2007年06月29日

ゲットウ

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ショウガの仲間は熱帯系の植物だそうで、東京の山野ではミョウガくらいしか目にすることはなかった。だから屋久島に来て、あちこちにひときわ大きな雑草として繁茂しているのを見て、やはり南国に来たものだと実感した。


そんな中で、一番見ごたえのあるものはゲットウだった。形も色も、まるでランの花かと思うほど華やかで存在感がある。白い蕾もつやつやと透き通るようで最高級の磁器を思わせる。そこからにゅっともう一つ塊が飛び出してきて、それが開くと目も覚めるような黄色と朱色の花が現れる。甘く刺激的な香りは、昔の縁日のニッケ菓子を思い起こさせる。


この芳香は全草にあり、その成分にはさまざまな薬効があるとのことだ。昔はこの葉で食物を包んだそうだが、香りが食欲を誘うだけでなく傷みにくくなるのだという。今でも利用先を検索してみると、健康茶、飲料水、化粧品、防臭・防虫・除菌剤などいろいろなものが見つかる。またこの大きな葉は強靭で、その繊維から縄や布が作られたという。紙は今でも作られていて、壁紙として使われているのだそうだ。


我が家の庭にも移住してきた年に植えた一株があり、今年やっと花を咲かせた。こんなにすばらしいものと判ったからにはもっともっと殖やしたい。こんな香りに包まれてぼんやりと一日が過ぎていったら、南国の田舎暮らしはさらにまた夢の段階を進みそうだ。
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2007年06月27日

シマツユクサ

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今、本土のほとんどでは空梅雨のようだが、それは前線が南に停滞しているからだ。おかげで屋久島ではかなりの雨や雷がずっと続いている。手入れのできないまま庭は、十分すぎる水で思い切り茂った雑草にすっかり覆われてしまった。そんな中でツユクサの仲間がきれいな花をたくさん咲かせている。この島には普通のツユクサもあるが、ちょっと小ぶりのシマツユクサの方が多いようだ。


ツユクサが鮮やかな青なのに対し、こちらは淡い青紫。花びらもツユクサは大きな2枚が目立つのに対して、こちらは3枚が丸っこい三角形を作っている。これを見ると普通のツユクサがずいぶん派手な花に思えてくる。


小さなハナバチがやってきていた。虫は普通、花の奥の方に蜜を吸いに行くが、ここでは雄しべの上に乗っかって花粉を集めている。ツユクサには蜜がなく、花粉で虫を呼んでいるのだそうだ。


普通のツユクサでは鮮やかな黄色の雄しべが目立つが、あれは虫寄せのための飾りで、そこには少ししか花粉は付いていないのだという。実際の花粉は茶色で目立たず、虫が騙されているうちに体に付いてしまうとのことだ。


シマツユクサでは黄色の花粉がびっしり出ていて、虫はちゃんとご馳走にありつけている。たぶんこちらの方が祖先型で、ツユクサはずっと進化した型なのだろう。あるいはそんなせこいことをしなくても、南国では十分生きていけるということかもしれない。そしてここではシマツユクサの方が栄えているということは、虫も学習して正直者の店の方に集まったりするのかとも思う。


ツユクサは虫が来なかった場合に備えて、しばらくすると雄しべ雌しべが丸まって自家受粉するのだそうだ。見ていたらシマツユクサもだいぶ遅れて丸まってきた。午後にはどの花もすっかりしぼんで、虫たちもどこかに行ってしまった。自然の小さな舞台が消えて、何事もなかったかのように、また雨がすべての上に降り注ぐのだった。
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2007年06月25日

アカメガシワ

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赤い触糸を泳がせているみたいに見えるのはアカメガシワの雌花だ。青空を背景にびっしり並んでいると、ヒトデかイソギンチャクか、そんな変わった海の生き物を連想してしまう。


