2007年08月30日

オオカラスウリ

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カラスウリの真っ白でレース編みのような花は子供の頃から何度も見てきた。世の中にこんなきれいなものがあるのかと、いつ見ても感動してしまう。屋久島に来てからもあちこちに見かけるのだが、しかしどうもあまり感心しない。なんだかぼてっとしてだらしなげなのだ。


調べて見たらこれはオオカラスウリだった。幅広い花びらの先の方だけほつれたように糸状になっている。よくモミジカラスウリと間違えられているようだが、葉がこちらの方がよりモミジに似ているからだろう。モミジカラスウリの葉はもっと細く深く切れ込んでいて、花のレースはさらに貧弱のようだ。どちらも暖かい地方にしかなく、東京では見られない。


咲いたばかりならレースもぴんとしていてきれいではないかと思って、夜の9時ごろ見に行った。驚いたことにまだ蕾のままだった。普通、夜の花はこの時刻には開くはずなのだが。11時くらいにまた行ってみたら、だいぶ開いてはいたが、まだレースの部分は丸まっていた。日が変わって午前2時、今度はもう開き終わってレースはすでにほつれた感じで垂れ下がり気味だった。この花は一番きれいな時でもこんな姿なのだろうか。それとも仮眠を取っていたわずかな間に、すばらしい瞬間があったのだろうか。


ともかく何でこんな時刻に咲くのかと思う。夜咲く花は大きく明るく、あるいは強い香りで夜飛ぶ虫を呼び寄せているはずだ。そして我が家の窓に集まる虫を見ると夜のはじめ頃が最も多い。深夜になると飛び回るのをやめて網戸にじっととまっている。そんな時刻、オオカラスウリはたくさん咲くのだが、当然のように周りに虫の飛ぶ姿は無かった。むしろ朝方、まだ花はしっかり開いていてクマバチなどがぶんぶん飛び回っていた。夜の花から朝の花に変わりつつあるのだろうか。


秋になるとたくさんの実ができる。黄色がかった鈍い赤で、これも花と同様、赤く燃えるようなカラスウリほどきれいではない。しかし二回りくらいは大きく見栄えはする。オオカラスウリは全体に大柄でたくましく、10mもあるような大木の上にまで絡み付いている。そんなところを真っ白に彩ったり、赤い玉をたくさんぶら下げたりして、まるで誰かが巨大な飾り付けをしたかのようだ。
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2007年08月28日

スズメノトウガラシ

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庭の隅のちょっと湿ったようなところは、ゴマノハグサ科の小さな草が這うように覆っている。東京でも馴染みだったものも多いが、中に見たこともない白い花があった。図鑑を見てもなかなか判らずにいたが、たまたまネットでスズメノトウガラシという名前を見つけた。淡紅紫色と書いてあるが我が家のものはほぼ純白だ。しかしそれ以外の特徴はぴったりあっている。


この類の花にしてはちょっと大きめで横幅は1cmを超える。上から押しつぶしたようなひしゃげた形で、その狭い隙間から黄色い雄しべを2本、ドジョウひげのように出している。普通このような筒型の花は丸く口を開いているものだが、なんでこの花はわざわざこんなに入口を狭めているのだろう。


これでは虫は入りにくそうだが、小さな蜂が花の隅のつぶしきれなかった隙間からもぐりこむのを見かけた。それより少し大きめの蜂も来たが、正面にとまってちょっと戸惑っていて、そのうち飛び去ってしまった。この花は虫の大きさを選別しているのだろうか。


スズメノトウガラシという名前がかわいらしい。果実の形がトウガラシに似ていて小さいのでこの名が付いたという。この筒の中にはきわめて小さな種が数えきれないほど入っている。たくさん種を詰めようとしているうちにだんだん長くなってしまったのだろうか。


暖かいところの植物で、福島県から南に分布しているという。しかし東京あたりでもまだ珍しいようだ。屋久島ではたくさん咲いている。時々花びらの横の耳のような部分が片方だけ跳ね上がって上を向いているものを見かける。なんだか手を振っているみたいでおかしい。
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2007年08月26日

