2007年07月31日

ヤクシマショウマ

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これはまたとてもきれいな花だ。小さな花火を時間を止めて見ているかのようだ。山の清流の岩の隙間からそっと飛び出していた。ここに来る途中の岩の割れ目にも、高さが50cmほどもありそうな白花が群生していた。これはたった一株だけで足首ほどの高さだが、わずかにピンクを帯びた1cmほどの花をいくつか、けなげな感じに咲かせている。


屋久島固有のヤクシマショウマで、本州などにあるアカショウマの変種だそうだ。こんなにきれいだから盆栽に仕立てられたり、近縁種と交配されてさまざまな園芸品種が作り出されているとのことだ。普通花屋を飾るものは色鮮やかで華やかなものばかりだが、このような儚げな花を愛する人も多いのだろうか。


ショウマと名付く花はいろいろある。もともとはサラシナショウマのことで、小さな花を穂状にたくさん咲かせるものをショウマの仲間とみなしたようだ。しかし実際には他人の空似も多く、サラシナショウマはキンポウゲ科だが、ヤクシマショウマはユキノシタ科だ。


東京の高尾山の奥で毎年見たサラシナショウマの大きな株を思い出す。明るい林の中で、子供の背丈ほどもある真っ白な花の柱が豪華だった。重たそうなカナブンや大きなアゲハチョウなどが群がって、ますます華やかさを盛り上げていた。この淡くか細い花にはどんな虫が来るのだろうか。小さく透き通った妖精のような虫であってほしいと思う。
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2007年07月29日

ヤクシマハシカグサ

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これはまた驚くほど小さな花だ。幅も長さもせいぜい2、3mmくらいだ。1000mほどの標高の山道沿いに咲いていた。葉も小さめで茎は地面を這っているから、普通に歩いていたらまず気が付かない。


こういう矮小種には屋久島の名が付くものが多いが、やはりこれもヤクシマハシカグサだった。普通のハシカグサの変種で屋久島固有とのことだ。ハシカグサは東京では高尾山の麓の湿った日陰などでよく見かけた。同じように小さな花だったが葉はずっと大きく、茎を次々に伸ばしあたり一面を覆って、花もたくさんつけていた。


ヤクシマハシカグサはそっと遠慮がちに、木陰でぽつんぽつんと咲いている。どんな虫がこれを見つけてやってくるのだろうか。よほど小さな虫だろうが、彼らにとっては次の花は遠く離れていて、見つけるのも行くのも大変なはずだ。蜜もごくわずかしかないだろうに、わざわざそれを求めて花粉を運んだりするのだろうか。


なぜか普通のハシカグサをこの島ではまだ見ていない。我が家の庭のハシカグサの出そうなところは、よく似た花の、しかしとんでもなく発育旺盛な得体の知れない雑草がはびこってしまっている。ハシカグサの分布は本州から沖縄とあるからこの島にあってもおかしくないはずだが。それとも植物の生育に適したこの地では旺盛な他種が幅を利かせすぎて、山の上に逃げ込んだ矮小種だけが生き残っているのだろうか。
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2007年07月27日

コケトウバナ

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今年の屋久島は梅雨が長く続き、それが終わらないうちに大型の台風がやってきたりして、植物撮影には欲求不満になる日々が続いた。台風の後もぐずぐずしていたが、今週になってどうやら安定したさわやかな夏になってきた。日中の日差しは強烈だが心地よい海風が吹き、夜は山風が吹き降ろしてひんやりするほど冷えてくる。


ぐずぐずしていた私もやっとやる気が出て、機材を持って山の上に車を走らせた。しかしお目当ての花はもう終わってしまっていた。花は時期を逃すと、また一年を気長に待つしかない。やれやれと思っている時、ふと足元に小さな白い花がたくさん咲いているのに気付いた。


コケトウバナだった。今まではほんの数株くらいが崖にへばりついているものしか見たことがなかった。しかしここでは道路の舗装の隙間や側溝のまわりなど、そこらじゅうにたくさん咲いていた。


花はせいぜい5mmくらい、草丈も5cmくらいしかない。コケと一緒に生えて、緑の絨毯の上の微小な点描のようでなかなかきれいだ。ぐっと目を近づけると、花びらは丸々したかわいらしい形をしている。雄しべと雌しべが目と鼻みたいで、なにやら怪しげな顔のようにも見えてくる。