植物とは思えないような奇妙な造形だが、思い当たるものがある。風媒花の雌花が、空気中を飛んでくる花粉を捉えるために、よくこんな糸を出している。この花も、花びらなど虫を呼ぶための仕組みが見当たらないし、手元の図鑑などに記述はないが、もしかしたら風媒花なのかも知れない。


アカメガシワは新葉が真っ赤になることでよく知られている。葉が色付く植物にはイワタイゲキやポインセチアがあるが、みな同じトウダイグサ科だ。しかしそれらは花の周りで色付いて花びらの代わりをしているのだが、こちらは花とは関係ない。若葉を紫外線や熱線から保護したり、あるいは毛虫などの虫除けになっているとのことだ。そしてその赤は実は葉の色ではなく、赤い毛が密生しているのであった。とても毛には見えないのに、こすると取れて指先が赤くなるのを初めて見た時は不思議な気がした。


東京でも時々見かけたが、もともと熱帯系の植物とのことで屋久島にはとても多い。鳥が運ぶのか、庭のあちこちからいくらでも生えてくる。雑草並みに成長が早く、しかも大木になる。切り倒しても根からすぐに別の株が伸びてきてしまう。以前はきれいな赤い葉や変わった花などを愛でていたが、今では庭仕事の邪魔者として目の敵にするようになってしまった。
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2007年06月23日

コオニユリ

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海沿いの畑のあぜ道にコオニユリがたくさん咲いていた。野生の花とは思えないほどの、毒々しいくらいの色合いだ。しかし青い空と海を背景にすれば、なかなか南国にはふさわしい感じがする。


オニユリより小ぶりだからコが付いたそうだが、決して小さな花ではない。それに花数が多く、大きな群落を作るからかなりの壮観になる。梅雨の間のつかの間の日差しの中で見かけると、うっとうしさなど吹き飛ぶような気がしてくる。


オニユリは食用として中国から入ってきたものだそうだが、コオニユリの方はもとから日本全土に自生していたという。たくさんの種子ができるし、根には木子(きご)ができるからどんどん殖え広がる。東京近辺ではあまり見かけなかったが、屋久島の里ではあちこちどこにでも生えている。


根は食べられるし、花は園芸種に負けないほどきれいだが、幸いなことに採られたような跡などほとんど見たことがない。あまりにありふれてしまうと、人はわざわざ目を付けて何かしようとは思わなくなるのだろうか。
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2007年06月21日

ヤクシマアジサイ

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もう二月ほども前から、ヤクシマアジサイが咲き続けている。少し黄色がかったものから純白まであり、渓流沿いの暗がりなどでひときわ目立っている。形も花数もごてごてしてなくて、かといって散漫でもなく、ちょうど良いくらいにまとまって気品がある。葉も細長く薄めですっきりしている。


花びらのように見える萼にギザギザが目立つものもあり、それをヤクシマコンテリギと区別して呼ぶ人もいる。葉の裏が紫がかるが、その濃さに差があり、特に濃いものが珍重されたりする。


屋久島より南の南西諸島に分布しているとのことだ。ヤクシマアジサイを屋久島だけの固有種として、南にあるものをトカラアジサイと区別する人もいるそうだ。そうではなく屋久島のものもトカラアジサイとして、ヤクシマアジサイを認めない人もいるようだ。しかしトカラという言葉からは異国的な珍しいものを連想してしまうから、このような日本的な花にはヤクシマアジサイの名がふさわしいと思う。


ところで屋久島は、観光地として雨のイメージで売り出しているせいか、県道沿いなどたくさんのアジサイが植えられている。最近植えられた品種など花も大きく色も鮮やで目を引く。しかし自然遺産の島なら、華やかな園芸種でなく、土地の名前を冠した自生の清楚な花で飾って欲しいと思う。


園芸種のアジサイは花が豪華なだけに枯れた後が汚らしい。摘み取ればよいのだが、道路際では手入れする人もいない。ヤクシマアジサイの花は散り残るとだんだん赤くなってくる。秋には紅葉かと思うほどきれいになっていたりする。
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2007年06月19日

