2007年05月30日

アマサギ

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屋久島に移住してすぐ、我が家の上空を低く飛んでいく白鷺の群れを見た。縮めた首が茶色なのでアマサギと判った。沖縄などでよく見た鳥が身近にいることで、改めて移住したんだなと実感したものだった。


亜麻色とは灰みの黄色がかった薄茶色をいうのだそうだ。語感からはもう少し派手な感じを持っていたが、わりとくすんだ色だった。それでも日なたでは金髪のように輝いて、それと白だけの余分のない配色は、なんだか上品な感じのする鳥だ。


東京近辺ではめったに見ることはなかった。しかし九州四国など西日本では夏鳥として普通なのだそうだ。最近は繁殖地が北上しつつあり、北海道に渡るものもいるとのことだ。


屋久島には4月の田植えの始まる頃に来る。水を張ったばかりの田んぼの周りによくいる。そのあたりはついこの間まで、ジャガイモ畑か雑草の生い茂っていたところだ。水に追われた虫などがいっぱいいるのだろう、他の鳥たちもたくさん集まっていてにぎやかだ。しかしもともと水生動物などいないところだから、食べつくしてしまうのも早いようだ。じきにあたりはしんとしてしまう。


梅雨の近づく頃、アマサギはほとんどいなくなる。開けたところでカエルやバッタなどを捕るというから、森林の生い茂るこの島では子育ての餌が十分ではないのだろう。田畑の広がる本土への渡りの途中に一休みしているだけのようだ。
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2007年05月28日

フトモモ

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蒸し暑い日々が続く今、屋久島のあちこちの川辺でフトモモが花盛りだ。厚く大きめの葉が生い茂る中に、細い糸を束ねたような白い花が幻想的な感じで見え隠れしている。早いものは3月頃からぽつぽつ見られたが、今頃は高い梢のあちこちでいっぱいに咲いている。


たくさんの雄しべは細く長く、ポンポンのような花はふんわりと柔らかい。その中にハチやカナブンなどがもぐりこんでいる。一本だけ突き出した雌しべの根元は皿のようになっていて、そこにたっぷりと甘い蜜がたまっている。


熱帯アジア原産の果樹で沖縄などで古くから植えられていたそうだ。今では顧みられることもないまま、各地で野生化しているとのことだ。屋久島は北限だそうだが、気候が合っているためか、あちこちで大木になっている。


果実はほんのり甘くバラのような香りがするとのことだ。それほどおいしいものではないそうだが、食べてみたいと思う。しかしこれだけたくさんの花を見るのに、まだ一度も果実を採ったことがない。この島のいたるところにいる猿たちの大好物なのだそうだ。川沿いの林は彼らの通路で、山と海の間を行き来している。その途中にお誂え向きに生っているから、ほとんど彼らの口に入ってしまうようだ。
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2007年05月26日

クチナシ

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梅雨の近付く今頃、屋久島の里のあちこちでクチナシがすばらしい香りを放っている。東京でも時々見かけたが、それらは園芸品種で、この島にあるのは自生の野生種だ。雑木林の中で競り合って、5mを超えるような大株になったりして、上から下まで豪華に花を咲かせている。


花はよく見るとちょっと奇妙だ。茶色の細紐のような雄しべがだらしなく垂れている。そしてこん棒のような雌しべの側面に黄色い花粉がべったり付いている。どうもこれはひねり菓子のような蕾のうちに、雄しべから雌しべに渡されたもののようだ。自家受粉するというのでなく、こちらに付けておいた方が、花粉を虫に渡しやすいためなのだろう。


花の下の方はきゅっと細く堅い筒になっていて、中には甘い蜜がびっくりするほどたっぷり入っている。香りもむっとするほどで、これで蜂蜜ができたらどんなにすばらしいかと思う。残念ながらこの狭い隙間にハチは入っていけそうにない。


夕方になると強く香るし、真っ白で大きく開いているし、これはきっとスズメガの類を呼んでいるのだろう。しかしその仲間のオオスカシバの幼虫に葉を貪り食われるのも皮肉なものだ。あるいはそれで持ちつ持たれつということだろうか。オオスカシバは蛾らしくない透明な羽を持つが、やはり珍しい鳥のような羽を持ったアヤニジュウシトリバもこの花の害虫だ。