西日本の山中に分布するヤマトウバナの変種で屋久島固有とのことだ。しかしある本には奈良県の春日山にも産すると書いてある。また兵庫県の淡路島で見つかったとの記録もあった。ずいぶん不思議な分布をするものだと思う。


昔、西日本一帯に分布していたのが気候の変動などで絶滅し、わずかに限られた地域に生き残ったのだろうか。それにしてはその二ヶ所は古代から人の手が盛んに入った地域で、手付かずの自然などはなさそうなところだ。


おそらく外見上はそっくりだが、別々に発生したものではないだろうか。あるいはある特定の遺伝子異常による変異で、各地で少しづつ発生しているのかもしれない。一般にはあまり適応的でなく消えてしまうが、たまたまある特殊な環境においては生き延びるのではないだろうか。ともかく屋久島の山にはぴったり合っているのだろう、どこにでもあるような他のトウバナの仲間は全く見当らず、これだけが一面にはびこっている。
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2007年07月25日

サクララン

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この花に初めて出会ったのは、昔、奄美大島の山中を歩いていた時だった。単調な照葉樹林がずっと続く中で、突然現れた妖しいほど美しい花に思わず息を飲む思いがした。それ以降、沖縄や西表島などでも見かけることはあったが、数は少ないし、いつも手の届かないところにあったりして、ずっと幻の花になっていた。


屋久島に移住して、さっそくこの花を探した。聞いてみると「そんなものそこらじゅうにあるよ」と誰もが言う。最初はまさかと思ったが、目が慣れてくると言葉通りであることが判った。島中の海岸沿いから低山にかけて、幅広で分厚く堅い葉を付けた蔓が、いたるところの木や岩に絡み付いていた。


多肉なので乾燥地にあるかと思うと、そうでなく沢沿いなど湿ったところに多い。着生生活なので水分は不安定で、一時的な乾燥には耐えても普段は湿潤でなければ成長できないようだ。大量の雨水で潤う屋久島の林内はぴったりの環境なのだろう。


花は一つが1.5cmほどだが、それがぎっしり半球状に集まって咲くから見事だ。周りはしっとりとした白で、真ん中が濃いピンクなのもあでやかな感じがする。どこも厚めで固く、蝋細工か何かの作り物のようだ。そしてかすかな芳香もある。


花を一つじっと見て、その不思議な形に驚く。白い花びらは細かな毛が密生していてビロードのようになっていた。そしてもう一段、獣の爪か牙のような半透明の花びらがあるのだ。花の中にまた花があるような感じだ。実はこれはガガイモ科特有の構造で、副花冠といって雄しべが二つに分かれて片方が花びらのようになったものだそうだ。


雄しべ雌しべはくっついてずい柱というものになっているのだそうだ。花粉は固まって花粉塊となり、それが二つづつ捕捉体というものにくっついているとのことだ。しかしこうしたことはもう私の目では見分けることができない。


これだけの花が咲いても、訪れる虫をほとんど見ないのが不思議だ。そして種ができないまま枯れてしまった花柄ばかり目に付く。それでもつい先日、初めて果実を一つ見つけることができた。やはりガガイモ科らしい獣の角のような格好をしていた。きっと白く長い毛を生やした黒い種がたくさん出てくることだろう。また時々見回りをして、なんとかそれを見届けたいと思う。
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2007年07月23日

リンゴツバキ

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ちょっと傷は付いているものの、これを見たら誰もが葉陰のリンゴだと思うだろう。大きなものは10cm以上もあり、日の当ったところはきれいに赤く色付いて、国光や紅玉といった昔なつかしいリンゴにそっくりだ。


似ても似つかぬようだが、これはツバキの実なのだ。この木は本州などに広く分布するヤブツバキの変種で、リンゴツバキとか、屋久島に多いのでヤクシマツバキと呼ばれている。花や葉はヤブツバキと大差ないが、果実だけがこんなに違っている。おいしそうに見えるが実際はとても堅い。割ってみると中に入っている種子はヤブツバキと同じ大きさだが、その周りの果肉が分厚く堅く、ただ単に皮が厚くなっただけといった感じだ。