シシアクチ

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散歩道の途中の鬱蒼とした雑木林で、ひょろひょろした低木が葉陰にそっと花の束を付けていた。すこし桃色がかった小さな花は、おやっと思うほどかわいらしい。厚めで透き通るような感じの花びらは蝋細工か何かのようだ。弾丸のような形の蕾もやはり細工物じみている。


ヤブコウジ科のシシアクチだった。亜熱帯の照葉樹林の低層を構成する主な木の一つで、屋久島が北限だそうだ。そういえば島の研修施設の観察路のあちこちにシシアクチの名札がかかっていた。あまり特徴もなく薄暗いところにひっそり生えているので気にも留めなかった。まさかこんな可憐な花を付けるとは思わなかった。


シシアクチといういわくありげな名前の意味は何だろう。そもそもアクチという言葉自体、手元の図鑑にも辞書にも載っていない。ネットの中に、沖縄の方ではこの実をアクチと呼んで、ご飯に炊き込んで食べたという話があった。熟れてくると甘くなって、シシアクチと呼んで子供のおやつになったそうだ。シシは熟れたとか甘いとかいった意味なのだろうか。この木はもともとはアクチの木、アクチギだったのが、いつのまにかシシアクチになったようだ。もしかしたら近縁にもアクチギがあって、それと区別するためだったかもしれない。


一度名前を覚えると、なんでも愛着がわくものだ。特にこんなかわいい花を見てしまうと、地味な小さな木の、隠された本当の姿を知ったようで、なんだかとても親密になったような気がして来る。薄暗い林の陰などを通りかかると、どこかにいないかなと思わず目で探してみたりする。
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2007年06月17日

ヤクシマスミレ

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林道脇の苔むした崖にスミレの群落があった。この島ではいたるところで見かける白いスミレだが、なんだかいつもと少し様子が違う。わりと大きめで、白い花びらがすっきりして形よく開いている。蕾を見るときれいな赤紫に染まっている。ああこれがヤクシマスミレなのだと判った。今までもきっと何度か目にはしていただろうが、きちんと確認できたのは初めてだ。


近くに、よく見かけるヤクシマミヤマスミレも咲いてた。比べてみるとずいぶん違った感じがする。ミヤマの方は野性的なのに対して、こちらはずっと優しげで楚々とした気品を感じさせる。


葉は硬めで葉脈が浮き出て、ちょっと見るとスミレとは思えない。とても小さく、立ち上がらずコケのマットに張り付いている。花は大き目なのに葉が矮小化している様子はヒメコナスビと同じだ。やはり厳しい環境への適応なのだろうか。


屋久島から沖縄本島にかけてだけ分布しているとのことだ。もともと温帯地方のスミレだから暑さは苦手で、沖縄ではごくわずかしかなく幻の花扱いされているそうだ。屋久島でも涼しい山地に多いが、低地でも川沿いなど結構あちこちにあるようだ。今回見つけたのは海抜千メートルを超える林道脇だが、この道沿いにはいくらでもありそうな感じだった。
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2007年06月15日

ナナカマド

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島の中央を走る林道に入ると、あちこちにナナカマドが満開だった。小さめな花が丸くたくさん集まって、まるで自然が作った花束みたいだ。咲き始めは白く輝き、だんだん赤みを帯びてくる。


初夏に咲く花もきれいだが、この木は秋の紅葉もすばらしい。そして葉が落ちた後の裸の枝に、赤い実がびっしり付いている様子も見ごたえがある。若葉も繊細でみずみずしく、ぼってりした照葉樹林の中ではとても目立つ。そうして四季を通じて楽しませてくれる。


昔、秋の札幌に出張した時、ナナカマドの並木が一面に紅葉していて、それはそれはみごとだった。東京ではほとんど見かけなかったから、北国の植物という印象がある。実際、東北地方などでは普通だが、西日本では高地に飛び飛びに分布しているとのことだ。そうして最後の飛び地が屋久島になる。


