も並んでいた時はまるで電車ごっこをしているみたいだった。雄が何羽か、組んずほぐれつ団子状になって争っているようなこともある。といっても何の武器も持たない蝶のことだ、どうやって勝負を決めるのだろうか。なぜか突然、もうやめた、といわんばかりに一羽の雄が離れていく。また次の雄が離れていく。そうやっていつしかまた雌と雄の二羽だけになっている。


どういうわけかたまに雌が雄を追いかけていることがある。雌の方が派手で大きいので、逃げ惑う雄が哀れに見えたりする。これもまた世相を映しているようでなんだかおかしい。
posted by 夜泣石 at 21:46| 生きもの | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。