ツバキにはツバキシギゾウムシという害虫がいる。ゾウムシの仲間はその名の通り象の鼻のように長くなった口吻を持っている。それを錐のように使って果実に穴を開け、奥にある種に卵を産み付ける。種は栄養豊富なので、幼虫の餌にもってこいなのだ。ツバキの方は種を食べられたら子孫を残せなくなってしまうから、皮を厚くしてゾウムシの口吻が種まで届かなくしようとする。しかしそうするとゾウムシの方も、負けじと口吻を長くして反撃する。


日本列島を南に行くにしたがって、ツバキの実の皮がだんだん厚くなり、またゾウムシの口吻が長くなっているのだそうだ。南の方がツバキの成長が良く、皮が厚くなったので、ゾウムシも口吻を伸ばさざるを得なかったのか。あるいはゾウムシが先に大型化し、対抗上ツバキが皮を厚くしたのか。今となっては軍拡競争のきっかけは判りそうもない。


ともかく屋久島まで南下したら、こんなに皮が厚くなって大きな実になってしまった。それでも穴の開いた実が落ちていたりするので、とてつもなく鼻の長いゾウムシがいるはずだと言われていた。そうしてつい最近になって予想通りの新種が発見されたそうだ。


リンゴツバキは屋久島の里から山にかけてたくさんある。対するゾウムシはほとんど見かけない。今のところこの競争はツバキ側の勝利といったところなのかもしれない。
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2007年07月21日

パパイヤ

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これはまたずいぶん不思議な感じの花だ。何でこの花びらは、こんなにくるくる巻いているのだろう。それらの真ん中から出ている雌しべも、なんだか別の生きものみたいで、お化けでも手を出しておいでおいでをしているかのようだ。


パパイヤはよく知られた熱帯果樹だが、花は類似のものが思い当たらないほど変っている。雌雄別株でこれは雌花の方だ。雄花はずっと細くすっきりしている。なぜか我が家のこの雌株は単独で立派な実をつけ、中に黒い種もたくさん入っている。近くに雄株はないし、このおかしな花に虫が訪れているのを見たこともないのだが。


パパイヤは屋久島への移住に当って、まず庭に植えたかった果樹だった。しかし乾燥に弱く、苗の下をモグラがトンネルを掘るので次々に枯れてしまった。何度も苗を買ってきて、いろいろな場所で試して、やっと花が咲くまで大きくなったら雄株ばかりだった。そのうち種をまけば簡単に芽生えることが判って、果実を買ってきてたくさんの苗を作った。そんな中からようやく1本だけ待望の果実をつけてくれるものが現れた。


ところが苦労した割には、食べてみるとおいしくない。それにかなりの悪臭がする。がっかりしたがたくさん実るので、いろいろ試しているうちに食べごろが判ってきた。完熟一歩手前で収穫し、2日ほど寝かしてから食べる。数日遅れただけで臭いがきつくなるし、早すぎると甘みが少ない。ちょうど良いものはとろっと甘く、レモンをかけて食べるととてもおいしい。なぜかお腹にたまらないので、大きな実を切ってもいっぺんに食べてしまう。


前年に実ったものが冬を越して春から夏にかけてだんだん色づく。この春は毎日のように食べられた。初夏になって今年の花がまた咲き出した。早く咲いたものはこの秋には食べられるだろう。青い未熟な果実は野菜になるという。試しに千切りしてみたが、だいぶ堅く味も素っ気もないのでそれっきりになってしまった。しかしいつまでたっても青いままの実もあるので、いずれまたいろいろ試してみようと思う。
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2007年07月19日

メヒルギ

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メヒルギが咲いていた。川と海との境の塩水に生い茂るマングローブの仲間だ。厚く堅い葉、ぐにゃぐにゃと折れ曲がった幹が何本も絡み合ったような樹形、親木に付いたまま発芽する種子。過酷な環境に耐えるためにどこもかも特殊化したような木だが、花は思いがけなく繊細できれいだ。花びらのように見えるものは萼で、レース飾りのような細い糸のようなものが花びらなのだそうだ。かすかに良い香りも漂っている。


メヒルギは、昔は屋久島の栗生川の河口に大きな群落になっていたそうだ。そこに港を作ったために、水の流れが変りほとんど全滅してしまったとのことだ。今では保護地を作り何とか増やそうと努力しているが、はかばかしくないように見える。久しぶりに行ってみたが、ますます貧弱になってきたような感じがした。