この島では、いわば高山植物になっている。隔離されているから、いずれまた別な進化の道をたどって、屋久島だけの固有種になっていくのかもしれない。
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2007年06月13日

ヒメコナスビ

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屋久島の山中には、林道が本線、支線と魚の骨のように縦横に延びている。ふとその一つに入って車を止めると、壊れかけた舗装の隙間などあちこちにヒメコナスビが群落を作っていた。


透き通るような淡い黄色の花は、サクラソウの仲間らしく清楚な感じだ。大きさは1pを超えて、庭などに普通にあるコナスビより一回りほど大きい。逆に葉はずっと小さく、花びら一枚くらいの大きさしかない。低く地面にべたっと張り付いているから、車が通っても周りの石などに守られて平気のようだ。


コナスビの変種で、屋久島の山奥にだけあるとのことだ。この島の高地には、厳しい環境に適応して小型・矮小化した固有種が多いといわれている。しかしこれは、小型化したのは葉だけで、花は逆に大型化している。


もっと特徴的なのは花も葉も丈を低くして、地面にコケのように張り付いていることだ。吹きっさらしの岩場でも、これなら風に折られたりちぎられたりすることはなさそうだ。しかしこれでは目立たず、また高山では虫も少ないだろうから、花は大きくしなければならなかったのではないか。


可憐な花が葉を覆い隠すくらいにたくさん咲くから、小さな鉢にでも植えて机の上に置いたらとてもきれいだろう。しかしこの様子では花の咲く期間は短かそうだ。きっと気候の良い時期を選んでいっせいに咲いて、後はずっと小さな葉で頑張って養分を蓄えているのだろう。やっぱり花の時期を逃さず、山に見に行くのが良さそうだ。
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2007年06月11日

ヒメネズミ

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奥岳に向かう道を走っていると、突然黒っぽいものが飛び出してきた。なんだろうと車を止めたら、とても小さなネズミだった。反対側の崖にたどり着いて、落ち葉の陰に木の実でも見つけたのか、手で持って夢中で食べている。


丸めた体は、せいぜいピンポン玉より一回り大きいくらいか。体より長い尻尾が別の生きもののようによく動く。後ろ足もいやに大きい。それをそろえて、カンガルーのようにぴょんぴょん跳んだりもする。


近寄ってのぞき込むと、真っ黒な目で逆にじっと見つめられてしまった。耳をピンと立てて鼻をひくひくさせている。近寄っても逃げないのは、あんまり小さいので人間など岩や木の類にしか見えないからだろうか。そうこうしているうちに、また道路に飛び出してこちらにやってきた。靴の周りをうろうろしたり、足に登りかけたりする。


これではネコでもいたらひとたまりもないだろう。この島にはネコがうじゃうじゃいて、ノラネコなどとんでもないところまで入り込んでいる。幸いここは1000mを超える山をずっと入ったところだ。何かに襲われた経験などないのかもしれない。このあたりにシカとサルは多いが、彼らはネズミなどには目もくれないだろう。


ネズミを見たのは屋久島では初めてだ。大きさや形から、たぶんヒメネズミだろう。北海道から九州まで、平地から高山まで、日本中に棲んでいるという。夜行性であまり目にすることはないそうだが、これは真昼の日向に出てきてくれた。山に行く楽しみがまた増えたようだ。
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2007年06月09日

シマセンブリ

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屋久島の離水珊瑚礁(隆起珊瑚礁)の海岸は磯の生物の宝庫だが、そのちょっと陸側はお花畑でもある。春先にオキナワチドリが咲き、リュウキュウコケリンドウが咲き終わった後、先月くらいからシマセンブリが咲き続けている。


これもまたとても小さな花だ。花の径はせいぜい5oくらい、それを10pにも満たない茎の先に一つだけ付けている。みんな上を向いて、たくさん並んでいる様子はとてもかわいらしい。明るい赤紫の色も愛らしく魅力的だ。たまには10個くらいの花を付けた大株もあったりして、そんなものを探すのも楽しい。