ヤマガラ

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早朝、書斎にいたら隣の居間がなんだか騒々しい。ツィーツィーツィーといった慌てたような鳴き声がする。何だろうと覗いてみたらヤマガラが入り込んでいた。


我が家の窓にはカーテンは無く、日中は網戸もしていない。そうしたものはどうもうっとうしくてならないからだ。東西南北開けっ放しで、山や海を渡ってきた風がそのまま吹き抜けていく。蝶やトンボ、蜂なども入ってきて、しばし飛び回った後、どこかの窓からまた出て行く。


この朝、前夜の雨で湿っていたので、蚊の多い西側だけ網戸を閉めておいた。ヤマガラはそれで出られなくなってしまったようだ。もしかしたら知らないうちに時々この部屋を通り抜けていて、今日に限り通れなくなっていたので慌てたのかもしれない。


カメラを持ってそっと近づいたが逃げようとしない。くりくりした目をきょろきょろさせて、ちょっと格好を付けて鳴いてくれたりもする。しばらく遊んだ後、網戸を開けてやったらさっと出て行った。近くの木に止まってまたひとしきり鳴いていた。しばらく我が家の周りを行ったり来たりしていたが、だんだん遠ざかっていった。


屋久島にいるのはヤクシマヤマガラという特産の亜種だそうだ。東京で見慣れたものよりもちょっと小柄で、だいぶ赤茶の色が濃いようだ。なによりツツピー、ツツピーというさえずり方が違う。ヤマガラらしくのんびりゆっくり鳴く時もあるが、それよりシジュウカラそっくりに甲高く早口に鳴くことの方が多い。だから移住した当初はシジュウカラが鳴いているのだと思っていた。しかしこの島にはカラ類はヤマガラとヒガラしか棲んでいないのだそうだ。


我が家の周りでは一年中よく見かける。なかなか派手な色合いで、木々の茂みを出たりはいったりしているのですぐ判る。わりと人懐っこい鳥だと聞いていたが、これほどとは思わなかった。今度来たら何か餌をやってみようと思う。もしかしたら手乗りになってくれそうな気がする。
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2007年08月24日

ヤクシマヒメアリドオシラン

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各地で猛暑日が続出する中、屋久島でもひどく暑い日が続いた。といっても夜になると急に涼しくなり、明け方など寒いほどになるのが救いだが。かんかん照りの日中、我が家は冷房などまず入れることはないので、さすがにどこか涼しいところに行きたくなって1000mを超える屋久杉の山を目指した。


平地はからからに乾いていたが、森の中の岩や切り株は分厚いコケのマットに覆われてひんやり湿っていた。それらの上には、季節に応じてさまざまなものが顔を出す。たいがいどれも小さく、知らなければ見落としてしまいそうなものばかりだ。この時期、あまり期待はしなかったが、いつものように見渡すと小さな白い花が目に入った。どうもランのようだ。歩いていくと次から次へと、いたるところに咲いていた。


ヤクシマヒメアリドオシランという、長ったらしい名前のランだった。ヤクシマと名が付くが特産ではなく、この島で最初に見つかったからだという。それでも他では長野、愛媛、沖縄などのごく限られたところで、ごく少数見つかるだけだそうだ。たいがいランは数が少なく宝探しの気分になるが、ここでは今、最もありふれた花になっている。


アリドオシランというのがあるが、それと同属というわけでなくあまり似てもいない。これはハクウンラン属だった。昔、千葉の奥でハクウンランに出会ったことを思い出した。何気なく歩いていた道脇の枯葉の間から、ほとんど終わりかけの米粒のような花を二つ、仲間の一人が見つけた。植物好きの人の中には、いったいどんな眼の構造をしているのかとあきれてしまうような人がいる。ともかくそれが千葉での初めての記録だったそうだ。