屋久島では海沿いに点在する集落ごとに港がある。昔、山岳だらけのこの島では交通の便は船しかなかったそうだ。また魚も豊富で漁業も盛んだった。港は当時の人々の暮らしの生命線であったのだろう。しかし今では島一周の道路があるし、魚は減って漁業はすっかり衰退してしまった。巨大なコンクリートの壁の中に、レジャーボートが1、2隻だけといった港もある。漁師がいても、港を維持管理できるほどの漁獲のあるところはほとんどないだろう。


南の島の台風は強烈だから、岸壁などよく壊れる。その補修に、乏しい町の予算から億を越える金額が毎年支出されている。我々みんなのお金が、なぜごく一部の人だけのために使われてしまうのか納得できない。


魚のいない海に港だけがあってもしかたがない。生きものたちのあふれる美しい自然の回復をすべてに優先させなければならない。とりわけマングローブ林は、たくさんの海の生きものたちの巨大な揺りかごとして貴重なものだ。河口を災害から守る機能も大きい。この膨大なコンクリートの塊を取り除いてマングローブを復活させる大プロジェクトを望みたい。それが無駄な出費を抑えながら、漁業や観光を振興させ、島の暮らしを豊かにする最善の道だと思う。
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2007年07月17日

ハマナタマメ

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海辺の岩だらけの砂浜に、鮮やかなピンクの花がたくさん咲いていた。夏の強烈な日差しにも、萎れることも色あせることもなく、あでやかに輝やいている。葉はとても大きく、しっかりした蔓がそこらじゅうを這い回っている。


この花の形はちょっと変わっている。普通マメ科の花は、この烏帽子のように立ち上がった舟弁と呼ばれる部分が横に突き出て、伏せた軍配のような旗弁と呼ばれる部分が縦になっているはずだ。つまりこれは90度回転している格好だ。実際、この花の房が重すぎて横倒しになってしまっているのだそうだ。


ところでマメ科の花の形には意味がある。旗弁が看板となって虫を呼び寄せ、虫が舟弁に止まると、その重みで中から雄しべ雌しべが飛び出してきて花粉の受け渡しが行われるのだ。それがこの花だと、看板は倒れてしまっているし虫の重さは伝わらない。花のからくりが働かないことになる。送受粉のために花はあるのなら、なぜ重みに耐えるように花穂を丈夫に作らなかったのか。それが無理ならなぜ花の向きを変えるように進化しなかったのだろうか。


しかしそんな心配をよそに、この花は大きな豆の鞘をしっかりと実らせる。その鞘の形と重量感が鉈のようで、浜に生えるからハマナタマメと名づけられたそうだ。大きく丈夫な鞘は、波に運んでもらって分布を広げるためだという。またよく似た豆にナタマメがあり、それは食用だが、ハマナタマメの方は毒性があるのか、食べるとお腹をこわすそうだ。


数日前、屋久島は大型の台風に襲われ、一日中暴風雨が吹き荒れた。ハマナタマメもすっかり波をかぶってしまった。しかし大きな流木や石が散乱する中で、荒波に流されずにしっかり地面を掴んでいた。さすがに花はなくなったが、すぐに新しいつぼみが膨らんでまた咲きだした。可憐なピンクからは想像もできないほど、強靭な生命力を持っているのだった。
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2007年07月15日

台風襲来

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書斎から見た台風一過のモッチョム岳


昨日、屋久島は台風4号に襲われ、朝から夕方まで暴風雨が吹き荒れた。台風が来たのは久しぶりのことだ。大型ですぐ近くを通ったので暴風雨圏に入っていた時間は長かった。強い風がどんと家にぶつかって、ぐらぐら揺れたりした。


雨も激しく、我が家の川はすっかり滝と化して、ごろごろと恐ろしげな音を立てていた。しかし屋久島は傾斜が急だから、水は大急ぎで海に流れていってしまい、このあたりでは氾濫する恐れはない。


それなりの暴風雨ではあったが、台風の規模から予想されるほどひどいものではなかった。我が家の真後ろに屏風のようにモッチョム岳がそびえていて風を遮ってくれるためだ。特に台風が一番近づく時期は、風がまっすぐ山に向かって吹くのでその効果は大きい。


むしろ台風が離れてからの吹き返しの方が風は強かったりする。風向きが変わって山に当らず、山に平行して吹くようになるからだろう。しかもこの吹き返しは長く続く。この時、いつもなら雨が収まっているのでひどい潮風となり塩害が発生する。窓など塩が付いてべたべたするほどだ。しかし今回は雨も長く続いてくれたおかげでそれほどひどくはならなかった。