橙色の果実は面白い形をしている。これが熟しても堅く閉じているので「口無し」という名になったのだという。しかし口が開かない果実はほかにも多くある。それよりも鳥の嘴のような形に何か由来があるのではないかと思うがどうだろうか。


昔、田舎の叔母さんがこれで黄色く染めた餅を作ってくれたのを思い出す。いろいろな食品の色付けに用いられるが、そのものは食べておいしいものではない。鳥にもあまり人気がないのか、冬になっても干からびたまま、いつまでも枝に残っているものをよく見かける。
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2007年05月24日

ハマボッス

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真っ白で清楚な感じの1pほどの花が群がって咲いていた。ここは春先にはイワタイゲキが黄色く彩っていた海岸の砂地だ。あれから2ヶ月、海辺はすっかり初夏の色合いに変わっている。


ハマボッスは日本全土の海岸に普通に見られると図鑑には書いてあるが、私はそんなにあちこちで見た覚えがない。暖かい地方に多いのではないかと思う。屋久島には海辺のいたるところにある。岩の割れ目などに小さくぽつぽつと咲いているのは可憐な感じがする。砂地や湿地にまとまって咲くととても華やかだ。


サクラソウ科と聞いてなるほどと思う。しかしハマボッスの名は似合わない。こんなにきれいなのにホッスとは何事かと言いたくなる。すっと伸びた茎に花や葉がびっしり付いた様子が、僧侶が持つ払子に似ているのだという。払子の起源は虫や塵を払うはたきだったというから余計にがっかりする。


果実を付けた姿を初めて見た時、同じ草とは思わなかった。5oほどの赤茶色の丸い玉がびっしり並んでいて、それもまたとてもかわいらしい。冬になって茶色く枯れ果てても、種子の抜けた殻が丸いままいつまでも面白い感じに残っている。
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2007年05月22日

イチヤクソウ

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林の中で、深く積もった落ち葉の間から細い茎がすっと立ち上がっていた。1pちょっとの白い花が、いくつかうつむいて咲いている。ちょっと見るとかわいらしげだが、にゅっと突き出た雌しべや、ひしめいている雄しべの感じなど、なんだか奇妙で怪しげでもある。


イチヤクソウは昔、長野県あたりの登山道の脇などでよく見かけた。山地の冷涼な気候に生えるものと思っていたから、我が家の近くの低山で見つけた時は驚いた。しかし株は小さく弱々しい。あまりここの亜熱帯気候には適していないのかもしれない。


今のところ屋久島の他のところでは見たことがない。ここで昨年初めて見つけた時は小さな群落が二つあった。今年はこの一本があっただけだった。まさか盗掘されたのではないとは思うが。菌根菌と共生しているため、簡単には栽培できないそうだ。それでも鉢植えを売っていたりするから、山取りする人は絶えないようだ。あるいは最近ここには植物の研究チームが定期的に観察に入っているそうだから、標本にされてしまったのかもしれない。


イチヤクソウは根元に数枚の葉を持っていて普通に光合成をするが、それだけでは足りなくて菌類から養分をもらっているのだという。不思議なことにここの株は落ち葉を掻き分けてみても葉が見つからない。完全に菌類に依存して腐生化してしまったのだろうか。近くに代表的な腐生植物である近縁のギンリョウソウを見つけた。落ち葉の下で、菌類の活動は盛んのようだ。


漢字で書くと一薬草で、薬草なのだそうだ。強心、降圧、抗菌などの作用があり、さまざまな全身症状に効くとのことだ。中国では避妊薬などにもなっていたそうだ。それだけ利用されたのも、わりと身近に多い花だったということなのだろう。
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2007年05月20日

アブラギリ

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屋久島に来てすぐの初夏、道路際で一面に咲く白い花を見て感激したものだった。かなりの大木の上から下まで花が咲き、落ちた花で木の下が雪でも降ったようになっている。3pほどの単純な花だが、これだけ集まると豪華な感じすらする。