小さいけれどもなかなかランらしい顔をしている。マニアには珍重され、盗掘の目にもあっているらしい。しかしここは国立公園の中、観光客も来て人目は多い。そしてこの小さな花に気付く人はほとんどいない。おかげでこんなに栄えていられるのだろう。
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2007年08月22日

アオスジアゲハ

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この緑がかった鮮やかな青は、翡翠か珊瑚礁の海の色を思わせる。じっと見つめてみたいと思うのだが、彼らはなかなか許してくれない。ひらひら舞う蝶のイメージとはおよそかけ離れて、すばやく飛び去っていく。花にとまった時でもせわしなく羽を動かしてじっとしていてくれない。


この青の部分は鱗粉が無く、色ガラスのように透き通っている。それでこんなにも神秘的な感じになるのだろう。大木のこずえあたりをきらきら飛び回っているのはとてもきれいだ。蝶の天敵は鳥だそうだが、この光には目がくらむかもしれない。


アオスジアゲハは東京にも普通にいた。もともとは熱帯系の蝶だが、食草のクスノキが神社や公園、街路樹などに植えられるに従って北上したのだそうだ。都会には鉢や花壇に花もたくさん咲いているし、これほどすばしっこい蝶なら十分に住めるだろう。


クスノキからは防虫剤の樟脳が採れる。植物は虫に食べられないよう、さまざまな毒を合成するようになったのだそうだ。それでもなお虫は食べようとして、解毒力を進化させてきたとのことだ。中でもこんな毒性の強いものを食べられるようになれば、食物を独占できるわけだ。それは良いとして、しかし誰でも食べられそうな毒の弱いものを食べられなくなったのはなぜだろうか。また雄だけの習性だそうだが、時々、汚水や動物の死骸などを吸っているのを見る。よくお腹をこわさないものだとあきれてしまう。


屋久島には自生のクスノキがたくさんある。我が家の庭にはいつもアオスジアゲハなど飛び交っている。たくさんいると中には変わり者もいるのか、一羽が枝先にとまってじっとしていた。近づいてもぴくりともしない。初めてこの蝶のきれいな写真を撮ることができた。
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2007年08月20日

ゴーヤ

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庭でゴーヤの花が咲いていた。花の下の赤ちゃんゴーヤがかわいらしい。キュウリなどウリ科の雌花には、咲いた時からこのように実の形のできているものが多い。ゴーヤの実は奇怪なほどごつごつ、ぶつぶつしているが、それがこんなに小さいとかえって愛嬌になってしまう。考えて見れば、大トカゲとかブルドッグとか、恐ろしげなものの赤ちゃんはちょっと滑稽で、それでよけいにかわいく感じるような気がする。


もう20年近く前、沖縄に行ってキュウリのお化けのような実を初めて見た時、南国ではこんなものを食べるのかと思った。しかし昼食にゴーヤチャンプルを食べて感激した。その苦味が、汗をかいた後のビールのように舌に心地よく、特別おいしく感じられた。


ゴーヤというのは沖縄方言名で、ゴーヤーと語尾を伸ばすのが正しいそうだ。野菜としてはニガウリが本来の名で、植物としてはツルレイシが正式の和名とのことだ。しかし語感の良いゴーヤの名でブームとなり、今では定番の野菜としてどこでも売られているようになっている。いつでも手に入るのは良いが、だんだん苦味が減ってきているようなのが残念だ。


我が家の庭では毎年ゴーヤを育てている。真夏の暑さに負けない野菜はゴーヤとオクラくらいだ。しかしオクラには青虫やカメムシなどがたくさんたかるが、ゴーヤはその苦味のためかほとんど害虫がつかない。


最初の頃、いつ採ればよいか判らず、ぐずぐずしていたら橙色になり、そのうち中から真っ赤なジェリーのようなものに覆われた種が出てきてびっくりした。これは甘くて昔の子供のおやつ代わりになったとのことだが、かなり不気味な感じで食べてみる気にはならなかった。本来は赤と甘みで鳥を呼び寄せ、種を散布してもらうためだそうだ。