まだそれほど強風が吹いていない朝のうちに停電した。山の方はもう送電線が切れるほど風が強かったのだろう。この分では一日中停電かなと覚悟したが、まだ暴風雨の吹き荒れている昼過ぎに復旧した。この嵐の中で復旧作業をしてくれたかと頭の下がる思いだった。なぜか台風の過ぎた後の夜になってまたしばらく停電があった。


翌朝、すばらしい青空になった。屋久島ではなぜか台風一過の晴天にならず、天気がぐずつくことが多い。今回は特別かと思って喜んでいたら、じきに曇ってきてまた降り出してしまった。それでも午後にはまた晴れ間が広がってくれた。


たくさんの木の葉や枝がちぎれてあたりを覆っている。バナナの葉などずたずたになっている。果樹が5本ほど、根元がすり鉢状に掘れてぐらぐらになっていた。今年久しぶりにおいしくできたトマトはもう駄目だろう。軽く済んだとはいえ、しばらく後片付けに追われそうだ。
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2007年07月13日

虫退治

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部屋に入ってきたコオロギ


屋久島に来た多くの人がこの島の自然のすばらしさを褒め称えるが、もちろん例外もある。中でも虫嫌いの人にとっては、ここは地獄のようなところだそうだ。たとえばアシダカグモなどというのがいて、小柄な人の手ぐらいもの大きさがあって、どどどっと足音を響かせて家の中を走り回ったりする。トイレに入るのも怖かったといった話も聞いた。


新築の家を締め切っていても、ところかまわず虫は入ってくる。小さな赤アリなど3mmほどもないのに、どのくらいの時間をかけて登ってきたのか、2階の床に行列を作っていて、ちょっと出しておいた食品などにびっしりとたかっていたりする。


我が家は夏でもほとんどクーラーなど使わないから、窓を開け放して網戸にしている。しかし夜の明かりにやってくる虫たちは網戸などお構いなしだ。小さくすばしっこいものはどこかしら隙間を見つけて入ってくる。また力のあるものは隙間をこじ開けて入ってくるようだ。オオゾウムシなど、3cmほどもある丸っこくて重量感のある虫が時々床に転がっていたりする。


梅雨の頃、羽を生やしたシロアリの群れが何度か発生する。その数はおびただしく、網戸を白く埋め尽くすほどだ。どんどん入ってくるので、あわててガラス戸を締め切るのだが、それでもどこかしら隙間を見つけて入ってくる。


私は殺生が嫌いで、以前はアリでも捕まえて外に放してやったものだ。しかし屋久島に来てそんなことを言ってはいられなくなった。夕食のおかずの上に飛び降りるし、飲みかけのビールの中に飛び込んだりする。顔にぶつかってきたり、襟元から服の中に飛び込んできて中で暴れたりする。


落ち着いた生活のためには虫は退治せざるを得なくなった。一度殺虫剤を使ってみたが、蛾は暴れて鱗粉を振りまくし、カメムシは匂いを出す。アリなどは平気で次から次へと出てくる。それに人体への害を考えたら食事中など使えない。


いろいろ虫取り方法を考えていて、昔の蝿取りリボンを思い出した。そうだ、くっつけてしまえばよいのだとひらめいた。ガムテープを5cmほどもちぎって、それを持ってどんどん虫を上から軽く押さえて貼り付けていく。


壁に止まったカメムシや机の上の小さなハネカクシ、床の上のアリなど面白いように取れる。見る間に接着面が真っ黒になっていく。死骸とかクモの食べかす、ゴミなどもついでに取り除ける。そしてそのまま折り畳んで捨てられる。環境を汚さず、費用もかからない。捨てるのも簡単。今ではこんなに良い虫退治の方法はないと思っている。


小柄なコオロギが時々やってくる。コオロギがこんなに空を飛べるとは思わなかった。しかし彼らはたいていじっとしていて迷惑にならない。そのままそっとしておくと、部屋の隅でリリリ、リリリと夜通し鳴き続けたりする。翌朝うろうろしているのを見かけたら、そっと手で捕まえて外に出してやる。
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2007年07月11日