真っ白な花びらと黄色の葯がきれいだ。花の中心部がだんだん赤く染まってきてさらにきれいになる。残念ながらあまり良い香りはしない。薬品のような、油くさいような不思議な臭いだ。


トウダイグサ科のアブラギリだった。落葉樹で、春の新芽の時期も輝くように美しい。葉はキリというよりアオギリに似て大きく、天狗の団扇のような形で面白い。秋になると2p以上はあるこげ茶の丸い実をたくさん付けてそれも目を引く。


この種子から桐油をとったのだそうだ。工業用として優秀で、さまざまに使われてきたとのことだ。今から50年くらい前では全国で年間数百トンもの生産があったという。またこの材で作った炭は研炭(とぎすみ)として最高級で、漆工芸などで珍重されているのだそうだ。


昔中国から導入されたものだが、日本に自生があったかどうか不明という。不思議なことにここでは島の北側に多く、南側にはほとんどない。桐油の産業が北の集落に偏っていたのだろうか。今では誰も採る人もなく、桐油の作業場など跡形もないようだ。


人の住まない西側の地域で、道路下などにたくさんあるのは、土地が切り開かれた後にパイオニア植物として入り込んだのだろう。種子を運んだのは猿だろうか、鹿だろうか。種子は人間にとっては有毒とのことだが。この地の気候に合っているようで、あちこちに生えて、変化に乏しい照葉樹林の前面で季節の巡りを告げている。
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2007年05月18日

フェイジョア

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庭に植えたフェイジョアの花が咲いた。原色の赤に黄色と白の取り合わせは、いかにも熱帯の花といった感じだ。ブラシのような雄しべは2pほどの長さで太めでしっかりしている。雌しべも堅く槍のように突き出ている。花びらは厚くぼってりとしていてキノコか何かのようだ。きれいな花だが、よく見るとかなり奇妙だ。


ブラシのような花はほかにもいろいろあるが、だいたい雄しべは細く弱く、虫が止まればふんわり埋もれてしまいそうなものが多い。そうやって虫を花粉まみれにして送受粉をさせているわけだ。しかしこの花は止まろうとする虫を突き返してしまいそうな感じがする。


花びらは色や形がお菓子みたいでおいしそうに見える。実際とても甘く、そのまま食べられる。じつはこの花はこれで小動物を誘っているのだそうだ。花びらを食べようとすると顔や体に花粉が付いて、それで送受粉を手伝わされることになるわけだ。我が家でもそのうちヒヨドリあたりが覚えて、この花びらを食べに来るかもしれない。なかなか貪欲だから、島中のフェイジョアを受粉して回りそうだ。


フェイジョアの実はとてもおいしい。パイナップルに似ているが、ずっとまろやかで風味がある。しかし実は小さめで果肉の部分も少ない。買って食べるにはちょっともったいない気がしてしまう。それに出回っている輸入物は早取りしているので、それほどおいしくないそうだ。花も実も、自分の庭で育ててこそ楽しめるものなのだ。
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2007年05月16日

ヤクシマミヤマスミレ

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山道を走っていて、ふと車を道脇に止めると、分厚いコケのマットの上に1pほどの白いスミレが一面に咲いていた。耳がピンと立っていて、口の周りにヒゲが描かれているので、猫か何かの顔に見える。小さな葉が横に寝ていて目立たないので、まるでコケに花が咲いてでもいるかのようだ。


屋久島の山には小型の白いスミレがたくさんある。フモトスミレ、その亜種のヒメミヤマスミレ(屋久島にあるのはさらに変種のヤクシマミヤマスミレ)、コミヤマスミレ、ヤクシマスミレ。どれも小さめでよく似ていて区別が難しい。グループは違うが花の感じの似たものにニョイスミレがあり、その変種に屋久島固有で極小のコケスミレというものまである。