庭ではだんだんゴーヤが実らなくなってきたしまった。今年はオクラも元気がない。天候不順のためだろうか。肥料が足りなくて土地がやせてしまったのか。今年はモグラとだいぶ戦ったのだが、彼らはどんどん深くトンネルを掘るようになってしぶとく生き残っている。もしかしたらゴーヤの根元の大事なあたりが穴だらけになっているのかもしれない。最近戦意喪失していたが、この赤ちゃんゴーヤのためにも気を奮い立たせなければならなくなったようだ。
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2007年08月18日

クサトベラ

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海岸に行ったらクサトベラが咲いていた。白く2cmくらいと小さめで目立つ花ではないが、この不思議な形には驚かされる。まるで一つの花を半分に切ったかのようだ。キキョウ科のミゾカクシなど、まれにこのような形の花に出会うが、どれも上半分が切り取られている。マメやランなどでは上側を強調している花が多いのだが。たぶんどれが良いというのでなく、さまざまなやり方があるということなのだろう。


花びらにはフリルが付いていたり、もじゃもじゃ毛が生えていたり、なかなか細工が多い。中でも花の上にぐっと伸びた、しゃれた蛇口かシャワーヘッドのようなものの形が面白い。


これは雌しべだそうだ。虫の背中に付いた花粉を受け取る仕掛けとのことだ。しかしそれでは、その前にどうやって虫に花粉を付けるのだろうか。雄しべは花の奥に隠れていて、もうこの時期には枯れているとのことだ。どうもこれはタニワタリノキと同様に、蕾のうちに花粉を雌しべの先に付けてしまっていると思われる。まずやってきた虫がそれに触れて花粉が持ち去られ、その後に柱頭が開いて、次に来た虫から別の花の花粉を受け取る仕組みなのではないだろうか。


我が家の庭によく似た形で青紫のきれいな花の咲く草がある。放っておいても春から秋にかけてずっと咲き続けて、丈夫でどんどん増え広がっている。名前もわからず花屋で買ってきたものだが、やっとそれがクサトベラの仲間だと判った。オーストラリア産で、その地にはクサトベラ科の植物が多いのだそうだ。


クサトベラという名前だが、草ではなく低木だ。葉の形がトベラに似ていて、色が明るい緑で背が高くならず草のような感じだからということだ。熱帯の植物で、種が海流によって運ばれて、潮風の厳しい砂浜の最前線に芽生える。黒潮の打ち寄せる屋久島の西南端の栗生の海岸が分布の北限だったそうだが、近年の温暖化によって北上中とのことだ。
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2007年08月16日

リュウキュウムラサキ

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朝、庭に出たら見慣れぬ蝶がいた。小型のアゲハチョウくらいの大きさで、鮮やかな青紫に目を奪われる。そのうち舞い降りてじっとしたので、あわててカメラを取ってきた。まず一枚。そっと近づいてもう一枚。さらに一歩近づいてまた一枚。残念ながらそこまでで、気配を感じたのかすばやく逃げられてしまった。


図鑑を見てリュウキュウムラサキだと判った。台湾やもっと南にいて、日本には迷蝶として沖縄あたりには毎年来るそうだ。たまに本州までも来たりするという。南国では夏は繁殖することもあるようだが、沖縄でも冬は越せないそうだ。


半月ほど前の季節外れの台風に飛ばされて来たのだろうか。よくもこんな紙のような体で嵐の中を耐えられるものだと感心する。海に落とされたり、どこかに叩きつけられたりしないのだろうか。暴風にもまれ、羽をちぎられたりすることはないだろうか。ほとんどの蝶は海を渡ったりしないから、毎年来るこの蝶は、きっと特別丈夫で飛ぶ力も強いのだろう。