ソクズ

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梅雨の頃、あちこちで人の背よりも高い大柄の草が、一面白く花を咲かせているのを見かける。東京でもたまに見たが、屋久島ではより丈高く大きな群落を作るようだ。冬でも枯れずに青々と葉を茂らせている。


地下茎を出してどんどん増えるそうで、街中の空き地などをびっしりと埋め尽くす。いかにも荒れ果てた感じがして、過疎化の象徴のようにも見える。しかし花が咲くと、遠くからでも白く輝いてとてもきれいだ。よく見ると、小さな花がぴんぴんとはじけているような感じでかわいらしい。


たくさんの虫が来ている。きれいな中型の蝶や大型のアゲハチョウなどをよく見る。白い花の間に黄色の丸いものが見えるが、ここに蜜がたっぷりたまっている。花には蜜はないそうだ。虫が花に来なくては送受粉の助けにならないと思うが、どうも虫は蜜を吸おうとして花の塊の上を這いずり回って、お腹に花粉をつけていくようだ。


ソクズとは奇妙な名前だが、はるか昔の平安時代の書物にソクドウの記述があり、それが訛ったものだという。ではソクドウとは何かについては漢名の訛りではないかという。根や葉は漢方薬の原料になっているそうだ。別名がクサニワトコで、これはニワトコの木によく似ていて草だからということだ。生い茂って邪魔者のような草だが、ずいぶん昔からいろいろと人々に親しまれてきたようで、そんなことを知ると愛着がわいてくるような気がする。
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2007年07月09日

ギョクシンカ

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梅雨の時期、いっそう薄暗くなった照葉樹林の陰に、白い花のかたまりがぼっと浮き出ていた。白い花にもいろいろあるが、これだけ混ざりけもなくただ白だけの花も珍しいと思う。


よく見ると雌しべが細剣のように突き出ていて、雄しべが細紐のように垂れている。同じアカネ科のクチナシによく似た形で、それをだいぶ小さく細くしたような感じだ。それでもかなりの数がかたまって咲くからなかなか見ごたえがある。確か良い香りがした覚えがあったが、今回はぜんぜん匂わない。きっと時刻、時期あるいは株によって違いがあるのだろう。


ギョクシンカの名前は玉心花と書くらしい。玉状に咲くからだろうが、なぜ心なのか判らない。しかしこの清楚な感じは、そっと心にしみ入るような気がして、なかなか良い名前だと思う。


厚く大きめの葉は緑が濃く黒っぽく見える。高さもせいぜい2、3mで、照葉樹林の中ではほとんど目立たない。花が咲いて、おやこんなところにあったのかと初めて気付く。九州中部から南西諸島に分布するそうだから、きっと沖縄あたりで何度も見ていたのだろう。しかし覚えたのは屋久島に来てからだった。我が家の近くの散歩道で、梅雨の始まる頃からずっと咲き続けていて、そこを通るたびにしばしうっとうしさを忘れさせてくれる。
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2007年07月07日

クマタケラン

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この花の赤と黄色の派手な色はゲットウに似ている。しかし花の形はアオノクマタケランに近い。それもそのはず、クマタケランは自然にできた両者の雑種なのだそうだ。ずいぶん違った二つの花の中間の取り方には無限の可能性がありそうだが、たまたまこの格好が安定していたということか。


雑種の弱みか、果実はほとんどできないようだ。逆に雑種の強みか、草の勢いはすごい。高さは2mは超えるし、どんどん根茎を伸ばして新しい株を作っていくから大きな群落になる。葉の芳香はゲットウに近いが、より上品な感じがする。たくさんあるし、食物を包むのによく使われたそうだ。


昔から草木の葉や皮は、皿や包装材として使われてきたが、ショウガの仲間の葉は特に優れているようだ。大きく細長いから使いやすいし、それに表面がすべすべで、ご飯粒などくっつきにくそうだ。その上すばらしい移り香を楽しめる。使い捨てだから洗剤など使う必要もなく、放っておけばもとの自然に戻っていく。現代の田舎暮らしの中にも取り入れていけたらと思う。


人里ではクマタケランが一番多い。花もきれいだし実用にもなるから、昔の人が株分けして増やしたためだろう。近くの空き地にも大きな群落があって、毎年の草刈作業でも刈られず残されてあった。ある年、若い作業員が来たら全部きれいに刈られてしまった。この草に思い入れがあり、雑草などではないと感じるのは、もう年配の人だけなのかもしれない。刈り取られた後には、えも言われぬ芳香が、しばらくあたりを漂っていた。
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2007年07月05日