世の中にはスミレフリーク、あるいはスミレおたくと呼ばれる人たちがいる。ランにも熱中する人たちがいるが、彼らはランマニアと呼ばれている。フリークの方がずっと熱狂的で異常性が高いような感じがする。ランは派手できれいなものも多く、極めて変化に富んでいるのでマニアがいても当然の気がする。それに対し野生のスミレは小さく地味で、いくつかのグループに分ければその中はだいたいどれもよく似ている。それなのに細かな違いを一つ一つ調べ上げてはいちいち名前を付けて喜んでいるのは、なかなか一般の人には付いていけない世界だ。


私も付いていけない一人ではあるが、彼らの話を聞くのは好きだ。漠然と眺めているだけではのっぺりしたようにしか見えない自然に、こんなに細かな襞や皺があったのだと気付かせてくれる。そういう小さなところに世界の秘密が隠されているような気がしてくる。
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2007年05月14日

アセロラ

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アセロラはビタミンCが多いことでよく知られている。あらゆる野菜果物の中で最も多いそうだ。ビタミンCには抗酸化作用があり、体内の活性酸素を取り除いてくれる。活性酸素はDNAを損傷させてがんや老化の原因になっているそうだから、アセロラがもてはやされるのは当然かもしれない。


しかしビタミンCならミカンやイチゴ、生野菜などいろいろ身近なものにも含まれている。含有率が少々低くてもたくさん食べればよいだけの話だ。わざわざ高価なものを珍重することはないだろう。だいたいアセロラと宣伝されている清涼飲料水など、果汁はわずか1%だったりする。これではその味もビタミンCもほとんど添加物で成り立っていることになる。


こうなるとアセロラの餌なぞに釣られてなるものかと思うが、それはアセロラが悪いわけではない。それどころか屋久島に移住した時、ぜひ庭に植えたいと思っていた。近くの温室に大株があったので、さっそく枝を10pほどもらってきて庭の隅に挿しておいた。それから5年、今では背丈ほどの高さになり、去年あたりから花を咲かせるようになった。


花がこんなにきれいだとは知らなかった。ピンクの切り紙細工のような花びらがぱっと広がり、真ん中に鮮やかな黄色の雄しべが寄り集まっている。なんだかおしゃれした少女がはしゃいでいるような感じだ。


一見、サルスベリの花に似ている。しかし作りはだいぶ違う。よく見るとずいぶん不思議な形だ。5枚の小さな三角形の萼が雄しべを支えるかのように花弁の間から立ち上がっている。そしてその付け根に楕円形の塊が2個ずつ付いている。これはいったい何なのだろう。


見たこともない形だと思ったら、キントラノオ科という日本に自生種のないグループだった。熱帯アメリカが分布の中心だそうだ。手元の図鑑などでこの花について説明したものはなかった。


我が家ではまだ実ができない。自家受粉するとのことだが、花の後しばらくするとみな根元から落ちてしまう。調べてみたら、木が十分大きくならないうちはほとんど実らないのだそうだ。


しかし花はきれいで、暖かいうちはくり返し咲く。葉も小さめで形よく、明るい緑で気持ちよい。観賞用として十分楽しめる。そしていつか実るだろうという期待がある。
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2007年05月12日

ヤマビワ

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毎年今頃になると、我が家の庭の川にたくさんの小さな花が浮かぶ。流れに寄せ集められ、岩の間の淀みなどをすっかり覆っている。庭仕事を終え、夕方長靴を洗いに川に入ると、頭や肩の上にもはらはらと散ってくる。


何の花だろうと見上げても、梢は高く、咲いているところは見えない。ただ黒々とした茂みの奥から、白い花が風花のように舞い落ちてくる。


やっとヤマビワの花であることが判った。照葉樹林の高い樹冠の上に、小さな花をびっしり付けた枝が槍の穂先のようにたくさん突き出ている。伊豆半島より南の暖帯から亜熱帯に分布しているとのことだ。かなり珍しい木だそうだが、屋久島ではありふれた種類だ。無骨な葉がびっしり茂るので、花を見るまではあまり良い感じを持てずにいた。