黒の中の、輝くような青紫に縁取られた白い紋。怪物がこちらを睨んでいるようにも見える。鳥などの捕食者を脅しているのか。下の方に嘴の跡のような破れ目があるが、それでも遠く旅してきたとは思えないほどのきれいさだ。やっとたどり着いた我が家でゆっくりしていけばよいのに、どこまでもさまようつもりか、すっと飛び立ったままどこかに消えてしまった。
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2007年08月14日

イワダレソウ

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もうずいぶん昔、海水浴に行った房総の浜辺でこの花に出会った。じりじりする日差しを避けるかのように岩陰にそっと咲いていた。リボンを付けた小さな女の子がおとなしく砂遊びしているみたいでとてもかわいかった。それからずっと気にしていたが、なかなか再会はかなわなかった。


屋久島に来てからも、どこかにないものかと探していた。そしてついに見つけたのは意外なところだった。そこには岩陰もやわらかな砂もなかった。日差しに焼かれ潮風がまともに吹き付けるこちこちの砂礫地で、草などほとんど生えていない。そんなところに長々と蔓を伸ばして、まるで緑の蛇といわれるクズのようだ。小さ目で厚みのある葉は、このあたりに多いクマノギクやネコノシタなどに似ていて見落としてしまいそうだ。しかしよく見れば、ところどころに見覚えのある赤茶色の花序を棒のように立てて、その先に2mmもない花をいくつか咲かせている。


園芸植物のランタナと同じクマツヅラ科で、それをとことん小さくしたような花だ。あるいはこの固そうな花序は色や感じがバラ科のワレモコウに似ている。改めてネットなどで調べてみたら、とんでもなく丈夫な草として有名なのだった。関東より南の暖地の海岸に生え、強烈な日差しや乾燥に強い。長々と這う茎の節々から根を下ろしてどんどん増え地表を覆いつくす。くずれやすい法面の保護やグランドカバーに利用され、屋上や砂漠の緑化にも使えないか研究されているという。


ひと茎折り取って、我が家の基礎のコンクリートの近くに植えてみた。雑草もほとんど生えないようなところだが、きっとこんなかわいらしい花が一面に咲いてくれることだろう。数年もしたら我が家をぐるっと取り囲んでいるかもしれない。
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2007年08月12日

ウコン

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庭でウコンの花が咲いた。最初に、真っ白にピンクのつま取りのある花びらが何枚か重なって開く。みずみずしい緑の葉陰で、それはとてもきれいでよく目立つ。しかしその中を覗いても雄しべ雌しべはない。下の方は薄い緑の小さな葉が松かさのように重なっていた。次第にその隙間が開いて、小さな黄色いものが出てきた。実はこれが本当の花で、上の方は飾りの葉であった。


何でこんな形になったのだろう。大きな葉の陰で咲くから、上に目立つ看板を付けたのだろうか。それならもっと上の方で咲かせればばよいはずなのに。だいたい白く大きな偽の花におびき寄せられた虫が、下の小さな花に気付くのだろうか。このあたりにはいつも蝶や蜂が飛び交っているが、この花に止まっているのを見たことがない。原産地のインドあたりにはこの形にぴったりの虫がいるのかもしれないが、残念ながら当地では見向きもされず種はできないようだ。しかしそんなことなどお構いなく、ウコンはショウガによく似た根茎を伸ばし、たくさんの雑草を押しのけてどんどん増えていく。


ウコンには多くの種類があるそうだが、この島で目にするのは春ウコン(キョウオウ)、秋ウコン(ウコン)、紫ウコン(ガジュツ)の3つだ。我が家にあるのは秋ウコンで、クルクミンという黄色の色素に富み、他方、春ウコンや紫ウコンにはさまざまな精油成分が多いのだそうだ。クルクミンはカレー粉や衣服の染料などに用いられるとのことだが、今、この島で栽培が盛んなのは生薬として、あるいはサプリメントの原料にするためだ。クルクミンは肝臓の妙薬だそうで、その他の精油成分とあわせて、癌に効くとかアルツハイマーを予防するとかいろいろ言われている。サプリメントとしてなかなか高価に売られているようだ。