アオノクマタケラン

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海岸近くの林の中などで、もう2ヶ月以上もアオノクマタケランが咲き続けている。白く透き通るような花びらに、桃色の水絵具を薄めてすっと筆で引いたような模様がしゃれている。細い竹細工のような形も面白い。


ランのような花だがショウガの仲間だ。ゲットウに近いがだいぶ小ぶりで、花は正反対なくらいに繊細な感じだ。葉には同じような良い香りがあり、しかも薄めで柔らかいので、お菓子やおにぎりを包むのにはこちらの方がより適しているそうだ。


小柄なハナバチがやって来て首を突っ込んでいた。ちょっと試してはすぐ次の花に行ってしまう。花の下の方の筒状の部分は細く長く、口が蜜に届かないのだろう。雄しべ雌しべがこんなに高いところにあるから、小さな虫はお呼びではないようだ。これに触れるような虫としたら、空中に停止して蜜を吸うスズメガの仲間だろうか。


誰がいつ来たのかは知らないが、秋になるとたくさんの赤い実ができる。センリョウ、マンリョウなどと共に、冬の薄暗い照葉樹林の下を点々と彩っている。寒さが過ぎてまた暖かくなってきても、誰にも相手にされなかったか、赤くきれいなまま多くは枝に残っている。
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2007年07月03日

ヤクシマサルスベリ

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港町近くの道路際に、一面真っ白に花の咲いた木があった。時々通る道なのだが今まで気が付かなかった。何だろうと近づいてよく見ると、縮れた花びらが細い柄で付いている。見慣れたサルスベリの花だが、しかしだいぶ小さい。逆に葉はずっと大きく、細長く先が尾のように伸びている。幹もツルツルでなく樹皮はだいたい付いたままだ。


ヤクシマサルスベリだった。林道などで時々見かけるが、こんなに目の前で見られたことはなかった。サルスベリは百日紅と書かれるほど花期が長いが、こちらは短いようで、なかなか花盛りにも出会えなかった。今回はちょうど梅雨の合間の強烈な日差しに真っ白に輝いて神々しいほどだった。


サルスベリは中国産で、日本には南西諸島にシマサルスベリが自生するだけという。ヤクシマサルスベリはその変種で、屋久島から奄美大島にかけて分布するそうだ。珍しい木はだいたいひ弱だったり気難しかったりするが、これは土砂崩れの後などに最初に入り込むパイオニア植物になっているほどたくましい。


ここでは街路樹として植えられたもののようだ。ところでこの島の主要道にもだいたい街路樹が植えられている。鬱蒼とした林を切り倒して通した道に、よそから持ってきたひょろひょろの木が植えられているのを見るのは滑稽でもある。聞くところによるとある規格以上の道路には街路樹を植えるべしと決まっているのだそうだ。それならせめてその土地を代表するものを植えて欲しいと思う。このヤクシマサルスベリなぞ、この島の名前を冠してこれだけ美しく咲くのだから最適ではないだろうか。
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2007年07月01日

ツルラン

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この花に初めて出会ったのは、沖縄のやんばるの山の中だった。林道脇の草むらの葉の上に、まるで置き忘れられた小さな人形のように、落ちてきた花が一つそっと載せられていた。見上げると高い崖のはるか上の方に、白い花の一叢がかすかに見えた。


後で調べたらツルランという名前だった。白く細い感じが鶴を思わせ、また中ほどの朱色の盛り上がりが、丹頂鶴の頭のようだからという。照葉樹林の薄暗い林床で、腰ほどの高さにまでなって、真っ白な花を次々と長い間咲かせ続ける。かつてはたくさんあったそうだが、乱獲され沖縄などではほとんど見られなくなってしまったそうだ。


屋久島に移住してすぐ、その幻の花に再会した。驚いたことに、ここでは低山などにごく普通のランだった。近所にも初夏になると一面に咲き乱れる庭があった。そこから一株もらってきて、いくつかに分けて我が家にも植えてみた。そのすべてが数年もすると大株となって、毎年庭の片隅を明るくにぎわせてくれている。今ではごく身近になってしまったが、この透き通るように白い人形のような花は、どこか寂しくはかなげで、いつまでも幻の花のように感じてしまう。
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