我が家の周りにはビワと名の付く木が多い。ヤマビワ(アワブキ科)、ハマビワ(クスノキ科)、イヌビワ(クワ科)。ビワそのものはバラ科だから、これらはみな縁もゆかりもないものたちだ。イヌビワは実が、ヤマビワとハマビワは葉がビワに似ているからだという。大きく堅く厚ぼったい葉で表面がてかてかしている。裏面には褐色の毛が密生している。亜熱帯の厳しい日差しや風雨に耐えようとして、皆同じようなものになってしまったのだろう。
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2007年05月10日

ハイノキ

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五月晴れのさわやかな日に山に入ったら、あちこちでハイノキがたくさん咲いていた。1pちょっとの小さめな白いすっきりした花だが、枝先に群がって咲くのでよく目立つ。あまり大木にならず、目の高さでいっぱい咲いてくれるから、この時期とても楽しみな花だ。


なによりこのオレンジ色の葯がきれいだ。照葉樹林の暗がりを背に、真っ白な花の中で日差しを浴びて小さな灯のように輝いている。


西南日本に分布し、屋久島が南限だそうだ。暖地の花かと思うと、千メートルを超える高山にたくさん生えている。大雨や雪のたたきつける厳しい環境に耐えて、一年中青々と葉を茂らせている。


灰色からは遠い花だから、ハイノキの名前は似合わない。実はこの仲間はアルミニウムを多く含み、灰にして染色の媒染剤に使ったのだそうだ。花はきれいだし葉もすっきりと涼しげで、切り倒して灰なぞにして欲しくない木だが、そんなことに使ってもかまわないほどこの島にはたくさんある。
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2007年05月08日

ブクリョウサイ

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屋久島に来てすぐに、白と黄緑に塗り分けられた小さな玉をたくさん付けている雑草があるのに気が付いた。果実かと思ったら花のようだ。こんな特徴のあるものならすぐに判るかと思ったが、なぜか屋久島や九州の花の図鑑に載っていない。一番大きな図鑑でやっとブクリョウサイという名であることが判った。


キク科で、白いのが舌状花、黄色いのが筒状花だった。玉は直径3oくらい、大きなものでも5oほどだ。一つ一つの小花は0.1oくらいだろうか。ふつう舌状花は大きな花びらで花全体を目立たせるのが役目だが、これはまたなんと小さいのだろう。せいぜい白い毛が生えているくらいにしか見えない。


それでも半分が白く塗られた玉というのは雑草の中で変わっているためか、小さく地味でもまあまあ目に付く。時々アカアリが首を突っ込んでいるので蜜も出ているのだろう。花粉を運ぶのは極微のハナアブか何かだろうが、残念ながら花に止まっているのをまだ目にしたことがない。


ブクリョウサイの名は漢方薬みたいで、何かいわれでもありそうな感じだ。しかしただ昔の琉球名を音読みしただけではないかとのことだ。それでは琉球ではどんな意味だったのか気になる。ともかくとても印象深い名前だ。


分布は四国、九州から熱帯、亜熱帯地方だそうだ。一般の図鑑には載っていないので珍しいのだろうか。屋久島ではごく普通の雑草になっている。春先から秋の終りまで、芽生えては咲くことを繰り返している。いつのまにか小花一つ一つが種になっていて、さわると玉はばらばらに崩れる。果実はネバネバしていて靴などにつく。私が歩き回って撒き散らしたのだろう、いつの間にか庭中に広がっている。
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2007年05月06日

アヤニジュウシトリバ

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我が家の窓ガラスにはほぼ一年中、夜になるといろいろな虫が集まってくる。夏が近付くとその数が急に増えて、見たこともないようなものが混じっていたりする。みんなお腹を見せているのでなかなか愉快な姿だが、図鑑にはこの形で載っていないので調べるのに苦労する。


この蛾を見つけた時には驚いた。虫の体から鳥の羽が生えている。昆虫の羽はみな紙や薄板のような膜状のものと思っていたが、これは枝のようにばらばらに分かれている。そして細かい羽毛がびっしり生えている。きらきら輝いてふんわり柔らかそうでとてもきれいだ。


こんな変ったものならすぐ判るかと思って図鑑を調べたがなかなか見つからなかった。やはりあまり一般的な種類ではないようだ。何冊目かでニジュウシトリバガという名前に行き着いた。二十四鳥羽蛾。確かに数えてみると24本の鳥の羽が付いている。