我が家でも一度根を掘り出してみたが、そのまま食べておいしいものでなく、調理法もお茶とか何かにする方法も判らず、結局使い道がなかった。考えて見れば、もしウコンで健康増進を図れるならば、何も面倒なことなどしなくてもカレーを食べればよいわけだ。ところでカレーをよく食べる人が長生きだとか、ボケにくいとかいうデータはあるのだろうか。


ともかく花はきれいだし、みずみずしく茂った葉も見ていて気持ちが良い。なによりも熱帯的な趣がある。雑草化してしまっているが、庭の隅に増え広がるままにしておこうと思う。
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2007年08月10日

ヤマモガシ

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夏の間は暑いだけでなく、蚊や、しつこく顔の周りにまとわり付く小さなハエなどもたくさんいて、なかなか散歩になど出る気がしない。それにこの時期、あまりめぼしいものも見当たりそうにない。しかしここ何日も不順な天気が続いたので、気晴らしと運動にとちょっと出て見たら、とても奇妙な花と出会ってしまった。


こんもり茂った大木から15cmほどの花の棒がたくさん垂れ下がっている。棒の周りをぐるっとつんつん毛のようなものが飛び出しているので、まるで丸型のヘヤーブラシのようだ。よく見ると薄い黄色の小さな花がびっしり棒についているのだった。細いリボンのような花びらがくるくるに巻いていて、その真ん中から雌しべがまっすぐ飛び出している。棒の先の方はまだ蕾だったが、それはまるでマッチ棒のようだ。


何の仲間かまったく見当も付かなかったが、後で調べてヤマモガシだと判った。日本にはこの科はこれ一種しかなく、近い種類もないそうだ。花びらだと思ったものは実は萼で、雄しべはそれと合体していて、くるくる巻きだす手前で葯だけがピンと爪のように内側に飛び出している。


ヤマモガシ科は南アフリカやオーストラリアで繁栄していて、植物園などで目にする派手で奇妙な花のプロテアとかバンクシアなどがこの仲間だった。なによりゴンドワナ植物として、その分布から地球の歴史が読み取れる植物なのだった。


数億年も昔、地球上の陸地はパンゲアという一つの超大陸にまとまっていた。それが南北に分裂し、北半球はローラシア、南半球はゴンドワナという二つの大陸になった。そのゴンドワナで進化発展した典型的な植物の一つがヤマモガシの仲間だった。その後、ゴンドワナ大陸はアフリカ、インド、オーストラリア、南アメリカなどに分裂した。そうして今では遠く離れたそれらの大陸に、同じ起源の植物が分布することになった。


日本にはずっと後になって、東南アジア経由でこの一種だけがやってきたのだそうだ。東海地方あたりにまであるとのことだが、かなり珍しい木のようだ。屋久島では、あらためて見回すと畑の周りなどあちこちにあった。これほどのいわれのある木が、みかん畑の防風林として植えられているのを見ると、なんとももったいなく申し訳ないような気がしてくる。しかしそんな思惑など関係なく、見上げるほどの大木となって人知れずたくさんの花を咲かせている。
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2007年08月08日

ノリウツギ

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夏の盛りの山道を行くと、あちこちに白い花が目に付く。たいていアジサイの仲間だが、中でも一番多く、真っ白できれいなのがノリウツギだ。数多くの枝先のそれぞれから槍の穂先のように花の塊を突き出している。装飾花の数は少ないが、大きめでよく目立つ。そのためかたくさんの蜂や蝶が群がっていたりする。


道の両側などには多いが林の中には見られないので、攪乱地に入り込むパイオニア植物になっているようだ。他のアジサイの仲間のようにこんもり茂らないで、すらっとかなり高い木になる。花もアジサイらしくなく、あまり横に広がらないで穂状に上に伸びる。どこか涼しげで、なかなか格好の良い木だと思う。