海が荒れれば頭から波をかぶるようなところで、芝草などに隠れるように咲いている。海岸植物らしく、葉は厚みがあってすべすべしている。花は天気の良い日の昼過ぎくらいしか開かない。虫のあまり来そうにない時はしっかり閉じて、大事な花を壊されないよう用心しているのだろうか。


小さいとはいってもセンブリだからと、葉を齧ってみたらやはり相当苦い。薬草なのかなと思って調べてみたら、何と犬用のハーブとして混ぜ込んでいるドッグフードがあった。


屋久島が分布の北限だそうだ。一年草だから毎年生えるところが変る。たくさんあったのが翌年には跡形もなかったり、思いがけない岩の割れ目でそっと咲いていたりする。一昨年見つけた群生地は幸い毎年増え広がって、今年も足の踏み場もないほどびっしり咲いていてくれた。
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2007年06月07日

クマノミズキ

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梅雨の晴れ間、島の西側に行ったら、白い小さな花を無数に付けた木がたくさんあった。大木の樹冠が白く輝き、横に張り出した枝の先々もみな真っ白になっているから、遠目にもよく目立つ。


花も葉も、全体がとてもみずみずしい感じがする。実際、枝を切ると樹液が滴り落ちるほどだという。そんな水っぽくてミズキと呼ばれる木は何種類かあるので、区別のために、近畿以西に多いこの木には熊野の地名を冠したのだそうだ。鬱蒼とした熊野街道を彩って、巡礼者の疲れを癒してくれる様子が目に浮かぶようで、とても良い名前だと思う。


クマノミズキは屋久島が南限とのことだ。本土では近縁のミズキの方が普通だという。しかし屋久島ではこちらの方がずっと多いようだ。水気が多く、しかも日当たりの良いところが好きとのことで、主に沢沿いに生えて、みごとな大木にもなっている。


なぜか人の住んでいない島の西側ばかりにある。大量の雨で、沢沿いは頻繁に土砂崩れを起こすが、そのまま放っておけばこのような木がいち早く入り込むのだろう。成長は早く、瞬く間に破壊の傷跡を覆い隠してくれるようだ。
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2007年06月05日

ソウシジュ

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県道沿いに、上から下まで一面に黄色い花を咲かせている大木がある。木の下の道路は、落ちた花で黄色の絨毯を敷いたかのようだ。近寄って見るとコンペイトウのような蕾がまだまだたくさん付いている。本当はこの粒々の一つ一つが蕾で、それらが集まって丸くかたまっているのだった。蕾の中には極細の糸のような雄しべがぎゅっと押し込まれている。咲くとふんわり膨らんで、黄色い糸細工のポンポンのようになる。


ミモザという言葉が浮かんだが、どうも様子が違う。葉がキョウチクトウみたいで、厚めで硬く、すべすべ、てかてかしている。マメ科なら普通は細かな葉がきれいにびっしり並んでいるものだが。


図鑑で調べて、台湾やフィリピン原産のソウシジュ(相思樹)だと判った。驚いたことに、この葉のようなものは実は葉柄なのだった。その先にマメ科らしい複葉が付いていたのだが、それが若葉のうちに落ちてしまうのだそうだ。葉柄というものはだいたい茎のように棒状だが、それが平べったくなって葉の代わりをしているのだ。


弱々しい葉がないから、この木は乾燥や潮風などに強そうだ。マメ科だから根には根粒菌もついていて、養分に乏しい荒れ地でも平気だろう。実際、防風林や荒廃地の緑化などに使われているとのことだ。沖縄などでは街路樹としてたくさん植えられているのだそうだ。


相思樹という名前には何かいわれがありそうだが、調べた限り誰も知らないようだった。ともかく大木だし、花はきれいで目立つし、待ち合わせ場所にこの木の下というのは良さそうだ。ちょっとクセはあるが柑橘系の香りも強く、明るい黄色に包まれて、ここで待っているだけで夢見心地になれるかもしれない。
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2007年06月03日