この仲間は日本には3種類いるようだが、何が区別点なのか判らない。Web上で見つけた何枚かの写真と比べると、どうもこれはアヤニジュウシトリバのようだ。幼虫はクチナシの枝先にもぐりこんで中を食い荒らすのだそうだ。我が家のすぐ近くに大きな木があるのでそこから来たのかもしれない。


それにしてもなぜこんな形に進化したのだろうか。これが有利ならもっとたくさんの虫がこんな羽を持って良さそうだが、私はほかに例を知らない。極微の世界なら物理条件がかけ離れているので時々とんでもないものがいたりするが、この蛾は羽の差し渡し4pほどもある普通の大きさだ。なにか特殊な生き方をしているのだろうか。


こういうのを見ると、なんだか自然がいたずらをしているような気がしてくる。試しに作ってみたがあまりうまくは行かなかったので放り出した。それでもなんとか細々とは生きていける。そんな変り者がよく見るとあちこちにごろごろしているような気がする。
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2007年05月04日

ジャケツイバラ

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東京にいた頃、初夏の高尾山では遠くの斜面にたくさんの黄色い花が眺められた。その鮮やかさと、蛇結茨というなんだか恐ろしげな名前が印象深かった。東北地方より南に広く分布しているそうだが、屋久島ではなかなか出会うことがなかった。


この島にも昔はたくさんあったとのことだが、この蛇の絡み合ったように伸びるつるが猟師や木こりにとってひどく邪魔になるので、手あたりしだい刈り倒されてしまったのだそうだ。今では手軽に見ることのできる木は、地元の愛好家に教えてもらったこの一本だけのようだ。


花を見ていると、なんだか狐の顔が思い浮かぶ。耳がぴんと立っていて、真ん中に細い目が描かれている。雄しべ雌しべが長い口もとを表しているかのようだ。昔はマメ科に分類されていたが、花の様子はだいぶ違う。今はジャケツイバラ科としてマメ科の祖先の位置付けになっているそうだ。しかし果実は茶色の鞘の中に丸い種子が並んでいて豆そのものだ。


この木の刺はすさまじい。うっかり近づくと痛い目に合わされたり服を破られたりする。太くなった幹だとずらりと鋲が打ち付けてあるみたいで、まるで鬼の金棒だ。そんなものが大蛇のようにのたうち回っている姿はこの世離れしているくらい恐ろしげだ。


たくさんのきれいな花。小判の並んだようなかわいらしい小さな葉。意外に大きくちょっと粋な渋い色合いの果実。どうしようもなくすさまじい刺。庭に植えたいとは思わないが、出会うのが楽しみな植物になっている。
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2007年05月02日

シャリンバイ

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真っ白な花がびっしりと咲いている。白い花はたいていいくらかは透けていて微妙な色合いになることが多いが、この厚めの花びらはとことん白い。そして花の中心部だけがほんのり赤みがかったり黄色みがかったりしてきれいだ。たくさんある雄しべもちょうどよい飾りになっている。


シャリンバイの名は、枝が車状に出て花が梅に似ているからだという。同じバラ科だから花が似ているのは当然だが、雰囲気はずいぶん違う。梅は薄い花びらで繊細な感じだが、こちらはべったりと白くあでやかな感じすらする。残念ながら梅のような芳香はない。


屋久島には多い。海岸の崖など、乾いて潮風が強く他の樹木の育たないところでも、平然と厚く硬い葉を茂らせている。畑の防風林にも使われていて、今の時期、農道沿いをきれいに彩っている。


大気汚染とか土壌汚染などにも強いそうだ。それが買われて公園の植栽や街路樹などにも使われるようになった。埋立地の周辺とか高速道路沿いにも植えられている。今では都会でも馴染みの花になっている。


しかし自然に生えて自由に伸びた姿は自生地ならではだろう。ここは日本百名瀑の一つだ。滝壺近くの大岩の隙間にしっかりと根を下ろしている。のびのびと枝を広げぎっしりと花を咲かせ、豪快な滝に対峙している。
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