ノリウツギは全国にあるありふれた花で、東京で暮らしていた頃もよく見かけた。屋久島にもたくさんあるが、なぜかここが南限だそうだ。標高300mくらいから上にしかないので、暑さが苦手なのかもしれない。南の島といっても高い山のある屋久島だからこそ、こうした懐かしい花にも出会うことができるのだろう。
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2007年08月06日

カブトムシ

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我が家に来た島産のカブトムシの雄と雌


昨日屋久島一のお祭りの花火大会があった。人口14000人ほどの島の規模からでは考えられないほどの豪華さだった。陸上だけでなく海上花火もあって、とても変化に富んで見ごたえがある。しかも場所取りや人ごみかき分ける必要などなく、ゆうゆうと火の粉のかかりそうなところでその迫力を満喫できる。まさか生涯最高の花火見物が島でできようとは予想もしなかった。それで移住して以来、毎年欠かさず見に行っている。


一連の花火の終り頃、海上花火の作業船が突然火に包まれた。燃え上がる炎がなかなか消えないので、見ていた我々もはらはらしていたが、やはり4人の怪我人が出て一人は重傷だそうだ。怪我をされた方にはお気の毒だが、これに懲りて来年海上花火は中止ということにならなければよいがと思う。


島でも年々都会並みに、余計なお世話だと思われることが増えてきている。毎年海際で見ていたのだが、今年は海から5mほどが危険ということで立ち入り禁止になっていた。我々の目の前の禁止区域の中で、警備の人が堂々と見物しながら携帯電話で写真を撮ったりしていたのが目障りだった。


お祭りの夜店では都会と同じようにカゴに入れられたカブトムシが売られていた。この島で買う人などいるのだろうかと思ってしまう。この時期、我が家には毎晩のようにカブトムシがやってくる。大きな羽音で飛び回り、窓にぶつかって落ちてアルミサッシを耳障りにキイキイこすったりしている。


島のカブトは小さい。体長は4cmほど、角は1cmほどしかない。島嶼効果と言われていて、島の乏しい資源の中で生き抜くには体が小さい方が有利なのだそうだ。しかし大型の哺乳類ならともかく、小さな虫にとってはこの島でも十分に広いのではないだろうか。森林資源など、どこにも負けないくらい多いだろう。もしかしたら環境の変化で厳しい一時期があり、その時大型になる遺伝子が淘汰されてしまったのかもしれない。


夜店のカブトムシが逃げ出したのか、本土の大きな種類もいつのまにか住みついてしまっているそうだ。我が家に来るカブトの何割かはびっくりするほど大きい。大型になる遺伝子が、恵まれた島の環境で思いっきり発現してしまったような感じだ。しかも都会で見るカブトの鈍重な様子からは想像もつかないほどの元気さだ。巨体が空を舞い、大きな音を立てて窓ガラスにぶつかる。捕まえると暴れて、痛くてあまり持っていられないほどだ。我が家の周りでは今のところ大型も小型も、それぞれの居場所が十分あって、共に繁栄しているようだ。
posted by 夜泣石 at 21:36| 生きもの | 更新情報をチェックする

2007年08月04日

タニワタリノキ

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真夏の暑さがもっとも厳しくなる頃、涼しい谷川の上を覆って、小さめなポンポンのような花が一面に咲く。ちらちらする木漏れ日と薄いクリーム色の花で、木陰は柔らかな光に包まれたようだ。水面を風が渡ると、お祭りの夜店のニッケ菓子のような香りが漂う。大きなアゲハチョウが何羽もゆったりと舞い、ここにいるだけで夢見心地になってくる。


花は見事にまん丸になっている。よく見るとこれは花の集まりで、小花がびっしり細い枝先に固まって咲いているのだった。小花はとても小さく長さ5mmくらいの筒型で、先端が5つに分かれて広がっているが、その差し渡しも2、3mmだ。そこから一本、雌しべが長く突き出している。それらが集まると全体としては丸いブラシのように見えるのだ。