チャボシライトソウ

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山を数百メートルほど登ると、岩陰などにぽつんぽつんとチャボシライトソウが咲いていた。せいぜい10pほどの高さで、か細い茎の先に薄紫の糸がほつれて飛び出しているような感じだ。妖精が髪を振り乱して何かを訴えてでもいるかのようで、山で出会うとふと声をかけたくなるような花だ。


この糸のようなものは花びらなのだそうだ。根元に見える白い丸いものは、短い雄しべの先の葯とのことだ。雌しべも突き出しているし、そのあたりは普通の花と変りはない。しかしこんな花びらで、いったいどんな虫を、どういう理由でひきつけることができるというのだろうか。


この花は林の縁の日陰に多く、普段はほとんど目に付かない。しかしたまに木漏れ日が当たると、糸の先まできらきら光って、全体がぼっと輝やく感じでとてもきれいに目立ったりする。この糸と同じ量の材料で普通の花びらを作ったら、とても小さなものになってしまうだろう。花がいくつも集まって咲くのなら、この形は案外投資効果は高いのかもしれない。


近縁の花にシライトソウがある。同じような形だが、花びらは真っ白でずっと太めでそれなりに目立つ。チャボシライトソウはかなり条件の悪いところに生えているので、ぎりぎりまで細くして苛酷な環境に耐えているのかもしれない。


ともかくこれがあの豪華な花を咲かせるユリの仲間なのだから驚く。色はくすんだ白や、緑がかったものもある。場所によっては30pくらいの高さになって、まとまって咲いていたりもする。全国的には愛知県から九州にかけてしかなく、ごく稀なのだそうだ。屋久島では5、6月、あちこちの山でわりとありふれた花になっている。
posted by 夜泣石 at 21:17| 花草木 | 更新情報をチェックする

2007年06月01日

リンゴ

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リンゴの花が咲いた。東京でもあまり見たことなどなかったから、こんなにきれいだとは知らなかった。つぼみのうちは濃いピンクで、咲いたら透き通るように白い。裏側に薄いピンクがかすかに残っている。


もしかしたら屋久島で初めてのリンゴの花かもしれない。北国の果樹を亜熱帯の島に植えるなんて何と酔狂なと思われそうだ。バラ科には、冬の低温に会わないと休眠から目覚めないものがよくある。モモやスモモなど多くの落葉果樹が、暖かくなってもかなり遅くまで裸のままでいる。寒さに強いリンゴなど常緑樹になってしまって眠ることも忘れている。だから花の咲いているのを見つけた時は、おお!と感激するような気分だった。


リンゴは今では貯蔵技術が進歩して一年中売っている。しかしただ甘いだけのぼけた味で、あまりおいしいとは思わない。昔は旬の時だけ店頭に並び、甘みも酸味も強かった。特に表面に近いところがおいしく、皮ごと齧ったものだった。もうずいぶん前から、農薬が怖くてそういう食べ方をしなくなった。


新鮮で野性味のあるおいしいものを食べたければ自分で作るしかない。しかしそれは売っているもののように、大きくきれいである必要はない。自分で食べるだけだから、たくさん実らせる必要もない。そんなものなら少々環境の合わないところでも、なんとかできるのではないかと考えた。


気温が高いと果実の成熟が急速で、気の抜けた味になりやすいのだそうだ。そこでゆっくり成熟する晩生種のふじと王林を植えてみた。ふじは売っているものは真っ赤だが、あれは袋がけしたものだ。日の当たったものは緑色に赤縞が入り見た目は良くない。しかしきっとその方がおいしいだろう。


やっと咲いたのはふじの方で王林はまだ咲く気配がない。リンゴは自家不和合性が強く、他品種の花粉でないと受精しないそうだから、まだしばらく果実の方はお預けだ。しかしこのきれいな花を楽しめただけでも、植えた甲斐はあったなと思う。
posted by 夜泣石 at 21:17| 花草木 | 更新情報をチェックする
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