普通ブラシ型の花は雄しべも雌しべも飛び出していて、花粉の受け渡しがしやすいから、さまざまな昆虫が受粉者になっているとのことだ。しかしこの花では雌しべだけが出ていて、雄しべは筒の中に隠れている。これでは花粉を受け取るのはたやすいが、どうやって渡すことができるのだろうか。


不思議に思っていたら、アカネ科には蕾のうちに雄しべが花柱の先に花粉を付けてしまう花があると教えられた。さっそく咲いたばかりの花を見たら、確かに長く突き出た雌しべの先の丸く膨らんだ部分が花粉まみれになっていた。これなら足の長いアゲハチョウのお腹にでも花粉を付けられる。


この時、同花受粉を避けるために、いまだ柱頭は開いていないのだそうだ。咲いて数日たったと思われる古い花を見たら、頭の上は少し平らになって色も茶色くなっていた。きっとこれが柱頭の開いた状態で、もしかしたら花粉を受け取った後かもしれない。


ところで雌しべの長さは10mmくらいだが、蕾は5mmくらいしかない。どうやってこの中に入っていたのだろうか。蕾を開けてみると、別に折りたたまれたりねじれたりはしていなくて、蕾の長さの雌しべがぴんと収まっている。どうも蕾が開くのと同時に、雌しべが倍ほどに伸びるようだ。どこを見ても中途半端な長さの雌しべはないから、一気に伸びるのだろう。いったいどういう仕組みでそんなことができるのだろうか。


タニワタリノキは九州南部から南西諸島にかけて分布しているそうだ。かなり珍しい木ということだが、屋久島にはたくさんある。我が家の庭の川沿いの林にはいろいろな木があるが、中ではこれが一番多い。タブノキなどと競い合ってかなりの大木にもなっている。葉は流線型で枝もしなやかなので渓流沿い植物なのかもしれない。


花は数日で黄色くなってくる。一斉に咲くからきれいな期間は短い。毎年、咲くのを楽しみにしているので、この花が咲き終わると、もう夏もじきに終るような気がしてしまう。
posted by 夜泣石 at 22:31| 花草木 | 更新情報をチェックする

2007年08月02日

ヤクシマバライチゴ

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先日の季節外れの台風4号の爪痕がまだあちこち残っているというのに、続けて5号がやってきた。記憶が新しいのでしっかり台風対策をしたが、東にだいぶ離れてくれたおかげで風も雨もそれほどでもなかった。いつものように通り過ぎた後の吹き返しが長々と続いたが。ともかくこの2週間ほど一滴も降らず庭など乾ききっていたので、ちょうど良い恵みの雨になった。


好天が続いている間に何度か遠出をした。標高1000mほどの高地では茂みのあちこちに木苺が咲いていた。春早く平地でたくさん咲くオオバライチゴとよく似た花で、2cmくらいと半分ほどの大きさだ。それでも木の高さはくるぶしくらいしかないから、不釣合いに大きく見える。


驚いたのは、この細い茎や葉軸に鋭く鉤型に曲がった刺がしっかり並んでいたことだ。オオバライチゴもひどい刺だが、こちらはこんなに小さいのにそれ以上にひどい。うっかり近づいただけでも刺さってきてなかなか外れない。高地の厳しい環境に耐えるため、周りのものにしっかり絡み付こうというのだろうか。


この小さな木はよくヤクシマヒメバライチゴと書かれているが、どうもヒメは余分で、ヤクシマバライチゴが正しいと思われる。バライチゴとヒメバライチゴは別種で、形を比べてみるとこれはバライチゴの方に似ていて、その矮小化したものと見られるからだ。これも多くの矮小種と同様、屋久島固有の変種とのことだ。


果実は秋に熟し、わりとおいしいのだそうだ。面白いのは、なぜか萼から少し浮いたところにできるそうで、確かに花びらの散った痕もそんな形になっている。やがて来るたくさんの花の咲き出す季節、もう一つ別の楽しみができたようだ。
posted by 夜泣石 at 20:43| 花草木 | 更新情報をチェックする
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